Guillain Barre症候群 合併症

Guillain Barre症候群ではさまざまな合併症を併発するため(特に重症例)、集学的なアプローチが必要となる場合が多いです。以下で各合併症に関して調べた内容をまとめます(ギラン・バレー症候群の一般的事項に関してはこちらをご参照ください)。この中でも特に重要なのが致死的になりうる自律神経障害深部静脈血栓症の2点です。これに加えてQOLに大きな影響を与える疼痛をこの記事では取り上げます。ギラン・バレー症候群患者さんでは「免疫治療により状態が改善するまでの間にいかに合併症を起こさないように適切に管理できるか?」が患者さんの予後に大きな影響を与えます。

自律神経障害

■循環動態

心血管関係の自律神経障害で頻度としても最も多いのは洞性頻脈です(GBS169例の自律神経障害に関してまとめた報告 Semin Neurol 1984;4:462:洞性頻脈37%、尿閉27%、発作性高血圧24%、起立性低血圧19%、便秘14%、イレウス9%、不安定な頻拍8%、迷走神経発作8%、その他の不整脈5%、持続性高血圧3%、その他6%)。この他にも血圧の乱高下はよく経験し、その他徐脈、致死性不整脈などさまざまな循環動態に影響を及ぼしうる自律神経障害をきたします。

ギラン・バレー症候群患者さんを管理する上での注意点(自律神経障害を念頭においた)を以下にまとめます。
全例モニター管理として、血圧、脈拍数などをこまめにフォローする(その意味では多くの症例でICUやHCUなどのユニット病床へ入院することが望ましいです)。
体位変換(特に座位へ急に起こすなど)で血圧が急激に低下する場合があるため注意する。
Volume statusをきちんと保ちhypovolemiaの状態を避ける(特に血漿交換を行う場合は血圧が下がりやすいためなおさら注意が必要)。
・特に人工呼吸管理では陽圧換気により胸腔内圧が上昇し、前負荷が低下するためvolume statusの管理に注意が必要。
喀痰吸引時の刺激が不整脈を誘発する場合があるため注意する。
昇圧薬、降圧薬、β-blockerなどは血圧変動を助長してしまうリスクがあるため使用する際には細心の注意を払う
・血漿交換療法では血漿交換中に血圧が急激に下がる場合があるため細心の注意を払う。

ギラン・バレー症候群による自律神経障害の「恐ろしさ」は経験したことがないとなかなか知識として知らないことが多いので、これらの管理上の注意点は集中治療医や看護師さん達ときちんと共有するべきです。特に吸引と体位変換の注意点に関しては看護師さんと共有するべきです。

■消化管運動

この他腸管運動、特に麻痺性イレウスにも注意が必要です。ICU入室の重症ギラン・バレー症候群患者さんのうち15%(17/114人)に麻痺性イレウスを認めたとも報告されており、決して頻度が少ないわけではありません(Muscle Nerve 2001;24:963–965)。自律神経障害による腸管蠕動運動の障害や、フェンタニルなどのオピオイド使用による薬剤性の蠕動運動障害、長期臥床などの影響が腸管蠕動運動低下に関与します。ギラン・バレー症候群の患者さんでは特に挿管管理の場合は経管栄養は慎重に開始し、また日々腹部所見(腸蠕動音や腹部の膨満)をフォローするべきです。

深部静脈血栓症

ギラン・バレー症候群でのDVT予防の臨床研究はありませんが、歩行が困難な患者さんでは全例でDVT予防を行うべきです(自力歩行ができるようになるまで)。DVT予防一般に関してはこちらにまとめがありますので、ご参照いただければと思います。

疼痛

ギラン・バレー症候群の中には非常に激しい疼痛を訴えられる方がいらっしゃり患者さんの負担が大きく、私も日常臨床でしばしば経験し対応に苦慮します。また診断の上では疼痛が筋力低下に先行する場合もしばしばあるため注意が必要です(この場合は疼痛だけでギラン・バレー症候群を診断することは極めて困難です・・・)。ギラン・バレー症候群の疼痛が神経根痛由来だとSLR(straight leg raising test)が陽性となる場合もよくあり、疼痛だけだと腰部椎間板ヘルニアによる神経根症との鑑別が当初は難しい場合もあります。

55人のギラン・バレー症候群患者の疼痛に関して調べた研究では、受診時に85.5%、経過中に89.1%の患者が疼痛を訴え、16人では疼痛が筋力低下に6.1日先行し、受診時のVASは4.7±3.3、疼痛のタイプとしては腰痛・下肢痛61.8%、四肢の異常感覚49.1%、四肢筋痛34.5%、内臓痛20%であったと報告されています(NEUROLOGY 1997;48:328-331)。

ギラン・バレー症候群では筋力低下が生じる前2週間以内に疼痛を訴える場合が36%あり、急性期には66%にものぼると報告されています(156人のギラン・バレー症候群の長期フォローNeurology 2010;75:1439–1447)。また下図の通り筋力低下の前からその後まで長期にわたり疼痛を有することがわかります。

ギラン・バレー症候群による疼痛に対して臨床研究によるデータがあるのはカルバマゼピン(Crit Care Med 2000;28:655-658)とガバペンチン(Anesth Analg 2002;95:1719-1723)です。1st lineのNSAIDsやアセトアミノフェンだけでは十分にコントロール出来ない場合も多く、これらの薬剤の使用を考慮します(場合によってはオピオイドも)。

特に四肢が完全麻痺になってしまったり、人工呼吸管理中は疼痛を患者さんが上手く訴えられない場合があるため医療者が積極的に疼痛を疑い、鎮痛管理をすることが重要です。

鎮痛薬に関しては神経根痛に対してステロイドが有用であったという症例報告があります。免疫グロブリン療法や鎮痛薬が無効だが、ステロイドパルス療法が著効したという報告です(Muscle Nerve. 2002 Mar;25(3):468. 臨床神経 2013;53:543-550)。後者の論文ではギラン・バレー症候群での疼痛に関する既報をまとめてくださっており私はいつも参考にさせていただいております(下図)。

参考文献

・Clinical Autonomic Research (2019) 29:289–299 GBSの自律神経障害に関してまとめた最新のreviewです。なかなかGBSのの自律神経障害のreviewはありませんので貴重です。

・Arch Neurol. 2005;62:1194-1198 ギラン・バレー症候群のsupportive careに関してまとめた論文でよくまとまっており参考になります(大きく踏み込んだ内容ではありませんが)。

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