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脳卒中のDVT予防

脳卒中(脳梗塞・脳出血)に合併するDVT予防に関しての代表的な文献をまとめます(入院患者一般に関するDVT予防はこちらにまとめがありますのでご参照ください)。結論を先にまとめると次の通りです。

・脳卒中のDVT合併予防に間欠的空気圧迫法が推奨される。
弾性ストッキングは推奨されない(DVT合併予防効果がなく、皮膚トラブルが増加するだけのため)。
・脳卒中治療ガイドライン2015では「間欠的空気圧迫法は、深部静脈血栓症の予防に勧められる(グレードB)」と記載があります。

*間欠的空気圧迫法はIPC(intermittent penumocompression)とも表現されます(下の写真はLancet 2013, 382: 516–24より引用)。足に巻いたカフに空気を電気で間欠的に送ることで、機械によってマッサージを行い下肢血流の停滞を防ぐ効果があります。

脳卒中患者において弾性ストッキングはDVT予防効果があるか?:CLOTS 1 trial Lancet 2009;373:1958-65

Design:RCT,outcome-blinded ITT解析
P:急性期脳卒中(発症から1週間以内)患者、トイレまで自力歩行することが出来ない2518人 イギリス、イタリア、オーストラリア 64施設 2001/3/7-2008/11/27
 exclusion criteria:くも膜下出血、皮膚トラブルがある場合、PAD
(患者背景まとめ)脳梗塞:85%、脳出血:10%
I:弾性ストッキング装着(GCS:graduated compression stockings 大腿までの長さ thigh-length) 方法:夜間日中歩行可能になるまでずっと装着する→患者からの拒否がある場合、皮膚トラブルが出現する場合は中止も許可
C:何も装着しない
O:(primary outcome):DVT(symptomatic/asymptomatic) definite/probable 大腿、膝窩をエコー検査にて実施 30日以内ランダム割り付けから7-10日後と25-30日後にて下肢エコーを実施

結果 DVT:10.0% vs 10.5% 有意差なし PE:1.0% vs 1.6% 有意差なし 皮膚トラブル:5.1% vs 1.2%:OR=4.18 ARR=3.9% NNH=25人/30日

サブグループ解析:装着時期、抗凝固薬の使用、足を動かせるか動かせないか?→有意差出ず(下図参照)

まとめ:弾性ストッキングはDVT予防に効果なし、皮膚トラブルが増加する結果

注意点
・まずここで装着しているのは「大腿までの」弾性ストッキングです。日本の多くの病院で弾性ストッキングというと「膝下までの」長さが多いと思います。
・ここでは詳細は紹介しませんが”CLOTS2 trial”では「大腿までの」弾性ストッキングと「膝下までの」弾性ストッキングを比較しており、「膝下までの」弾性ストッキングのほうがDVT発生率が高いことが指摘されています。

脳卒中のDVT合併予防に間欠的空気圧迫法は有用か? CLOTS3 trial Lancet 2013;382:516-24

Design:RCT,
P:脳卒中患者(発症から3日以内、トイレまで介助なしでの歩行不可能)2876人 イギリス94施設
exclusion:SAH
I:間欠的空気圧迫法IPC(intermittent pneumatic compression) 日中夜間ずっと着用 自力歩行できるようになるまで着用する、最低30日間
C:何も装着なし
O:primary outcome:ランダム割り付けから30日以内のDVT発生率
結果 DVTに関して:8.5% vs 12.1% ATT=3.6% NNT=27

サブグループ解析結果(下図)

私は昔とある病院で勤務していた際に「SCUに間欠的空気圧迫法の機械を多く導入しよう」と思い朝の脳卒中ミーティングや用度課に要望書を出して提案したことがありますが、費用の点など種々の理由で提案が通りませんでした。施設によっては病院内でIPCは数に限りがありなかなか自由に使用することは難しいかもしれませんが、歩けない脳卒中患者さんには積極的な適応としていきたいです。

*サブグループ解析の図が非表示になってしまっておりました。大変失礼いたしました(管理人2021年2月10日)。