注目キーワード

軟髄膜原発悪性リンパ腫 PLML: primary leptomeningeal lymphoma

primary leptomeningeal lymphoma(PLML):軟髄膜原発悪性リンパ腫は中枢神経実質・全身のリンパ腫がなく、軟髄膜に腫瘍浸潤を認めるものです。PCNSLの7%、脳腫瘍全体のうち<1%, lymphoma全体の0.8%と非常に稀であり、また診断が極めて難しい疾患でもあります(PCNSL一般に関してはこちらをご参照ください)。私はまだ自分で診断出来たことが無いのですが、たびたび鑑別に挙がるため読んだ論文の内容をまとめます。比較的簡素で申し訳ございません。

以下はNeurology 2013;81:1690に48例まとめがあるため(これが報告されている論文で最も症例数が多いものです)、この内容をまとめます。

疫学

年齢中央値51歳、男性62%、女性38%、PCNSLにしては比較的T細胞由来が多いとされています(通常PCNSLはB細胞由来が圧倒的に多いため)。

症状

症状をまとめます。
68%:多巣性神経障害 multifocal
58%:脳神経障害 cranial neuropathies Ⅵ:31%, Ⅶ:17%
44%:頭痛 headache
25%:失調 ataxia
25%:脳症 encephalopathy
21%:膀胱直腸障害
8%:発作 seizure

他のPCNSLと同様に複数レベルの神経症候を認め、脳神経麻痺や腰仙髄領域の神経根症を多く認めるとされています。症状の経過はさまざまですが、発症から診断までの中央値は2か月、急性経過から緩徐経過まで様々あります。

髄液検査

髄液は全例で異常所見を何かしら認めたとされています。

細胞数(個/μL):96 (1-1160) 内訳リンパ球90%  細胞数上昇:92%
蛋白:235mg/dl (13-1317)  蛋白上昇(>55mg/dl):92%
糖:47mg/dl (10-150) 髄液糖低下(<50mg/dL):54%
細胞診陽性:67%
33%:髄膜生検を診断に必要とした

画像所見

異常81%、正常19%とされています。髄膜造影効果leptomeningeal enhancement:74%。

治療に関しては割愛させていただきます。

日本からの症例報告で(臨床神経2012;52:416)ADA高値(22.3U/L)、当初はリンパ腫指摘できず結核性髄膜炎との鑑別が問題となった1例が紹介されています。ADA高値は結核性髄膜炎だけではない点とこの症例では髄液細胞診を5回繰り返していますが陰性で、なかなか髄液細胞診でもとらえにくい場合ことがわかります。また頭部MRI検査も6回繰り返していますがいずれも陰性です。非常に診断が難しいことがわかります。

よく鑑別には挙がるのですが、私は未経験で勉強した内容をまとめさせていただきました。是非ご経験がある先生はご意見・コメントいただけますと幸いです。