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骨粗鬆症 osteoporosis

1:骨代謝の生理

骨代謝は骨芽細胞(osteoblast)による骨形成と、破骨細胞(osteoclast)による骨吸収による平衡関係で成立しています。この関係を調節するホルモンはPTH(parathyroid hormone)です。PTHは破骨細胞に直接作用するのではなく、その手前の段階に作用します。

PTHにより骨芽細胞はRANKL(receptor activator for nuclear factor κ-B ligand)を発現し、これは破骨細胞の前駆体の前破骨細胞が発現しているRANKという受容体と結合することで、前破骨細胞の破骨細胞への成熟を促します。
また骨芽細胞はOPG(osteoprotegerin:オステオプロテゲリン)というサイトカインを放出しており、これは前破骨細胞のRANKと結合することで、RANKLが結合することをブロックし、前破骨細胞が破骨細胞へと成熟することを抑制します。PTHはこのOPGの発現を抑制します。これによって前破骨細胞から破骨細胞への成熟を促すことで骨吸収をすすめます。

エストロゲンはOPG産生を促進し、RANKと結合することでRANKLの結合を阻害することで破骨細胞成熟を抑制します。閉経骨粗鬆症が増えるのは、エストロゲンが減少することでこの破骨細胞抑制機序が外れるためです。

ステロイドは薬剤性骨粗鬆症の原因として最も重要ですが、これはPTHと同様にRANKL発現促進とOPG産生抑制をすることで破骨細胞への成熟を促進し、骨吸収を促すことで骨粗鬆症になります。ステロイドによる骨粗鬆症は別の項(こちら)で解説します。

2:原因・疫学

■疫学

閉経後女性:50才以上の白人女性が生涯で大腿骨頸部骨折15-20%、何らかの骨粗鬆症性骨折を50%起こすとされており、骨塩量が”-1SD”ごとにリスクが2~3倍上昇するとされています。

男性:大腿骨頸部全体の1/3が男性とされています。男性の場合続発性が60%程度でステロイド、アルコール多飲、hypogonadismが多く、40%は明らかな原因は指摘できないとされています。

原因(続発性)

以下のものが続発性骨粗鬆症の原因として挙げられます。

内分泌:甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能亢進症・Cushing症候群・Hypogonadism
骨疾患:多発性骨髄腫・CKD・Vit.D欠乏
薬物:ステロイド・アルコール多飲
先天性:骨形成不全・Marfan syndrome
その他:慢性炎症性疾患(関節リウマチなど)

3:検査

■DEXA(dual-energy X-ray absorptiometry)

レントゲンで腰椎正面(L1~4もしくはL2~4)と大腿骨頸部の骨塩量を測定する最も一般的な方法です。腰椎での評価の注意点は圧迫骨折がある部位は値が高く出てしまうため、その部位を外して評価します。

YAM値(young adult mean):性別ごとの若年成人(20~44歳)の骨密度と比較して骨密度が何%であるかどうか?を計算した値で骨粗鬆症の診断、また治療適応の判断に重要な値です。海外では骨塩量の指標としてT scoreが使用されますが、YAM=70%とT score: -2.5が対応します。DEXAのレポートには同年代の平均と比較した値も記載されていますが、これは通常診断や治療適応の基準とはしません。

*脆弱骨折(fragile fracture)は立位から倒れたもしくはそれ以下の軽度な外力による骨折のことを表します。

しかし、このT score, YAM値は完璧に骨折を予想できるツールではありません。例えば、たとえ同じT score値であったとしても年齢によって骨折リスクが異なることが知られています(下図 Osteoporos Int (2001) 12:989より参照)。

このように実際には骨密度だけで骨折リスクの評価をするのは不十分といえます。

■FRAX

骨密度だけでは骨折リスクの評価には不十分であることから、WHOが作成した10年後の骨折リスク評価の計算ツールがFRAXです(正確には検査ではないですが)。
こちらからアクセスできます。https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?country=3

DEXAは骨密度の評価のみで、患者さんの年齢、活動度、既往歴などの総合的な骨折につながるリスクを評価していない点が問題でした。FRAXではこれらも含めて総合的に骨折リスクを評価することができるため有用なツールです。以下にBMI=25の場合各リスク因子があった場合の10年以内の骨折絶対リスクを載せま(データはイギリス人の場合です osteoporos int 2008;19:385より)

