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acute-onset CIDP(A-CIDP)とGBS

一般的にギランバレー症候群は症状のピークが4週以内、CIDPは8週以上かけてピークに達するとされていますが、急性に発症する最終的に診断がCIDPとなる症例があり、acute-onset CIDP(以下A-CIDP)と呼ばれています。簡単に調べた内容をまとめさせていただきます。

臨床像

・8週間以上症状が進行し、単相性の経過ではない場合にA-CIDPを考慮します。
・9週以降の症状増悪が3回以上をA-CIDP、発症8週間以内に増悪を2回以内認める場合をGBS-TRF(treatment related fluctuation)とする報告もあります(下図NEUROLOGY 2005;65:138–140より引用)。


自律神経障害、顔面筋筋力低下、呼吸不全(人工呼吸管理が必要)、先行感染 を認める場合はギランバレー症候群(AIDP)らしく、感覚障害が重度の場合はA-CIDPらしいとされておりその文献を紹介します。
*例外的にCMV感染後のAIDPは感覚障害が強いことが指摘されています。

■A-CIDPとAIDPの臨床的な比較 Muscle Nerve 41: 202–207, 2010

・A-CIDPとAIDPに関して比較した代表的な論文です。A-CIDP30例、AIDP15例を比較検討しています。
<まとめ>
・A-CIDPらしさ:感覚障害が重度
・AIDPらしさ:自律神経障害、顔面筋筋力低下、呼吸不全(人工呼吸管理が必要)、先行感染
・電気生理的な違い:両者で認めず(sural sparing pattern、A波の存在などを検討)
*A-CIDP vs AIDP
・有意差を認めた項目:感覚失調 53.3% vs 3%、重度振動覚障害 46.7% vs 13.3%、自律神経障害 13.3% vs 70%、人工呼吸管理 6.7% vs 36.7%、顔面筋筋力低下 20% vs 56.6%、先行感染 33.3% vs 76.7%

検査

抗ガングリオシド抗体:AIDPでは認める頻度が低いとされており、CIDPは現状特異的なバイオマーカーが同定されていないため、抗ガングリオシド抗体陰性の場合は両者の鑑別に有用ではありません。

電気生理所見:上記の文献で紹介されている通り電気生理学的所見だけでA-CIDPとAIDPの鑑別は困難です。

治療

ステロイドの反応性という点が両者で大きく異なります(AIDPは基本的に効果がないのに対して、A-CIDPは効果あり)。

参考文献
・Brain and nerve 特集ギランバレー症候群のすべて「急性発症CIDP」