血液培養 blood culture

1:菌血症・敗血症

まず基本的な事項のおさらいですが、菌血症(bacteremia)敗血症(sepsis)は全く別の概念です。また、 菌血症であることは敗血症であることの十分条件でも必要条件でもありません。

菌血症(bacteremia)は血液中に菌を認めることを意味し、血液培養陽性と同義です。菌血症=血液培養陽性。

敗血症(sepsis)は「感染症に対する制御不能な宿主因子に起因した生命をおびやかす臓器障害」を意味します。

例えば、Streptococcus oralisによる感染性心内膜炎の患者で明らかな臓器障害を認めず、熱だけが亜急性に持続している患者は、「菌血症」ですが「敗血症」ではありません。
また肺炎球菌肺炎の患者がショックの状態で搬送となり、血液培養陰性の場合は「敗血症」ですが、「菌血症」ではありません。このように言葉の意味する内容の違いに注意しましょう(下図に関係性をまとめたので参照してください)。

2:血液培養を取る意義

血液培養が具体的にどう日常臨床で役に立つのかを下記に提示します。

検出された菌から感染症を逆に疑うことが出来る(菌から疑う)。(例えば、腸球菌が検出された場合は感染性心内膜炎が背景になりかどうか疑うし、GNR middleが検出されれば腹腔内感染症や尿路感染症をまずは疑います。)

血液培養から検出された菌と他の部位の培養から検出された菌が一致すれば、その菌によるその臓器の感染症の可能性が高くなる。(例えば、血液培養からKlebsiellaが検出され、喀痰からもKlebsiellaが検出されれば、Klebsiella肺炎の可能性が高くなる。逆に当初尿路感染症と思っていても血液培養からStreptococcus pneumoniaeが検出されれば、「尿路感染症ではない」と改めて診断を考え直すことが出来る。 また喀痰からS.aureusが検出された場合、血液培養陰性ではcontaminationの可能性も否定できないが、血液培養からもS.aureusが検出される場合はS.aureus肺炎の可能性を考える。)

■尿路感染症、肺炎であったとしても菌血症かそうでないかによって、治療期間を含めてマネージメントが異なる

■感染巣からの培養が難しい場合(蜂窩織炎、骨髄炎など)、唯一の起炎菌を知る手掛かりとなる場合がある。

上記の点が挙げられます。

よく「肺炎は血液培養陽性にあまりならないから、蜂窩織炎は血液培養陽性にあまりならないから→血液培養は必要ない」という意見を耳にしますが、個人的にはこれは間違っていると思います。

まず、1点目として「そもそもその診断が正しいか?」という問題があります。血液培養から以外な菌が検出されて、診断を見直す場合を個人的にはたびたび経験していますので(つまり最初の臨床診断が間違っているということで恥ずかしいですが・・・)やはり血液培養は重要と思います。

2点目はいくら感度が低くても「血液培養が陽性となった場合は治療方針が定まる」という点です。蜂窩織炎を疑った患者からG群連鎖球菌が検出されれば、確かに蜂窩織炎の診断を後押ししてくれますし、抗菌薬もde-escalationした対応が出来ます。

これらの利点が血液培養にはあるので積極的に取るようにしたいです。

3:いつ血液培養をとるか?

血液培養が役立つのは「熱があるとき」だけではありません。個人的には「vital signのいずれかに異常があるとき」を血液培養採取の基準とするべきと考えています。

例えばショックの原因として最も多いのは敗血症(全体の62%)です(N Engl J Med 2013;369:1726)。ショックの患者が搬送されたときに、出来るだけ早い時期に血液培養をとることが出来るかは非常に重要な初期対応となります。また、病棟患者さんの血圧が下がった場合に原因を検索してよく分からない場合、血液培養をすぐにとることが出来る人は意外と少ないのではないかと思います。ショックに関してはこちらをご参照ください。

逆に血液培養陰性の敗血症性ショックの原因としては、TSS・カンジダ菌血症・リケッチア感染症・レプトスピラ・培養陰性感染性心内膜炎・Clostridium difficile感染症・ウイルス感染症などが挙げられます。

また敗血症のもっとも最初の徴候として呼吸回数が上昇することが知られており(エンドトキシンが呼吸中枢に作用し呼吸回数を上昇させるとされています)、呼吸数が上昇している患者でも血液培養は積極的に採取するべきです。

意識障害の患者も、原因が分からない場合は常に細菌性髄膜炎の可能性、なんらかの細菌感染によって敗血症で二次的に意識が悪くなっている可能性があるため積極的に血液培養を取るようにしたいです。

このように各vital signの異常において血液培養は非常に重要です。つい熱が出ているか出ていないかだけを血液培養を取る基準にしてしまいがちですが、熱以外のvital signの異常がある場合も血液培養を取るように心がけましょう。

4:何セット採取するか?

