病態/臨床像
・病態:尿酸ナトリウム結晶の沈着
・男女比が9:1と圧倒的に男性に多く、女性で少ない理由は閉経前エストロゲンの作用で尿酸排泄が亢進しているためと考えられている。女性例の方が非典型的で誤診しやすい。
・結晶の析出が病態なので、基本温度が高い体幹近くの関節では起こりにくく温度が低い遠位の関節で発症しやすい。また夜間は体温減少するため結晶が析出しやすい(このため明け方に母趾MTP関節での発症が多い)。
・罹患関節:1st MTP関節、足関節
*急性多発関節炎を呈する痛風に関して ”Acute polyarticular gout” Ann Rheum Dis. 1983 Apr;42(2):117-22. doi: 10.1136/ard.42.2.117. PMID: 6847258
41例(単施設3年間の検討)の急性多発関節炎を呈する痛風症例の検討(関節液での結晶検出を診断条件に含めている)
痛風初発全体の12%
患者像:59歳(25-85歳)、全例男性
当初の診断:約半数は痛風ではなし(当初の診断:化膿性関節炎 11例>関節リウマチ 5例>変形性関節症2例)
関節罹患数(平均3.9関節):2関節 29%, 3-5関節 59%, 5関節 12%
罹患関節の分布:下肢限局 56%, 上肢限局 7%, 上下肢いずれも 37%
具体的な部位:1stMTP関節>足関節>膝関節
同時発症例の方が付加的に罹患関節が増加していく場合よりも症状が激烈
管理人:2024/5/15 古い報告しかない 類似経験例があり調べたものを追記
リスク因子
・アルコール(特にビール)、脱水、外傷、手術、プリン体の多い食事、果糖が多い、尿酸値の変動(尿酸値の上昇だけでなく下降も誘発するリスクとなる)
・薬剤:利尿薬、アスピリン、シクロスポリン(タクロリムス)、エタンブトール、ピラミナジド
検査
・尿酸値で痛風の診断をすることは出来ない(尿酸値が低い状態で発症する場合もある、炎症自体が尿酸値を下げる効果がある、また尿酸値正常も痛風を否定することにはならない)。
・関節液:偏光顕微鏡で尿酸ナトリウム結晶を検出することで確定診断。偏光顕微鏡で軸に対して平行:黄色、垂直:青色、形態は先端がとがっていることが特徴。


・痛風に化膿性関節炎を合併する場合もあるため、関節液に尿酸ナトリウム結晶を認めた場合も必ず関節液培養検査を提出する。
治療(急性期)
1:NSAIDs(第1選択) 5-7日間投与
・出来るだけ発症早期に治療を開始すると効果が高い。
(処方例)ナプロキセン100mg 6錠分3から開始し漸減 7-10日間
2:コルヒチン 予兆期・発作予防(コルヒチンカバー)
・発作の予兆期・初期に使用することで効果があるが、関節炎が完成した状態で投与しても効果に乏しい。
・尿酸降下薬開始時に関節炎予防目的に併用する場合がある(コルヒチンカバー:6ヶ月程度)。
(処方例:発作初期)コルヒチン 0.5mg 2錠分2
(処方例:コルヒチンカバー)コルヒチン 0.5mg 1錠分1
*薬剤相互作用(CYP3A4)に注意:併用禁忌(クラリスロマイシン、シクロスポリン、イトラコナゾール、ベラパミル、ジルチアゼムなど)
3:ステロイド 腎機能障害時
・腎機能障害がある場合はNSAIDs、コルヒチンは使用できないためステロイドを使用する。効果発現の即効性は最も高い。投与方法の決まった方法はないが短期間で漸減中止とする。
(処方例)プレドニン 0.5mg/kg/日もしくは15-30mg/日 1周間ごとに1/3量を減量し3週間で中止
(処方例)プレドニン0.5mg/kg/日 7-10日間かけてtapering offへ
その他の注意点
・アセトアミノフェンは効果なし。
・尿酸値の変動は痛風発作を誘発するリスクがあるため、痛風発作の急性期に尿酸降下薬は開始しない。もともと尿酸降下薬を内服している場合はそのまま内服を継続する。
*高尿酸血症自体へのアプローチに関してはこちらのまとめをご参照ください。
その他の薬剤による尿酸値への影響 下図N Engl J Med 2022;387:1877-87.より
・尿酸降下作用:SGLT2阻害薬、ロサルタン、CCB
・尿酸値上昇作用:ACE阻害薬、ARB(ロサルタン以外)、アスピリン、β遮断薬、利尿薬

参考:N Engl J Med 2011;364:443-52. N Engl J Med 2022;387:1877-87. いずれも痛風のreview articleとして必読です
かまいたちの濱家さんが痛風を繰り返しており、ご自身のYoutubeチャンネルで痛風の辛さを語っていらっしゃります。痛風の辛さがひしひしと伝わってきます・・・。