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ブログ 質問回答 パート2

前に質問受付をしていましたので(こちら)そこでの質問からまたいくつか回答させていただきます。不定期になってしまい申し訳ございません。

質問「いつも拝見しております。どの記事を見てもエビデンスが豊富で、実習・勉強に参考になっています。 質問なのですが、これだけのエビデンスを先生はどうやって集められているのですか?医学情報、文献の集めかたを教えて頂きたいです。」

以下小生の回答

ご質問大変ありがとうございます。今回は医学生の方からのご質問なので医学生の方に沿った内容で回答出来ればと思います。まず文献の集め方に関してですが、もちろんpubmedは使用しているのですが、全てをpubmedで検索している訳ではなく重要な文献に1つ出会えば(例えばNEJMのreviewなどが代表です)その論文が引用している文献を孫引きしていくことを繰り返す作業を基本的には積んでいます。この方法が最も効率的ではないかと私は思います(こちらにまとめがあるのでもしよければご参照ください)。超優れた論文が誰の目にも触れず埋もれているということは医学では通常ありません。優れた文献は必ず誰かが引用しているので、それに乗っかるべきと思います。

近年は優れた医学の和書が多く存在するため、ついつい元文献をたどらなくても主要な情報はあらかた手に入ってしまいます。しかし、これは医者学年が進んでくると痛感するのですが原著論文をきちんとたどって情報を得ているか?それとも二次資料で情報をさらさらと情報をかき集めているか?でコンサルタントとして歴然とした知識の差が生じます(これは医者5年目くらいまではあまり問題にならないのですが6年目ごろから問題になってくる印象があります)。

もちろん私も自分の専門分野以外は和書に多大なお世話になっているのですが、自分の専門分野に関しては極力原著論文を自分で読んで解釈するように心がけています(もちろんまだまだ不足しているのですが・・・)。なので学生の方なので理想を申し上げると「英語の教科書や二次資料を読んで情報をとる訓練を時間がたっぷりあるうちに出来れば理想」と思います。教科書なら”Cardiovascular physiology concepts”や”ICU book”、”Harrison’s principles of internal medicine”など、論文なら繰り返しですがNEJMのreviewが候補かと思います。

私は学生の時は部活動ばかりだったのですが、唯一英語で情報をとる練習だけはしていたので(無駄にHarrison’s principles of internal medicineをゴリゴリ読んだり、UptoDateを読んだりしていました)医師になってから「英語で情報をとる」という意味ではかなり重宝した気がしています(医学知識という意味ではほとんどつかなかったかもしれませんが・・・)。

確かに「レジデントノート」や「ステップビヨンドレジデント」などは非常に優れた内容がまとまっていて素晴らしいことには変わりないのですが、時間が多くある学生の方が勉強するという意味においては英語で情報をとる訓練が出来ると時間が有効活用できるかもしれないなと思います。

ちょっと脱線してしまいましたがご質問に対する回答は最初のパラグラフが全てになるかなと思いますので、もしよければ別の「英語論文を読む」の記事もご参照ください。

質問「卒後6年目の医師です。神経内科専門医の取得を考えておりますが、日常診療以外にどのようにご勉強なされていますか? 神経内科専門医試験対策も含めて、ご教示いただけますと幸いです。」

以下小生の回答

ご質問大変ありがとうございます。私は基本的には日常臨床で遭遇した疑問をベースに勉強しているようにしています。私のやり方はその日の疑問をできるだけその日のうちにGoogle keepにメモとして箇条書きにしてストックし、時間が出来たときにそのストックされた疑問を調べてホームページの記事にするという作業をただ黙々と繰り返しています。どうしても「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で時間が経ってしまうと興味が減衰してしまうのがネックですが、やはり疑問をベースにしないと学習の興味を維持することが難しいと思います。ただ、神経内科の分野で電気生理・病理・画像に関してはある程度まとまった勉強が必要なことは間違いないと思います。何か教科書を一冊時間があるときに読み込む作業が重要なのではないかと思います。

また日常臨床での疑問と独立した勉強方法として(神経内科と直接関係はないですが)、私は“NEJM journal watch”というjournal clubを購読しています(確か年間1-2万円くらいだったと思います)。これは各分野で面白い論文が発表されたら各分野のexpertが簡単な記事のまとめとともに教えてくれるもので、私はmail magazine styleにして定期的に情報がメールで来るようにしています。こうすると超重要な論文を逃さないため結構有用かなと思います(世の中に様々な有料のjournal clubがありますが、おそらくNEJMのjournal clubが最も古くからあり有名なのではないかと思います)。これはお金はかかってしまいますが定期的に最新の情報をup dateには有用な方法と思います。

神経内科専門医試験対策は私は正直よくわからず申し訳ないのですが・・・最近の過去問は日常臨床で一度は遭遇する疑問をベースにした問題も増えてきている印象があります(例えば「妊娠予定のMS患者さんとするとフィンゴリモドは何か月前から休薬が必要?」、「DOACからヘパリンへの切り替えは?」など・・・もちろん重箱の隅をつつく問題も多いのですが・・・)。なのでまずは日常臨床での疑問を一つ一つ解決していくスタイルで良いのではないかと思います。私も神経変性疾患専門の病院に勤務している訳ではないので特に筋ジストロフィー関連など知識が弱いところがありそれらの点はある程度まとまって勉強しなくてはいけないなと思っています。

この質問回答コーナーをしていると段々本当に質問に答えるのが自分が適任なのか自信がなくなってきますが・・・、また今後も質問いただければ少しずつ答えていければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。