基本は「2セット」採取します。同一箇所から採取した嫌気ボトル1本+好気ボトル1本を合わせて「1セット」と表現します。ときどき言葉が混乱してしまっている方がいるので注意しましょう。

1セットだけでの問題点としては、真の菌血症かcontaminationかの判断が難しい点と、起炎菌検出の感度が低いという点があります。

1本での感度:73.2%、2本での感度:93.9%、3本での感度:96.9%、4本での感度:99.7%と報告されています。J Clin Microbiol 2007;45:3546

感染性心内膜炎をはじめとする血流感染を疑う場合は基本「3セット」採取します。

5:真の菌血症か?contaminationか?

できるだけ上腕から血液培養を取る(鼠径部ではなく)といった技術的な側面もありますが、ここでは血液培養から検出された菌からその結果が真の菌血症なのか、contaminationなのかを考えます。

一覧を下図にまとめました。 J Clin Microbiol 2007;45:3546
Corynebacterium, Bacillusなどは高い確率でcontaminationです。
CNSはcontaminationのことが多いですが、真の菌血症の場合もあります。特にS.lugdunesisは真の菌血症の場合が多く特に注意が必要です。
・GNRは基本真の菌血症で、S.aureus, Candidaも1本で陽性であれば基本的に真の菌血症と判断します。

注意するべきは、S.aureus、Candidaが1本でも検出された場合はcontaminationとするのではなく、真の菌血症として対処するということです(特にCandidaはcontaminationと勘違いされてしまう場合がありますがこれは間違いです!)。これらの菌はあとでも述べますが血液培養のフォローアップも必要になるため迅速な対応が必要です。

S.aureusの場合は、SAB bundleと表現されますが(SAB: staphylococcus aureus bacteremia)

1:感染巣の同定+同部位のsource control
2:感染性心内膜炎の検索:経胸壁心エコー全例実施(必要あれば経食道心エコーまで)
3:血液培養のフォローアップ(陰性化の確認)
4:適切な抗菌薬介入と抗菌薬治療期間の設定
が必要となります。SABに関してはこちらをご参照ください。

Candidaの場合は、Candida眼内炎の合併がないかどうかの評価が必要なため眼科コンサルテーションを忘れないようにしましょう(下記に注意しましょう)。カンジダに関しては詳しくこちらをご参照ください。

1:眼内炎の有無の確認(眼科コンサルテーション)
2:感染巣の同定+同部位のsource control(カテーテル関連血流感染症の場合は、カテーテルの抜去)
3:血液培養のフォローアップ(陰性化の確認)

6:何日間の培養が必要か?

言い換えると「何日血液培養がはえないと陰性ということが出来るか?」となります。

基本的には培養期間は「5日間で十分」とされています。Clin infect dis 2004;38:1724

しかし、嫌気性菌・真菌感染は培養に時間がかかることが指摘されており、通常よりも長く培養してもらう必要があります(臨床的に疑う場合は、細菌検査室にあらかじめ長めに培養してもらうようにお願いすると良いです)。臨床的に何を疑うかによってどこで陰性と対応するかを考えます。

7:血液培養のフォローアップ

血液培養が陽性となった場合フォローアップが必要な場合は、「菌」と「疾患」の種類によって決まっています。

1:菌:S.aureus・Candida

2:疾患:感染性心内膜炎・カテーテル関連血流感染症

上記の場合は必ず血液培養をフォローアップし、陰性化を確認する必要があります。感染性心内膜炎は診断時には血液培養3セット採取しているかもしれませんが、フォローアップの時には2セットのみで問題ありません。

特に感染性心内膜炎とカテーテル関連血流感染症は「血液培養陰性から何日間抗菌薬治療をしたか?」が治療開始期間となるため注意が必要です(抗菌薬治療を始めた日が概算するのではないということです)。

以上血液培養に関して解説しました。「血液培養は感染症診療の基本!」ですので、いつ取るべきか?どうその結果を解釈するか?どう診断にむすびつけるか?どのような場合にフォローが必要か?を含めてきちんと理解しておくことが重要です。参考になれば幸いです。