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γ計算と昇圧薬

1:γ計算

γ計算は「体重あたりの投与量」「時間当たりの投与量」という2つの概念を掛け合わせた単位(μg/kg/min)です。

体重に関して、例えば同じ薬でも体重50kgの人への投与量と体重100kgの人への投与量は異なるので、体重あたりの投与量と決める必要があります。

また時間あたりという点に関しては、例えばステロイドの場合は1日何mg投与したか?という積算量が重要ですが、ノルアドレナリンの様な半減期の短い薬は1日ノルアドレナリン何mg投与と積算量で考えるのではなく、時間あたりどのくらい投与しているか?で考えます。

このようにγという単位は体重あたりの投与量と時間あたりの投与量という両者を同時に表す単位が必要なので作られたものです。

γ計算のややこしさはこのように「体重」と「時間」という2つのパラメータを同時に扱わないといけないことに起因します。考えやすくするためには、1つのパラメーターを固定します(高校生のとき数学で変数が複数ある場合は片方を固定しろと習った記憶を呼び起こして)。ここでは「体重」をとりあえず体重50kgと固定・仮定して考えます。

次はもう1つのパラメーターの「時間」です。一般的には薬剤を投与するとき、一般的にシリンジポンプで”mL/hr”で表すため、 “1 mL/hr”が”何γ”に相当するか?を把握しておくと理解がしやすくなります。γ計算を毎回紙に書いてやるのはまったく実用的ではありません。途中の計算式は後で載せますがが、薬剤の濃度・組成が“A mg/mL”の場合、“1 ml/hr = A/3 γ”に相当します。これさえ覚えておけば大丈夫です。

例えば体重50kgで薬剤が150mg/50mL(=3mg/mL)の場合、1ml/hrで投与すると、それは3/3 γ=に相当します。

この結論となる計算式を下に載せます。

2:具体的な薬剤の組成とγ計算

ここでは先ほどのγ計算の簡単な方法を利用して、体重50kgと仮定した場合の各薬剤の代表的な組成とγ計算をまとめます。各昇圧薬の作用する受容体との関係は下図の通りです。

ノルアドレナリン Noradrenaline

製剤:1mg/1ml/1A

一般的な溶解組成
・ノルアドレナリン3A + 生理食塩水47 ml = 3mg/50ml
・ノルアドレナリン5A + 生理食塩水45ml = 5mg/50ml

一般的な登用量:0.05~3γ

■ノルアドレナリン3A組成の場合(=3mg/50mlの場合) “0.06mg/mL”

→ノルアドレナリン 1ml/hr = 0.02γ 投与量:0.05~3γ (=2.5~15 ml/hr)

■ノルアドレナリン5A組成の場合(=5mg/50mlの場合) “0.10mg/mL”

ノルアドレナリン 1ml/hr = 0.033γ 投与量:0.05-0.3γ(=1.5~9 ml/hr)

ノルアドレナリンの意義に関してはこちらにまとめておりますので、ご参照ください。

ドパミン Dopamine

商品名:カタボン®・イノバン®

組成:600mg/200ml・150mg/50ml(多くの場合3mg/mLのキットになっています)

速度:ドパミン1ml/hr=1γ(体重50kgの場合)

投与量と効果:濃度により作用する受容体が異なる
・-3γ:腎血流量を増加する
・3-10γ:β作用:心拍数増加、心臓収縮力増加
・10γ-:α作用:血管収縮作用

ドパミンは基本的に積極的に使用するべき状況が非常に限られる薬剤です。ショック患者さんを対象にノルアドレナリン vs ドパミンで行われたRCTとしてSOAPⅡというものがあります(NEJM 2010;362:779)が、これでは28日後の死亡には両者で差はなく、不整脈がドパミン群で有意に多い結果でした。またサブグループ解析では心原性ショックの患者においては逆に予後がドパミンで悪くなる結果でした(下図)。これ臨床研究以降ドパミンは立場が非常に弱くなっており集中治療領域で使用することはほとんどありません。

ドブタミン Dobutamine

商品名と製剤・投与量
・ドブポン0.3%シリンジ®:150mg/50ml

速度:ドブタミン1ml/hr = 1γ

使用量 開始:1γ(最大容量:20γ)

ドブタミンもカテコラミンの中では立場が非常に難しい薬です。カテコラミンの原則は「開始するからには離脱することが出来る」ことが条件となります。敗血症でのノルアドレナリンは、敗血症が抗菌薬治療などで改善すれば循環動態も安定しノルアドレナリンを切れる状況がありえますが、ドブタミンは心不全で心機能が根本的に改善することが期待できない場合は開始することが躊躇されます。私は今までドブタミンは基本的に使用しないという先生に何人か出会ってきました。結局どの程度病態が治療介入によって可逆的か?によるところが大きいと思います。

心原性ショックに対してカテコラミンとしてドブタミンとミルリノンどちらが優れているか?を検証したRCTがあり(”DOREMI” trial, N Engl J Med 2021;385:516-25.)、これに関して両者でprimary outcomeに関して有意差は認めない結果でした(下図参照)。またsubgroup解析でも有意差は認めませんでした。

Visual Abstract for 'Milrinone as Compared with Dobutamine in the Treatment of Cardiogenic Shock,' R. Mathew and Others (10.1056/NEJMoa2026845)