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PAPT: progressive ataxia and palatal tremor

  • 2021年6月20日
  • 2021年6月20日
  • 神経

病態

正確な病因は不明ですが、Guillain-Morralet triangleを形成する経路(下図参照)の障害により延髄下オリーブ核が仮性肥大をきたし、1~3Hz前後の口蓋振戦(palatal tremor)進行性小脳性運動失調を呈する変性疾患です。(実際には下オリーブ核~下小脳脚~小脳の経路の障害では口蓋振戦は生じず、歯状核か中心被蓋路の障害どちらかの場合が多いとされています)家族性と孤発性どちらも報告があります。

Guillain-Morralet triangleと病変の対応関係をMRI coronal像で提示すると以下になります(J Neuroimaging 2015;25:813-817.)。

振戦は周波数だけで鑑別することは出来ませんが、あくまで参考所見として各振戦と周波数の対応関係を下図に掲載します。口蓋振戦は(下図の軟口蓋という部分に該当)振戦の中では周波数1-3Hz程度と周波数が少ない部類に該当します(Muscle Nerve 2001;24:716)。安静時に認めることが特徴です。

患者さんは意外と口蓋振戦を訴えない場合も多く、日常生活にはそこまで支障を与えないことが多い印象があります(医師が診察して初めて指摘される場合もあります)。

眼球や体幹に同期した付随運動が波及する場合もあります。

また咽頭筋や鼓膜張筋に同様な不随意運動が起こることで、「耳鳴り」を呈することもあります。

画像検査所見

下オリーブ核の仮性肥大と信号変化小脳萎縮を認めます(以下はDOI: 10.1590/0004-282X20150062より引用)。

以下はArch Neurol. 2008;65(9):1248-9.より引用。

以下はNeurology: Clinical Practiceより引用。

■口蓋振戦の鑑別(臨床神経2013;53:224より参照)

・成人型Alexander病:GFAP遺伝子異常AD、延髄から脊髄にかけて著明な萎縮をきたし、小脳性運動失調と口蓋振戦をきたす場合がある。
・SCA20
・SCA7
・MSA
・PSP
・ベーチェット病
・橋本脳症
・抗GAD抗体関連神経障害
・セリアック病
・Superficial siderosis

参考文献

・臨床神経 2013;53:224-228