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結核

感染

起炎菌:Mycobacterium tuberculosis
感染経路:空気感染(人から人への感染経路しか存在しない)(患者:サージカルマスク、医療従事者:N95マスク *患者にN95マスクは必要なし)
生存環境:37℃、酸素があり軽度の二酸化炭素がある環境に生存するため、人体が環境として最も適している。
感染症法:2類感染症(診断後すぐに保健所に届け出を提出)

■ポイント
・結核は「感染」と「発病」の違いを認識しておくことが重要である。
・「感染」のリスク因子は環境によるものであり、「発病」のリスク因子は宿主の状態によるものである。

検査

■喀痰塗抹検査(Ziehl-Neelsen染色もしくは蛍光染色)

・目的:排菌の程度と感染性(つまり喀痰にどれだけ菌体が含まれており感染させるかどうか?)を評価する際に用いる( 8-24時間あけて3回連続で塗抹検査を行う:通称「3連痰」)。塗抹検査では結核菌と非結核性抗酸菌の鑑別は出来ない。
喀痰塗抹検査陽性の場合:「感染性のある肺結核」として扱い、すぐに陰圧個室隔離が必要となる
喀痰塗抹検査陰性の場合:「感染性は低い」ことを意味するが、肺結核の診断が除外できるわけではない。3連痰が陰性で隔離解除とすることが多いが、施設ごとの基準により判断する。
・表記:元々はGaffky号数であるが、近年は(-)~(3+)という表記が多い
・喀痰採取:早朝起床時の検体採取が望ましい(自力で出ない場合は空気感染対策をしながら高張3%食塩水ネブライザー吸引で誘発、気管支鏡肺胞洗浄液、胃液が選択肢)。
*胃液抗酸菌検査:早朝に実施するが、検体を放置すると時間が過ぎるごとに感度が低下するためすぐに処理してもらう必要がある。

■結核PCR検査

・目的:陽性の場合は基本「肺結核」発病状態の診断となる。
・死菌も陽性となるが、これは肺結核治療後のことなので通常は関係ない。
・感度は十分でなく、陰性であったとしても肺結核を否定することはできない。

■培養検査

・目的:肺結核発病の確定診断に使用するが、結果がでるまでに時間がかかる(液体培地は1-2週間程度、小川培地は4-8週間程度)。薬剤感受性は培養検査でしか分からないため培養検査は極めて重要。

■IGRA(interferon-gamma release assay) 別名:T-SPOT, QFT(血液検体)

・目的:結核菌に対する免疫応答を調べており、陽性の場合は結核菌感染(発病かどうかはわからない)を意味する。BCGの影響を受けない点がツベルクリン反応と比べて異なり優れている。
・あくまで免疫応答をみているだけであり「感染しているかどうか?」はわかるが、「発病しているか?」「発病していないか?」つまり活動性肺結核と潜在性結核感染症を区別することは出来ない
・偽陰性の問題:HIV感染、免疫抑制剤使用では検査が偽陰性になってしまう場合があり注意。

■検査と対応のフローチャート

臨床像

・病歴では労咳(ろうがい)、肋膜、肺浸潤、肺門リンパ、カリエスなどの既往歴を確認する。過去には結核という表現がされていなかった可能性があり、これらの診断を指摘されたことがないかを確認する。
・典型的な臨床経過というものはない。自然と改善してくる経過をとる場合もある。
・臨床上結核を疑うヒント:遷延する咳嗽・不明熱・原因不明の体重減少(食欲は保たれる)・通常の抗菌薬治療で治らない肺炎などで結核を疑う必要がある。
・肺外結核は胸膜炎、リンパ節炎、粟粒結核、髄膜炎、腸結核、尿路結核などに認める。通常肺外結核では空気感染対策は必要ない(例外:喉頭結核だけは必要)。

治療

・イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトールの4剤による初期治療を2か月、その後イソニアジド、リファンピシン2剤で4か月、計6か月の治療(2HREZ + 4HR)が標準的治療(以下の処方例は体重60kgと仮定)。
・イソニアジドではビタミンB6欠乏を来すリスクがあるため、補充を検討する。

INH(H):イソニアジド 商品名:イスコチン 100mg/錠 投与量:5mg/kg/日
(処方例)イソニアジド100mg 3錠分1

RFP(R):リファンピシン 商品名:リファジン 150mg/カプセル 投与量:10mg/kg/日
(処方例)リファンピシン150mg 4カプセル分1

EB(E):エタンブトール 商品名:エブトール 125mg or 250mg/錠 投与量:15mg/kg/日
(処方例)エブトール250mg 3錠分3

PZA(Z):ピラジナミド 商品名:ピラマイド 粉末 投与量:25mg/kg/日
(処方例)ピラジナミド1.5g 分1

±ピリドキサール(ビタミンB6) (処方例)10mg 2錠分1 *投与量に決まりなし