抗菌薬とてんかん発作

1:病態

ほとんどの抗菌薬(ペニシリン系・セファロスポリン系・カルバペネム系・フルオロキノロン系)が、神経抑制系のGABA受容体を阻害することで興奮系に傾くことでてんかん発作の閾値が下がる機序が推定されています。

カルバペネム系はこのほかにバルプロ酸の血中濃度を下げることでてんかん発作の閾値を下げることが指摘されており、添付文書上ではカルバペネム系とバルプロ酸の併用は禁忌とされています。

実際には抗菌薬投与だけではなく、感染症によっててんかん発作の閾値が下がっている要素もあるため、どこまでが抗菌薬を原因として良いのかは難しいところもあります。

2:どの抗菌薬でてんかん発作が起こりやすいか?

代表的な薬剤は下記の通りです。
・ペニシリン系:特にペニシリンG (unsubstituted penicillinsと表現されています)
・セファロスポリン系:全ての世代であり、特に第4世代セフェピム
・カルバペネム系:イミペネム>メロペネム
・フルオロキノロン系:特にシプロフロキサシン(腎機能障害、てんかん既往、テオフィリン投与中の患者において)

ペニシリン系では特にペニシリンGが神経毒性を持つことで知られており報告も多いです。ピペラシリン・タゾバクタムも報告がありますが、アモキシシリン・クラブラン酸は報告がないそうです(これは入院中には投与しないだけの話かもしれません)。

セファロスポリン系は全ての世代で起こりうるとされており、髄液移行性がないですがセファゾリンでも起こります。特に有名なのは第4世代のセフェピムでセフェピム脳症が有名です(セフェピム脳症に関してはこちらにまとめがあります)。

カルバペネム系イミペネムの報告が多く(報告ではイミペネム投与中の3%にてんかん発作があり、イミペネムが原因とされたのはそのうち31%)、メロペネムは報告が少ないです(0.07%)。カルバペネム系はVPA濃度を下げることがあるため添付文書上では併用禁忌となっているため注意です。

フルオロキノロン系はまとまった報告はなく、全て症例報告によるものです。シプロフロキサシンによるものが最も多いですが、どれも腎機能障害、てんかん既往、テオフィリン投与中の患者であるとされやはり背景のリスク評価が重要のようです。(有名なNSAIDs併用のことに関しては記載がありませんでした・・・)レボフロキサシンは中枢毒性は低く、報告もてんかん既往がある患者に限られています。

その他の薬剤は本当に因果関係が明確化どうか難しいものばかりで、とりあえずは上記の薬剤がてんかん発作の誘因になりうると認識しておけば良いと思います。

以下はてんかん既往患者において投与した場合てんかん発作の誘因となった可能性のある薬剤です。

私もかつて壊死性筋膜炎に対してペニシリンGで治療していた方が(腎機能悪い)、急性症候性発作を起こして、ペニシリンGをアンピシリン静注に変更したところてんかん発作が治まり、「やっぱりペニシリンGが悪かったのかな・・・?」という経験があります。難しいところが薬を変えたから発作が落ち着いたのか、通常発作を抑えるために抗てんかん薬も入るので、抗てんかん薬のおかげで発作が落ち着いたのかの判断がつきづらいところにあります。しかし、やはり抗菌薬がてんかん発作の原因になりうることに関してはきちんと把握しておくべきと思います。

今回の記事は全てNeurology ® 2015;85:1332–1341より参照させていただきました。抗菌薬関連脳症(AAE)に関してはこちらにまとめておりますので、ご参照ください。

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