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再発性髄膜炎 recurrent meningitis

再発性髄膜炎は最低2回の細胞増加を伴う頭痛、発熱、髄膜刺激徴候(間欠期に寛解している)と定義されます。実臨床でもよく遭遇するため、ここでは再発性髄膜炎に関しての素晴らしいreview”Curr Pain Headache Rep 2017;21:33″の内容をまとめます。

鑑別

再発性髄膜炎の鑑別は1感染症、2悪性腫瘍、3良性腫瘍、4薬剤性、5自己免疫性の大きく5つのカテゴリーに分類することが出来ます。以下に鑑別を掲載します。

以下にいくつかの特徴的な所見をまとめます。

細菌性髄膜炎の再発

細菌性髄膜炎の再発は同じ菌による場合も違う菌による場合もあります。363例の再発例髄膜炎をまとめたliterature reviewでは、原因としては解剖学的問題(59%)と原発性・続発性免疫不全(36%)が多く、その他慢性的な髄膜周囲の感染症(5%)が挙げられます。リスク因子を下図にまとめます(CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, July 2008, p. 519–537:以下は全てこの論文より引用)。

以下にそれぞれの原因を解説します。

解剖学的異常

頭部外傷による髄液婁が47%と原因として最多です。髄液漏出は全頭部外傷の約2%、頭蓋底骨折の5~12%で起こるとされています。骨折部位としては、前頭洞骨折>眼窩骨折>蝶形骨骨折の順で髄液漏出が起こりやすいとされています。多くの外傷後髄液漏出は最初の24~48時間以内に自然閉鎖し改善しますが、遅れて髄液漏出が起こる場合も多く報告されています。髄液漏出に伴う髄膜炎合併は外傷後最初の1週間が最大(9.1%)とされています。髄液漏出による再発性髄膜炎の起炎菌としては肺炎球菌(89%)>インフルエンザ桿菌(6%)>髄膜炎菌(4%)の順で多いとされています。

Mondini型奇形は中耳とCSFが交通を持つため、耳管を通じて上気道常在菌が中耳に達すると髄膜に達してしまい、特に小児乳幼児の再発性髄膜炎の鑑別として重要です(ほとんどは10歳以下の小児)。感音性難聴をきたすことが特徴です。通常独立しておこりますが、Klippel-Feil症候群、Pendred症候群、Di-George諸侯群と関連しておこる場合もあります。特に小児の再発性髄膜炎では内耳機能の検査をするべきです。難聴が髄膜炎の影響とされてしまう場合、髄液が中耳にたまるのを滲出性中耳炎と誤診されてしまう場合(β2-transferrinを測定して鑑別)もあるため注意が必要です。

免疫異常

上記の明らかな解剖学的異常が指摘できない場合は免疫異常がないかどうかを検索することが必要です。原因としては補体欠損補体欠損が55%と最多で、補体は特に髄膜炎菌、淋菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌で重要な役割を担います。

髄膜周囲の感染症

73%が中耳炎、乳突蜂巣炎で副鼻腔炎は頻度が少ない傾向にあります。

起炎菌

起炎菌としては肺炎球菌が最も多く(56.6%)、髄膜炎菌(24.5%)、インフルエンザ桿菌(6.9%そのうち92%が補体欠損によるもの)、大腸菌(4.2%)と続きます。以下に各菌と背景因子の対応関係まとめを掲載します。

薬剤性 Drug-induced aseptic meningitis(DIAM)

NSAIDsが薬剤性髄膜炎の原因として有名で、特にイブプロフェンによるものの報告が多いです(詳細はこちらをご参照ください)。NSAIDsによる薬剤性髄膜炎は背景に膠原病疾患(特にSLE)があると起こりやすいことが知られており、NSAIDによる薬剤性髄膜炎を認めた場合は背景にこのような膠原病疾患がないかどうか全例調べるべきとされています。

薬剤性髄膜炎は通常薬剤暴露から48時間以内に発症し、薬剤を中止すると改善、薬剤に再度暴露すると再発する特徴があります。基本的には除外診断で、髄液所見は細胞数上昇(多核球・単核球優位どちらもある)、蛋白上昇、糖正常ということが多いです。