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GBS group B streptococcus/ Streptococcus agalactiae

1:病原体

GPC chain, Streptococcusの中でB群連鎖球菌に属します、Streptococcus agalactiaeと名前が付いています。Streptococcusは分類がややこしいのでまとめを載せます。

(以下は自験例のGBS菌血症の血液培養グラム染色画像です)

常在部位は以下の通りです。感染症は基本的にこれらから直接菌が波及、もしくは菌血症を経由することが発症します。
消化管 10~25%
女性膣 10~40%
*性交渉により常在は多くなる(膣の環境が変化するため)とされています。
口腔内 5~20%

2:症状

菌血症:1年以内に4%程度に再発を認める(平均24週間というデータもある)

GBS菌血症は比較的よく遭遇し、この報告の通り確かに繰り返す場合を経験します。

感染性心内膜炎

後で詳しく解説しますが、GBSによる細菌性髄膜炎の中枢神経以外の感染フォーカスで最多の12%を占めています。

*参考:Streptococcus属による感染性心内膜炎の頻度 Circulation. 2020;142:720–730.

皮膚軟部組織感染症

化膿性脊椎炎・関節炎

以下は自験例85歳女性のGBSによる化膿性脊椎炎、菌血症の症例での腰椎MRI画像です。L2,3椎体に椎間板を超えて信号変化を認めています。

尿路感染症 80%:膀胱炎、20%:腎盂腎炎

細菌性髄膜炎

新生児と高齢者での細菌性髄膜炎の起炎菌として重要で、細菌性髄膜炎のうち0.3-4.3%程度を占めるとされています。私は今までGBSによる細菌性髄膜炎を2例経験があります。以下でGBS髄膜炎を141例まとめたreviewから特徴をみていきます(参考文献:J Infect. 2019 Dec 10. pii: S0163-4453(19)30374-3.)。

患者の背景因子はもともと並存疾患なく健康23%免疫抑制38%(糖尿病20%、肝疾患もしくはアルコール依存13%、自己免疫疾患もしくは免疫抑制剤使用9%、悪性腫瘍9%、HIV2%)とされています。元々リスクがない患者も23%いることに注意が必要です。

感染のフォーカスで中枢神経以外のものが指摘されたのは45%あり、感染性心内膜炎12%、中耳炎もしくは副鼻腔炎12%、関節炎9%、歯周囲炎4%、眼内炎4%、肺炎4%、蜂窩織炎4%、化膿性椎間板炎・脊椎炎4%とされています。感染性心内膜炎が12%と非常に多いです。

症状は頭痛84%、発熱78%、項部硬直73%、3徴候がそろうものが44%とされており、その他の細菌性髄膜炎と大きく変わりはありません。

髄液所見は細胞数:1800/μL, 蛋白:395 mg/dLが中央値とされています。

予後は後遺症32%(難聴20%、その他の神経学的後遺症13%)、死亡31%とされています。

(以下の写真はGBS髄膜炎での髄液外観自験例)

3:治療

治療抗菌薬第1選択:ペニシリンG

代替:アンピシリン

細菌性髄膜炎の場合の治療期間:IDSAガイドラインでは14~21日間

GBSは日常臨床でしばしば遭遇しますのでまとめさせていただきました。

参照:mandell