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初療医へ敬意を~後医は名医~

私事で強縮ですが最近小生は自分が直接ERで初療を行う機会がめっきり減り、どちらかというと後からの相談を受けるコンサルタントの立場になってきています。このような状況では後出しじゃんけんで「なんでこうなってしまったの?」という態度をとってしまわないよう注意が必要だと感じています。

「後医は名医」という言葉はどなたが言い出したのかは分かりませんが、本質をついた言葉だと思います。時間が経過するにつれて臨床情報は増えていきますし、診断と判断は自然と容易になります。初療医は全く何も情報がないまっさらな状態から鑑別プランを1から立てないといけない極めて難しいタスクを課されており、かつ患者さんをどんどん受け入れている忙しい現場だと時間的制約というプレッシャーもあります。また夜間当直は体力的にもつらいですし、やはり通常よりも判断力が鈍った状態で対応せざるをえません。

初療医はこのような非常に強いプレッシャーにさらされながら診療をしています。このようなプレッシャー下で働いているにもかかわらず、後から「なんでこれこれを考えていなかったの?」と言われると人間誰でも「いらっ」とするものです。「あんたは最初診察したときの難しさや苦労をわかっていないでしょ。データが全部そろってから悠々と解釈しているだけじゃないか。」と思ってしまうものです。

ここは双方の歩み寄りが必要です。もちろん初療側への医学的に正しいフィードバックが必要なことは論を待たないですが、後医のフィードバックする側は「なんでこれをしていないんだ!」または「なんでこんなことをしたんだ!」という姿勢ではなく初療医の苦労を十分に労った上でフィードバックするべきと思います。

目的は初療医を責めることではないですし、個人攻撃・人格攻撃をすることはもってのほかです。また初療医が診療してくれているおかげで自分は外来や病棟業務に集中できるわけです。学年が上になるにつれて初療を担当することが少なくなると、この意識がだんだんと薄れてしまいつい初療医にきつい言葉をかけてしまうことを良く目にします。すごく偉そうなことを書いていますが、私自身もそうなってしまっていないか?という自分への戒めのために書いており注意したいと思っています。