注目キーワード

原発性アルドステロン症 Primary Aldosteronism

  • 2020年10月12日
  • 2024年7月27日
  • 内分泌

1:なぜ過小診断なのか?

原発性アルドステロン症は過小診断”Under-diagnosed”であると報告されています。多い報告では11.2%が原発性アルドステロン症であったと報告されています。高血圧患者の1~2%にしか原発性アルドステロン症の検索がされていないとも報告されています。

低K血症が有名ですが、逆に「低K血症の高血圧患者」しか原発性アルドステロン症のスクリーニングがされてないことが過小診断につながっているとも指摘されています。実際には低K血症を呈するのは半数程度とされており、低K血症がないからといって原発性アルドステロン症のスクリーニングをしなくて良いことにはなりません。

高血圧患者以外にも原発性アルドステロン症は直接心筋障害をもたらすことが知られており、心房細動や心不全などのリスクになることがしられています。このため今回参考にしているreviewでは(J Am Coll Cardiol 2019;74:2799)、原因不明の心房細動、血圧では説明しきれない臓器障害(左室肥大、拡張障害、微量アルブミン尿、CKD)、睡眠時無呼吸症候群などでも原発性アルドステロン症のスクリーニングをするべきとしています。

このように原発性アルドステロン症はcommonな疾患だと認識して、スクリーニング検査の閾値を下げることがまずは診断において重要になります。

*参考:RAAS系

2:検査

2.1:スクリーニング検査

■PAC(アルドステロン濃度:pg/mL) +PRA(血漿レニン活性:ng/ml/hr) 30分以上安静臥床状態で採血が望ましい

判定基準:ARR>200

PRAは「血漿レニン活性」なので注意です(「レニン濃度」ではありません)。また単位も間違えてしまう場合が多々あるので注意が必要です。ARR=PAC/PRA>200でスクリーニング陽性として、負荷試験に進む流れになります。計算上の注意点としては、血漿レニン活性は0.2 ng/ml/hrを最低値として計算します(たとえこれよりも低い値であったとしても)。

アルドステロン濃度単独が原発性アルドステロン症の診断基準として不適当な理由としては、1:低レニンだけが診断の鍵になる場合がある、2:アルドステロン濃度は塩分摂取量に影響を受けて変動する、3:アルドステロンに対しての腎臓、血管の感受性は人種や個人間で異なることが挙げられます。

低K血症、降圧薬、体液量など様々な要素がレニン・アルドステロンへ影響を与えます。検査する際にはこれらの影響を考慮するべきです。

低K血症ではK濃度を補正してから検査を行うべきとされています。降圧薬は必ずしも注視する必要はないとされていますが、検査結果に悩む場合はACE阻害薬、ARB、β-blockerは2週間以上、アルドステロン受容体拮抗薬、甘草を含む漢方薬は4週間以上休薬してから検査をします。カルシウム受容体拮抗薬、α-blockerは中止する必要がないとされているため、これらへ切り替えてから検査することも検討します。

2.2:診断検査

■カプトプリル負荷試験

・方法:カプトプリル®50mg (25mg 2錠 or 12.5mg 4錠)粉砕・内服
*検査当日は降圧薬内服しない

・採血のタイミング:内服前・60分後・90分後の3点
*内服前は早朝・安静臥床30分

・判定:ARR>200(60分 or 90分いずれかで)

■フロセミド立位負荷試験

・方法:フロセミド40mg静注・2時間立位保持(歩行可能)

・採血のタイミング:注射前・120分後(立位の状態で採血)の2点
*内服前は早朝・安静臥床30分

・判定:PRA<2.0ng/ml/hr

■生理食塩水負荷試験

・方法:生理食塩水2Lを4時間で点滴する。採血前20分を除いて排尿をうながす。

・採血のタイミング:点滴前・120分後の2点
*内服前は早朝・安静臥床30分

・判定:PAC>60 pg/ml

■造影CT検査

画像検査では検出できないほどの”micro adenoma”の可能性もあり、また左右どちらかの副腎が腫大していたとしても両側性のadenomaの可能性が否定できないことから「両側性」か「片側性」かの判断は画像検査で出来ません。両側性か片側性か?の判断には下記の副腎静脈サンプリングが必要になります。

■副腎静脈サンプリング AVS(adrenal vein sampling)

画像のところでお話しした通り、両側性か片側性か?の判断には下記の副腎静脈サンプリングが必要です。両側性か?片側性か?は治療に重要で、両側性の場合は薬物治療、片側性の場合は手術を検討します。

研修医のときに透視室で何度かみましたが、何というか非専門の私にとっては非常に細かい神技のように感じました。術者の先生が造影CTの副腎静脈を事前に確認していたので、造影CT検査はAVSに役立つかもしれません。

参考文献
・J Am Coll Cardiol 2019;74:2799 ほぼ全ての内容をここから参照させていただきました。