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「よき臨床医をめざして」 著:フィリップ・A・タマルティ

原著:”The Effective Clinician” his methods and approach to diagnosis and care
著者:Philip A. Tumulty
訳:日野原重明先生、塚本玲三先生 出版社:医学書院

この本は私が勤めていた病院の総合診療内科部長の先生が私が異動となる勤務最終日に餞(はなむけ)に下さった思い入れのある本です。本書が発刊されたのは1987年と現在から30年以上も昔のことですが、現在にも色褪せない臨床医としての心構えがたくさん書かれています。普段自分が実践できておらず耳が痛くなるような内容から、改めて襟を正されるような内容まで臨床医としてのあるべき姿をビシッと示してくれる本です。本書の中で特に個人的に印象に残った言葉を紹介させていただきます。

目次

「臨床医は、自分自身の立場ではなくて、患者の立場の方を守るべきである。」

「詳細な病歴聴取と診察ほど患者にとって良医であることをはっきり示すものはない。」

「臨床医であるからには、いつも冷静でなければならない!すなわち、臨床医の患者に対する反応はどんな時にもコントロールされたものでなければならず、決して”あるがまま”であってはならない。こういうわけで、またその他の理由から、患者をたたき返すのではなくて、病人というのは正常でないのだということを常に念頭に入れ、歯をくいしばり、”右のほほを打たれたならば左のほほをもさし出す”ようにしなければならない。」

「患者との会話を効果的にするということは決して医師が出たとこ勝負でやってみて体得されるすじのものではない、ということを認識していてほしい。」

「臨床医は実際はどんなに急いでいても、外見上は、あたかもたっぷり時間があるように見られなければならない。」

「病歴聴取は、”会話”であって、聴いたことを写しとる口述筆記のことではない!(History taking is a conversation – not a dictation!)」

「患者の反応がどんなであれ、そして患者の反応がどんなに苦々しかったり不愉快だったり、場所をわきまえないようなものであっても、臨床医は絶対に”頭にきて”はならない。臨床医は、不合理には分別心で、かんしゃく持ちには平静な心で、大人げないふるまいには知恵で対処しなければならない。」

“The physician must not just look, but see, and not just see, but analyze, and not just analyze but interpret – not just some of the data but all of it.”

「病歴と診察、およびその他の情報源から得た臨床的手掛かりのすべてをまず分析してから、鑑別診断名を優先順に簡単にリストアップすべきである。あとになってこの予備的判断が間違っていたと分かることを恐れてこういう作業をしたがらない臨床医がいることは残念である。しかし、そういう医師は、臨床診断では自分の失敗を通して学び進歩する、ということを忘れている。だから、自分で垣根をつくって自分が診断的判断をするのをいやがるような医師は決してその分析能力を上達させることはできない。間違っていると人から思われるのを恐れるようでは、学ぶことができるはずがない。」

私自身は耳が痛くなる内容や実践出来ていないことが多々あるのですが、少しでも見習うことができるように精進していきたいです。古い本なのでなかなか書店にはなくネット通販でも中古のものが多い様です(以下にAmazonのリンクを掲載させていただきます)。素晴らしい本なのでご興味ある方は本書を読んで是非感想などコメントいただけますと嬉しいです。