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膠質液(colloid)まとめ

1:体内の分布

膠質液はcolloidとも表現され、血中の浸透圧を保つ高分子輸液製剤のことをさします。理想的には膠質浸透圧が保たれているため、下図のように全て血管内に分布するはずです(細胞外液、細胞内液、血管内と3つのコンパートメントに分類すると)。

しかし、実際には必ずしも血管内だけに分布するわけではないことが分かっています。一体なぜでしょうか?

血管内皮細胞は普段グリコカリックスというものに裏打ちされており、蛋白質が血管外に漏れないような構造になっています(下図左)。しかし、炎症や外傷といった状況ではこのグリコカリックスが剥がれ、血中の膠質浸透圧を規定する物質(例えばアルブミン)が間質へ漏出しやすい状態になっています(下図右)。そのため、たとえ膠質液を補充したとしても、血管内から間質へもれてしまうため血管内volumeを維持することが出来なくなってしまいます。

繰り返しですが、通常の場合は血管内皮をグリコカリックスが裏打ちしていますが(下図)。

しかし、炎症が起こっている場合はこれらが剥がれ落ちてしまうことで、アルブミンが血管外に漏れてしまうということです(下図)。

敗血症性ショック患者における、晶質液(細胞外液)と膠質液の臨床試験で膠質液が細胞外液と比べて予後を改善したstudyはなく、それは上記の機序が関係していることが考えられます。

2:製剤まとめ

具体的な製剤を下図にまとめした。上記の通りevidenceとしては適応はかなり限られるため安易に使用しないようにしたいです。

3:膠質液の臨床試験

■敗血症患者での膠質液(HES)

敗血症患者さんで膠質液と晶質液を比べたのは2012年にNEJMに発表された”6S trial”が有名なのでここに掲載します。

重症敗血症患者798人を対象にHES130/0.42群と酢酸リンゲル群をRCTで比較した臨床試験で、primary outcomeの90日死亡と腎代替療法の導入に関して膠質液群が有意に多い結果でした。この点から敗血症患者でのHES使用は避けるべきです。この理論的根拠はもしかしたら先ほど解説したグリコカリックスが関係しているかもしれません。

下グラフを見ると、20日ごろから死亡に差が生じてくるのが分かります。

■ICU患者での膠質液(HES)

敗血症患者に限らずICU入室の重症患者においても、上記6S trialと同年のNEJMにCHEST trialが発表されています。HES130/0.42群と生理食塩水群で死亡とAKI、腎代替療法の導入を比較した臨床試験でHES投与群で有意にAKI、腎代替療法の導入が多い結果でした。

参考文献:Intensivist