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ラモトリギン LTG: lamotrigine

商品名:ラミクタール

■作用機序:Naチャネル阻害

■代謝:肝臓 グルクロン酸抱合 *妊娠中やエストロゲンはクリアランス上昇あり
・T1/2:25-30hr Tmax:3hr *バルプロ酸併用は半減期が2倍になる
・血中濃度:3-15μg/ml TDM7日後gradeC *血中薬物濃度を出来るだけ測定したい(下図は抗てんかん薬血中濃度測定の有用性に関してのまとめ図) *2-20μg/mLという記載もある
・製剤:2,5,25,100mg/錠 口腔内崩壊錠(水なしで内服可能) *bioavailability優れる

■適応:部分発作・強直間代発作
若年女性(妊娠)と高齢者に使用しやすい点が特徴です。高齢者に有用な点はふらつきや鎮静作用といった副作用が少ないです。優秀な新規抗てんかん薬の3L(lacosamide, levetiracetam, lamotrigine)に該当します。
・また双極性障害に対して適応がある通り気分安定作用があり、気分障害を有する患者さんにも使用しやすい利点があります。
*気分安定作用(mood stabilizer)を担う抗てんかん薬はVPA・LTG・CBZの3種類が特に重要です。
*部分発作の治療薬としてとても重要な位置をしめています。
*Expert opinionでてんかんご専門の先生方からよく「他剤がダメだけどLTGではじめてコントロールがつくケースがある」というお話は伺っており、やはりてんかん診療において重要な位置を占める薬剤と思います。
*副作用としての鎮静作用や認知機能への影響は少ない
*特発性全般てんかんにおいてはVPAに劣る結果 Lancet 2007;369(9566):1016-1026.

■投与方法 

グラクソ・スミスクラインの添付文書では以下の通りです。
1:バルプロ酸併用→25mg/日・隔日投与から開始
2:非バルプロ酸併用・LTG代謝に影響を与えない薬剤併用(LEV, ZNS, GBP, TPM)→25mg/日から開始
3:非バルプロ酸併用・LTG代謝促進薬剤併用(CBZ, PHT, PB, PRM)→50mg/日から開始
その後の増量に関してはおおまかに2週間おきに25mg/日・隔日→25mg/日・連日→50mg/日→100mg/日と記載されています。

ただ添付文章記載の開始量/漸増量は多すぎる/増量間隔が短すぎるというExpert opinionもあります(バルプロ酸併用時は小児用のラミクタールを成人で使用してごく少量から開始するという方法も伺いました)。個人的には薬疹では特に初期投与量と最初の8週間がリスクとして重要なので、懸念の点からも以下のより慎重な開始/増量方法も検討します(あくまで参考です)。

開始量:25mg/日・隔日投与で開始 2日1回投与
→4週間後 25mg/日・連日へ増量 1日1回投与
→4週間後 50mg/日・連日へ増量 1日1~2回投与
→4週間後 100mg/日・連日へ増量 1日2回投与

*このように少量開始緩徐増量が必須の薬剤であるため、てんかん重積直後に内服へ移行する際などはやや使いづらく、急性期管理には向かず慢性期の切り替えなどで有用な薬剤と思います。

■副作用:薬疹 *抗てんかん薬と皮疹に関してはこちらにまとめがあるのでご参照ください
・これがLTG投与の最もネックとなる点でSJS/TENなどの重症薬疹の報告があるため、投与前には患者さんに十分に説明しておくことが必要です(開始して3か月以内は皮疹や発熱を認める場合は薬剤をすぐに中止してもらう)。
・初期投与量を十分少なく漸増していく方法を守れば薬疹のリスクをある程度下げることができます(下図はLTG初期投与量と皮疹による中断の関係:Drug Safety 1998 Apr; 18 (4): 281-296)。

・また薬疹の多くはLTG投与開始8週間以内に起こることが指摘されており(下図参照)、やはり投与初期が最も注意が必要です。

*参考資料:抗てんかん薬と薬疹(赤矢印部分がラモトリギン)

■ラモトリギンの妊娠中血中濃度クリアランスに関して Neurology ® 2008;70:2130–2136

下図の通り(縦軸はクリアランスである点に解釈上注意)ラモトリギンは妊娠中(特に後期にかけて)クリアランスが上昇してしまい、血中濃度が低下することが指摘されています。このため事前に至適な血中濃度を確認し、妊娠中も血中濃度が下がりすぎてしまわないかどうかフォローすることがとても重要です。

*参考:抗てんかん薬の継続率 下図の通りラモトリギンは長期間脱落が少なく使用継続できる薬剤であることがわかります。特に日本では皮疹のイメージが先行しすぎてしまっているのかもしれないですね。

*高齢者の焦点発作に対する抗てんかん薬としてもやはり上位に位置しています(expert opinion)