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「いやな気分よ、さようなら」 “Feeling Good” 著:David D. Burns

久しぶりにおすすめ本の紹介です。この本は「うつ病」に関する一般の方向けの内容ですが、うつ病だけでなく日常生活で感じる様々な「感情」に対しての深い洞察がされており非常に勉強になる本です。前提知識は必要なく医療従事者が読んでも一般の方が読んでもどちらでも勉強になります。本書のアプローチは極めて論理的で、「我々が無意識に信じ込んでしまっている非論理的な仮説を徹底的にあぶりだして検証する」という作業を繰り返しながら自己認知のゆがみへ目を向けるという極めてlogicalかつpracticalな方法をとっており、「認知行動療法」の端緒ともいえる本です。

近年「うつ」や「気分の落ち込み」に対するビジネス書や一般の書籍が多数刊行されていますが、それらを沢山読むよりも本書を一冊読んだ方が得られる内容が圧倒的多いと思います(びっくりするくらい分厚い本なので一瞬ひるんでしまうかもしれませんが・・・)。私は自分の外来の患者さんにも時々本書を薦めています。本書が発行されたのは1990年でSNSなど存在しなかった時代ですが、SNSによってもたらされている現代の様々な弊害をあたかも予見した様な内容も書かれており筆者の人間に対する洞察の深さに感嘆します。

この本に書かれている内容で個人的に印象に残った内容を以下にまとめてみました(本文の訳と多少日本語が違う点があるかもしれませんが意味は同じと思います)。

「自分の気分を高めることができるのは自分自身である、他人ではない」

「自分でコントロールできることに集中し、自分でコントロールできる外の物事を深く考えすぎない」

「感情が先にあるのではなく、常に行動が先にある しばしばぐずぐず主義に陥る人は気力と行動を混同している」

「人間の価値について考えるべきではない 大切なのは行動することであって価値というまやかしの蜃気楼ではない」

「自分自身で現実的なゴールを設定してそれを達成しようと努めることが重要である」

このような感じではっとするような言葉がところどころに記載されていて、今まで自分が当たり前と思っていたことや無意識で注意を向けていなかった内容にスポットライトを照らしてくれるような内容です。もしよければぜひ本書を読んでみてください(下図をクリックしていただくとAmazonのリンクに飛びます)。