■その他:続発性の原因検索

腎機能:ビスフォスフォネートの適応
25(OH)ビタミンD:背景のビタミンD活性度の評価
ALP, Ca, P, PTH:副甲状腺ホルモンと骨代謝のマーカー
甲状腺ホルモン
テストステロン:男性では全例測定する

これに加えて多発性骨髄腫を疑う場合は免疫電気泳動や、クッシング症候群を疑う場合はコルチゾール、ACTH基礎値などの測定追加を検討します。

4:治療

非薬剤治療と薬剤治療に分けて解説します。

■非薬剤治療

食事・禁煙・飲酒量制限・運動・転倒予防策

これらが基本的に取り組む内容です。薬剤投与を考慮する前にまず介入したいです。

カルシウム・ビタミンD摂取

目標:カルシウム:1000~1200mg/日・活性型ビタミンD製剤:600-800IU/日

カルシウムに関しては経口カルシウム製剤は腸管吸収率が20-40%程度であり、カルシウム製剤の内服は必須ではないことから可能な限り食事から摂取することが望ましいです。乳製品・魚などからの摂取を心がけます。

■薬剤治療適応

1:骨粗鬆症性骨折(脆弱骨折)の既往 (全例)
2:DEXA: T score<-2.5 or YAM<70%

3:DEXA: T score -2.5~-1.0 + FRAXでのリスク評価(国ごとに基準が違い下記参照)
・海外:主要な骨粗鬆症による骨折:20%/10年以上もしくは大腿骨骨折:3%/10年以上
・日本のガイドライン:主要な骨粗鬆症による骨折:15%/10年以上

ステロイド使用中の患者に関しての適応は別で解説しています(こちら参照)。

■薬剤の作用機序

治療薬の作用機序を先に説明した骨代謝の図を用いて解説します。

ビスフォスフォネート(BP: bisphosphonate):破骨細胞に取り込まれることで、破骨細胞を抑制する。
抗RANKLモノクローナル抗体:破骨細胞への成熟過程で重要なRANKLへの抗体により、破骨細胞への成熟を阻害する。
SERM(selective estrogen receptor modulator):エストロゲンはOPG産生を促進しますが、それを阻害することで破骨細胞の成熟を阻害します。SERMは骨・脂質代謝のエストロゲン受容体に選択的に作用することで、子宮内膜へは影響を与えない利点があります。
副甲状腺ホルモン製剤:副甲状腺ホルモンは骨吸収に作用するホルモンですが、副甲状腺ホルモンを間欠的に投与すると骨芽細胞の分化が促進され骨形成を促す作用があります(不思議ですね)。

以下で各薬剤の解説を行います。

■ビスフォスフォネート製剤

ビスフォスフォネート(以下の図ではBPと表記・緑色の丸で表現)はまず骨に取り込まれ、それが破骨細胞へ取り込まれます。ビスフォスフォネートが破骨細胞へ取り込まれると、波状縁が消失して骨吸収が抑えられるという機序が働きます。ビスフォスフォネートは半減期が長く、薬剤投与後も骨に残り続けることが知られています(以下Nat rev rheumatol 2013;9:263より引用し図を作成)。

ビスフォスフォネートは骨粗鬆症の治療薬として第1選択の薬剤で、アレンドロン酸リセドロン酸を使用します。静注薬のゾレドロン酸(ゾメタ®)は日本では骨粗鬆症に対する保険適応がなく、悪性腫瘍による高Ca血症、骨腫瘍・転移病変のみです。骨粗鬆症の治療薬は沢山ありますが、ビスフォスフォネート以外の薬剤はビスフォスフォネートが使用できない場合・副作用がある場合・長期使用(3~5年)後に他剤の使用を検討します。

注意点
腎機能障害(eGFR<30ml/min)、食道病変がある患者では禁忌。
・起床後コップ1杯の水(180ml)で内服し、内服後30分間は座位を保持する。
・使用開始前に歯科治療が必要な歯がないかどうか確認(あれば歯科受診)。
・Vit.D欠乏、低Ca血症の状態では効果を発揮しない可能性があり、ビスフォスフォネート製剤を使用する場合には必ずVit.D製剤を併用する。
・長期合併症としてまれながら非定型骨折顎骨壊死(下図 N Engl J Med 2006; 355:2348より引用)があります。

