注目キーワード

morning glory sign

“morning glory”は朝顔のことを意味し、”morning glory sign”は進行性核上性麻痺(以下PSP)の患者さんの頭部MRI画像検査の所見として提唱されているものです。私は恥ずかしながら全く知らなかったのですが、先日読影レポートに記載があり勉強させていただきました。

一番最初に報告されたのはおそらくこちら論文(Magn Reson Med Sci. 2004 Dec 15;3(3):125-32.)で、ここで43例のパーキンソン症候群患者(内訳:PSP5例、PD23例、MSA14例 病理での確認なく臨床診断)の画像所見を解析してPSPに特徴的な凹面を認め、その様子が朝顔を横から見た像に似ていることから名付けられています。

*先日本論文の筆頭著者の先生から本記事にコメントを頂きました。改めましてご教授本当にありがとうございます。よくこのsignが誤解されてしまっており、「中脳被蓋側面の形態変化を見ているもので、大脳脚と被蓋部前縁の境界(くびれ)を見ているものではない」という点がポイントになると思います。以下筆頭著者の先生からご許可いただき、コメントを掲載させていただきます。

「morning glory signとは中脳被蓋側面の形態変化を見ているもので、大脳脚と被蓋部前縁の境界(くびれ)を見ているものではありません。PSPでの中脳被蓋の側面萎縮(陥凹所見:morning glory sign)起こると、このくびれがなだらかになり境界自体が不明瞭化しますが(このなだらかさ自体もsignの特徴の一部ではあります)、決してこのくびれ部分(境界)を指してmorning glory signと言ってはいけません。あくまでmorning glory signとはこの境界(くびれ)後方の中脳被蓋側面の陥凹所見を指します。
更に言うと、MRA元画像などのvolume scanで中脳被蓋側面を観察すると、ほぼ全面で被蓋側面は平坦か外側に張り出しています。つまり、中脳被蓋側面がどの部分であっても真に陥凹している場合は異常な萎縮を来たしている可能性があると思っています。(論文では正確を期すために乳頭体を含む水平断と規定しました。)
また、PSPとは異なりますが、視床が出血などにより広範な損傷を受けた場合も慢性化すると大脳脚は萎縮し、同側の中脳被蓋側面は陥凹します。(片側性morning glory sign)
従って、morning glory signは異常な中脳萎縮を反映していると考えられます。
是非、多くの先生方にmorning glory signの本当の意味を理解し、診療に役立てて頂けたら幸いです。」

重ねてこの度は本当に貴重なコメントをありがとうございました。

以下の画像はhttps://www.hyponex.co.jp/plantia/search/3792より引用させていただきました。

アサガオが枯れる原因と対策。枯れそうなときの復活方法について|植物とあなたをつなぐPlantia

この論文にはその後commentの論文が付き、角度によってmorning glory signに見える場合もあれば見えない場合もあるため注意が必要であるとされています(Magn Reson Med Sci. 2007;6(3):183-4; author reply 185. )。

PSPの画像診断ではでは矢状断での”humming bird sign”が有名ですが、矢状断動眼神経や眼球運動中枢を含んだ中脳部分の評価が十分にできていません。このため横断像での中脳の眼球運動中枢部分の萎縮を捉えることが出来ないか?というのが病態との対応関係になっています。

以下管理人記載
・2021/12/15 筆頭著者の先生からのコメント追記させていただきました。