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転移性脊髄内腫瘍 intramedullary spinal cord metastases ISCM

脊髄腫瘍は原発性のものは星細胞腫(30才まで)、上衣腫(30才以降)、血管芽腫など(もちろんこれ以外にもたくさんありますが)が知られていますが、転移性脊髄内腫瘍(intramedullary spinal cord metastases: ISCM)は非常にまれで(担癌患者の0.1-04%に髄内転移を認める、脊椎関連の転移のうち4%を占める)、MRIの発達と腫瘍の治療法が発達した現代になってようやく生前診断がつく例が増加してきたようです(かつてはほとんどが剖検で診断されていたようです)。自験例はまだないのですが、相談した症例があり勉強した内容を簡単にまとめます(まだ調べ途中のものもあり不完全で強縮ですが)。

臨床像

■転移性脊髄内腫瘍70例まとめ Journal of Neuro-Oncology (2019) 142:347–354

年齢55.6歳, 女性60%
原発巣:肺癌51.4%, 乳がん18.6%, 腎癌8.6%, glioblastoma2.9%, melanoma 3.9%, sarcomas2.9%
症状の期間:21日(1-300日)
部位:頚髄33.7%、胸髄50.0%, 円錐部16.3%
転移:脳転移61%, 全身への転移34%
予後:104.5日(1-888日)
治療:保存的33%, 緩和的放射線56%, 手術11%

管理人のざっくりまとめ:原発巣は肺癌>乳がんが多い・胸髄領域が多い・脳転移を伴う場合が多い・予後かなり悪い

■肺癌由来の転移性脊髄内腫瘍まとめ Neurospine 2022;19(1):65-76.

年齢58±11.5歳, 男性68.9%, 喫煙歴84.6%
部位:頚髄28.3%, 頸胸髄 4.4%, 胸髄32.2%, 腰髄23.9%, 複数部位11.1%
肺腫瘍からISCMまでの期間:7か月(0-144か月)、ISCMが最初の診断31.2%
症状の期間:0.7か月(0-12か月)
症状:下肢筋力低下76.4%, 感覚障害 61.5%, 疼痛圧痛49.7%,膀胱直腸障害48.4%, 反射低下 18.0%, 無症候6.2%
病理:SCLC 39.1%, adenocarcinoma 25.1%, Squamous carcinoma 10.6%, neuroendocrine tumors 4.5$
転移 76.6%:脳55.8%, 髄軟膜 20%, 椎体19.5%

管理人のざっくりまとめ:胸髄が多い・筋力低下からの症状が多い・病理は小細胞癌が多い・やっぱり中枢神経の他部位に転移していることが多い・必ずしも原発腫瘍が先にみつかっているとは限らない

■転移性脊髄髄内腫瘍の2症例 脳神経外科 2002;30(2):189

この文献は症例報告ですが、考察部分でとてもよく臨床像をまとめてくださっています(素晴らしい症例報告です)。以下文章いくつかピックアップさせていただき、そのまま抜粋させていただきます(太字は管理人)。
数日~数週間の間に急速に進行することが特徴的である. 報告例でも, 約半数の症例が症状の出現から2週間で症状が完成しており, いかに早期に診断をつけ治療につなげるかが患者の機能予後において重要な点と考えられる.
・MRI上の鑑別診断としては, 他の原発性脊髄内腫瘍放射線脊髄炎が挙げられる. 原発性脊髄髄内腫瘍も同じような所見をとることが少なくない. また, 原発巣に対し放射線照射を行っている場合, 脊髄炎との鑑別は困難であり, 画像所見からだけでは診断できないことが多い.
・脳脊髄液中の変化としては, 細胞数は正常であるが蛋白量の増加を認めるのが特徴的であり, 悪性細胞は一般的には認めない.
・一般的には, 肺小細胞癌のように放射線感受性のある組織型の場合は放射線照射が第一選択となる.

画像所見

■49例の画像所見まとめ AJNR 2013;34:2043

〇患者背景
原発巣:肺癌49%, 乳がん14%, melanoma10%, CNS origin 8%, 腎細胞癌6%
原発腫瘍の診断よりも先に脊髄内腫瘍の診断がつく:20%
初期症状:筋力低下57%, 感覚障害16%, 膀胱直腸障害 10%, 疼痛 8%, 無症候 8%

〇画像
部位:頚髄 23%, 頸胸髄 3%, 胸髄 57%, 円錐部 16%
場所:中心部37%, 中心外 56%, 外へ突出する 6%
形態:辺縁明瞭 97%, 不明瞭 3%
脊髄腫脹:あり 63%, なし 37%
造影増強効果:あり 98%, なし 2%
造影パターン:均一 49%, 不均一 49%, リング状 2%
信号変化(長軸で何椎体分?):造影効果 1.4椎体, T2高信号 4.5椎体
T2WI:高信号 79%, 低信号1%, 変化なし20%
嚢胞変化:3%
腫瘍内出血:1%

画像の特徴まとめ:造影増強効果をほぼ全例伴う・T2高信号は広範囲・腫瘍内出血や嚢胞変化はまれ

CQ:PET画像所見は診断にどの程度寄与するのか?画像上のmimicker・鑑別は何か?

髄液所見

CQ:髄液腫瘍マーカーは診断に寄与するか?

治療法

確立した方法はなし・放射線治療はあくまでもpalliative careとなる場合が多い