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薬剤性肝機能障害 DILI: drug induced liver injury

入院患者さんの肝逸脱酵素上昇の原因として最も多いものは薬剤性です。ついつい場当たり的に薬剤を中止してしまうことがあるため予め体系的なアプローチを構築することが必要と思っています。本題と関係ないですが、ここ最近投稿が滞ってしまっており申し訳ございませんでした。

薬剤性肝機能障害

・通常薬剤開始後5-90日で起こる。無症候性の軽症例から急性肝炎を呈する重症例まで臨床像の幅が広い。入院中の肝逸脱酵素上昇の原因として最も多い。
市販薬、サプリメント、漢方薬でも生じうるため注意が必要。
肝細胞障害型、胆汁うっ滞型、混同型の3つに分類する。鑑別には”R-Ratio =(ALT/ALT上限値)/(ALP/ALP上限値)”が有用。それぞれの代表的な原因薬剤、また薬剤中止基準を図にまとめた。

・診断の”gold standard”はなく、その他の器質的な原因を除外することが重要。場当たり的に薬剤を中止してしまうことが多いのできちんと系統立ててアプローチする(以下私案参照)。

入院中患者の肝逸脱酵素上昇(特に薬剤性疑い)のアプローチ(私案)

0:腹部エコー検査で器質的原因を除外
1:開始後5-90日以内の薬剤を全てリストアップする(市販薬、サプリメント、漢方薬も含む)
2:肝細胞障害型、胆汁うっ滞型、混同型の3つに分類
3:疑わしい薬剤の順序中止して問題のない薬剤の順序をつける
4:疑わしいかつ中止して問題のない薬剤を1種類中止する
*この際もしも外れた場合次に中止するべき薬剤を予め順序に基づいて決めておく
5:採血を週2-3回程度フォローし、肝逸脱酵素がピークアウトするかどうかをフォロー
→ピークアウトすれば中止した薬剤を被疑薬とし、ピークアウトしない場合は予め決めた次の薬剤を1種類中止する
*重度の肝機能障害をきたしている場合は一度薬剤をほぼすべて中止せざるを得ない場合もある

重要なのは場当たり的に薬剤を切っていくのではなく、「予め中止する薬剤の順番を決めておくこと、また次回いつ採血?をし、ASTやALTの値がいくつになったら中止するか?を予め中止すること」である。

参考:World J Gastroenterol  2008 November 28; 14(44): 6774-6785