注目キーワード

薬剤性歯肉増殖 Drug-induced gingival overgrowth

歯肉増殖をきたす内科疾患として最も重要なものは急性骨髄性白血病(特にM5)が有名ですが、薬剤性も原因として多いです。

歯肉増殖が副作用としてある薬剤は・カルシウム受容体拮抗薬・免疫抑制剤(シクロスポリン)・抗てんかん薬(フェニトイン)の3つが代表的です。歯科関連の合併症ではありますが、内科医として知っておきたい副作用です。治療は基本的に原因薬剤の中止と歯の衛生状態の改善です。歯科の先生との連携も大変重要です。

フランスのデータベースからの報告では薬剤投与による歯肉増殖の副作用報告は全体の0.04%で、その内訳はカルシウム受容体拮抗薬が30.6%、免疫抑制剤が15.2%、抗てんかん薬が10.1%と報告されています(J Clin Periodontol 2012; 39: 513–518)。以下がそのまとめです。これら代表的な3つ以外での関連性が指摘されている薬剤もあります。

以下に具体的な事例を掲載します。

■カルシウム受容体

アムロジピンによる歯肉増殖(以下の症例は45歳男性でアムロジピン5mg/日を6ヶ月内服した後の状態 http://dx.doi.org/10.1155/2013/138248)。ニフェジピンの方がアムロジピンよりも頻度は多く、通常薬剤開始から3ヶ月以内、またアムロジピンの場合は10mg/日、歯間の歯肉乳頭部分が腫大することが多いとされています。

■フェニトイン

フェニトインによる歯肉増殖の副作用は1939年から指摘があり、頻度は報告によりまちまちですが50%-80%程度とかなり多く認めるものです。フェニトイン開始後3-6ヶ月で始まり、9-18ヶ月でピークになるとされ、特に小児、若年者で問題となります。まず歯間の乳頭部分が腫脹するとされています。機序はさまざまな経路が関与していることが指摘されており下図を参照ください(Acta Neurol Scand 2012: 125: 149–155)。

以下はまれですが口蓋や口腔底にも歯肉増殖を認めた症例です(フェニトイン300mg/日内服 J Neurosci Rural Pract. 2020 Apr; 11(2): 349–352.)

An external file that holds a picture, illustration, etc.
Object name is 10-1055-s-0040-1709249_00004_01.jpg

■シクロスポリン

免疫抑制剤の中ではシクロスポリンが歯肉増殖の副作用があることで有名です(逆に同じカルシニューリン阻害薬のタクロリムスには指摘されていない)。シクロスポリン使用中の25-81%に認めるとされ、開始後6ヶ月以内が多いとされています(下図はJAMA Dermatol. 2019 Apr 1;155(4):487より引用)。