ビスフォスフォネートの問題としていつまで薬剤を継続するか?(つまり長期投与の治療効果と安全性)という点が挙げられます。ビスフォスフォネートは半減期が年単位と非常に長いことがしられており、中止後も骨に残り、破骨細胞を抑制することが知られています。このため5年以上ビスフォスフォネート製剤を使用する場合かつ骨折低リスク、骨密度がフォローで改善している場合はビスフォスフォネート製剤の休薬”drug holiday”も検討します。しかしここはまだきちんとした基準がある訳ではなく今後の課題です。

まとめ

■活性型ビタミンD製剤

ビスフォスフォネート製剤を使用する際に必ず併用します。ただ活性型ビタミンD製剤単独では骨粗鬆症予防効果が示されていないため、単独では使用しないようにします。副作用としては薬剤性高Ca血症に注意が必要で、特にエルデカルシトールでは頻度が多いです。特に高齢者ではアルファカルシドールの少量から(0.5μg 1T1x)が安全で、定期的にCa値をフォローすることを忘れないようにするべきです。

■抗RANKLモノクローナル抗体

腎機能に関係なく使用できる点とビスフォスフォネートはコンプライアンスが悪くなりやすい点が問題ですが、本剤は投与間隔が広いことからコンプライアンス改善が期待できる点が利点です。ただ、ビスフォスフォネートと同様非定型骨折や顎骨壊死の副作用がまれながら存在します。ビスフォスフォネートと異なり投与を中止するとすぐに効果がなくなってしまう点に注意が必要です。本剤は第一選択にはならず、ビスフォスフォネートが使用できない場合に使用を検討します。

一般名:デノスマブ(denosumab)
・ランマーク® 処方例:120mg 4週間に1回 sc
・プラリア® 処方例:60mg 6か月に1回 sc

副作用:低Ca血症、顎骨壊死、非定型骨折

■副甲状腺ホルモン製剤

副甲状腺ホルモンは骨吸収に作用するホルモンですが、副甲状腺ホルモンを間欠的に投与すると骨芽細胞の分化が促進され骨形成を促す作用があります(骨粗鬆症治療薬のほとんどが骨吸収抑制の機序ですが、本剤は唯一骨形成促進の機序です)。推奨度は国によっても異なりますが、第1選択薬ではなく、第1選択のビスフォスフォネートが使用できない患者もしくはビスフォスフォネートによる副作用で継続できない患者に本剤の使用を検討します。副作用は投与後に一過的に高カルシウム血症になることがあります。また長期投与での骨肉腫リスクの懸念があり、投与期間に制限があります。

一般名:テリパラチド
商品名:フォルテオ® 20μg 1日1回 sc 投与期間:24ヶ月・自己注射可能
商品名:テリボン® 56.5μg 週1回 sc 投与期間:72週間・医療機関で注射

■SERM (selevtive estrogen receptor modulator)

SERMは骨のエスロトゲン受容体に選択的に作用し、子宮内膜組織には作用しないことから婦人科悪性腫瘍のリスクを上げることなく閉経後骨粗鬆症の治療が出来ます。椎体骨折の以外の骨折を減らすエビデンスがない点と副作用で静脈血栓症のリスクが上昇する点が本剤の弱点です。第1選択になることはなく、ビスフォスフォネートが使用できない場合の閉経後骨粗鬆症に使用を検討します。以下の2つの製剤があります。

ラロキシフェン(商品名:エビスタ®)60mg 1T1x 朝食後
バゼドキシフェン(商品名:ビビアント®) 20mg 1T1x 朝食後

副作用:ほてり、浮腫、静脈血栓症(これが最も重要です)

以上骨粗鬆症に関してまとめました。この領域はまだ私も不勉強なので適宜アップデートしていきます。

参考文献
・N Engl J Med 2016;374:254-62:閉経後骨粗鬆症のreview
・N Engl J Med 2008;358:1474:男性の骨粗鬆症のreview
・N Engl J Med 2018;379:2547-56:ステロイド誘発性骨粗鬆症のreview 
・Gノート「骨粗鬆症」:EBMで有名な総合診療科の南郷先生が執筆されており素晴らしい内容です。