高アンモニア血症 hyperammonemia

1:アンモニアの代謝・生理

人体にとって窒素(N: nitrogen)は細胞の代謝に必須の分枝です。アンモニア(NH3)はこの窒素の代謝に関与しています。アンモニアはグルタミンの合成に関与し、グルタミンがグルタミン酸へ分解されるときにアンモニアは産生されます。アンモニアとグルタミンは体内でこのような密接な関係にあります。

食事中の窒素(タンパク質に含まれる)は腸内細菌によって分解され、アンモニアとして門脈から吸収されます。これが肝臓では尿素回路によって分解されます。また肝臓の尿素回路だけではなく、骨格筋や脳(アストロサイト)ではアンモニアがグルタミン合成の過程で消費されることで血中アンモニア濃度を下げることが出来ます。

腎臓では尿細管でグルタミンを分解する過程でアンモニアが産生され、これが尿pHの調節に関与しています(くわしくは尿電解質こちらをご参照ください)。

アンモニアの代謝をまとめると、下記の関係になります。
・アンモニア供給源:食事・腸内細菌分解(腸)
・アンモニア代謝:グルタミンへ(腸・肝臓・脳・骨格筋)
・アンモニア排出:尿素回路(肝臓)

2:高アンモニア血症の原因

・検体の取り扱い不良(原因として最多・採取後すぐに検査に送る必要がある)
・肝機能異常
・肝機能異常を伴わないシャント(非肝硬変性門脈-大静脈シャント)
・てんかん後:尿素回路(=オルニチン回路)が回らなくなるため
・成人シトルリン血症
・薬剤:αGI(肝硬変には使用しないようにする)、バルプロ酸
・ウレアーゼ産生菌による尿路閉塞
・消化管出血
・多発性骨髄腫:原因はわかっていない

以下にこれらの原因と対応する機序を図に示します。

いくつかに解説を追加します。

■検体取り扱い不良

おそらく高アンモニア血症の原因として最も多いものです。採取後室温で1時間放置すると20%上昇し、2時間放置すると100%上昇することが知られています。採取後はすぐに検体を提出するか、難しい場合は氷水を入れたコップに浸けておくことが必要です。血球でのアンモニア代謝が原因とされています。

■肝硬変ではない門脈-大循環シャント

高齢になると肝臓が線維化がすすみ、シャントが形成されるとされています(本来出生的なときにあるが、高齢になってから問題になることが多い)。そこまで頻度は多くないですが私は2年に1回は出会う重要な鑑別です(余談ですが意識障害で腹部造影CT検査が役立つ極めて珍しい疾患のうちの1つです)。

■ウレアーゼ産生菌+尿閉

ウレアーゼ産生菌は尿素をアンモニアにします。これが尿閉によって排出されず、かつ膀胱壁が進展することでアンモニアが膀胱周囲静脈叢に吸収されると、膀胱は門脈循環ではなく体循環に属するので肝臓で代謝を受けることなく血中アンモニア濃度が上昇します。良く分からない意識障害の原因として重要な鑑別です。ウレアーゼ産生菌はProteus mirabilis,Pseudomonas aeruginosa,Klebsiella属,Morganella morganii, Corynebacteriumなどの報告があります(参考:臨床神経 2017;57:130)。

■薬剤

バルプロ酸は高アンモニア血症の原因薬剤として有名で、その代謝物が尿路回路の酵素を阻害することが原因とされています。

α-GI(αグルコシダーゼ阻害薬)は糖尿病治療薬ですが、2糖類の分解を阻害することで腸内での代謝が変化し、アンモニアが増加する可能性があり、肝硬変患者では投与するべきではないです。

5-FUによる高アンモニア血症を読者の方から教えていただきました。大変ありがとうございます。5-FU投与患者の5.7%(280人中16人)に認め、投与後中央値15時間で発症、アンモニア中央値:345、中止後中央値19.5時間で改善、1人以外は神経学的後遺症なく改善したとされています(British Joumal of Cancer (1997) 75(3), 464)。5-FUの代謝物が尿路回路を阻害すること+α(便秘、腎機能障害、体重減少など)が原因とされています(Auris Nasus Larynx 35 (2008) 295)。

参考文献
・Liver Int 2011;31:163 アンモニア代謝に関して包括的まとめたreviewで感動します。

“高アンモニア血症 hyperammonemia” への3件の返信

    1. コメントいただき大変ありがとうございます。
      5FUでの高アンモニア血症全く知りませんでした。大変勉強になりました!
      また教えていただけますと幸いです。ありがとうございます!

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