- 1 考慮すべき点
- 2 臨床試験
- 2.1 “Association of Alternative Anticoagulation Strategies and Outcomes in Patients With Ischemic Stroke While Taking a Direct Oral Anticoagulant” Neurology ® 2023;101:e358-e369.
- 2.2 “Anticoagulation Strategies Following Breakthrough Ischemic Stroke While on Direct Anticoagulants” Neurology® 2025;105:e213964.
- 2.3 ANN NEUROL 2020;87:677–687
考慮すべき点
1:そもそも塞栓症の原因が心房細動なのか?(特に注意が必要なのは悪性腫瘍関連の塞栓症)
2:アドヒアランス
3:投与量
4:薬剤相互作用
臨床試験
ガイドラインでこの点に関しての言及はなく、RCTはまだありませんが、近年複数の大規模な報告があります。現在RCTも進行中です。
“Association of Alternative Anticoagulation Strategies and Outcomes in Patients With Ischemic Stroke While Taking a Direct Oral Anticoagulant” Neurology ® 2023;101:e358-e369.
design: 後ろ向きコホート研究(propensity score-weighted)
患者:非弁膜性心房細動にDOAC内服中の脳梗塞発症 香港、6年間
除外基準:僧帽弁狭窄症、左室内血栓、弁置換術後、LAA閉鎖後、ASD、真性多血症、本態性血小板増多症、DOAC不適切使用量
1:DOAC→ワルファリンへ変更 n=122
2:DOAC→別のDOACへ変更 n=477
3:DOACそのまま変更なし n=1652
primary outcome:脳梗塞再発(脳梗塞の病型は問わず)
secondary outcome:頭蓋内出血、ACS、死亡
*secondary analysis: DOAC同じ群に抗血小板薬追加して脳梗塞再発が減るかどうか?
結果
・DOACを別のDOACへ変更またはワルファリンへ変更は脳梗塞再発リスクが上昇する
→実臨床ではワルファリンまたは別のDOACへ切り替えしているDr多い印象あるため注意.またなぜ別のDOACに変更することで上昇するのかは機序よくわからない.
・その他:抗血小板薬の追加は脳梗塞再発減少しない,脳梗塞再発リスク因子は高齢,DM,CYP/P-gp誘導薬の併用,大血管硬化

・個人的にはやはり脳梗塞の病型ごとにどうか?という点が気になります。この点が述べられていないので悩ましいです。
・ワルファリンに関してはやはりTTRの問題がぬぐいきれません。ただDOACスイッチで脳梗塞再発が増加する点に関してはやはり機序が難しいです。やはり何かしらの交絡因子が除去できていないのでしょうか。
管理人の一言:これはあくまでも雑感ですが(何か根拠がある訳ではないですが)、DOAC自体の問題というよりも患者背景による再発率リスクが問題である可能性があるかと思います。再発した場合にDOACがfailしたという概念だけでは説明できないのかもしれません。
“Anticoagulation Strategies Following Breakthrough Ischemic Stroke While on Direct Anticoagulants” Neurology® 2025;105:e213964.
・DOAC内服中の患者が脳梗塞を発症した場合に、DOACを継続するか?ワルファリンへ切り替えるか?といった抗凝固療法の選択がoutcomeにどう影響を与えるか?を検討したmeta-analysis
まとめ
・ワルファリンへの切り替えは、虚血性脳卒中の再発、頭蓋内出血(ICH)、およびあらゆる脳卒中のリスクを有意に増加させる
・DOACを別のDOACへ切り替えることによる差はない
・DOACへ抗血小板薬の追加はメリットはなく、有害事象が増加する
結果
①脳梗塞再発
| 比較される戦略 (Compared Strategies) | リスク比 (RR) (95% 信頼区間) [引用] | 主な知見 (Key Finding) |
| ワルファリンへの切り替え vs. 同じDOACを継続 | 1.80 (1.42–2.29) | ワルファリンへの切り替えは、同じDOACを継続するよりも虚血性脳卒中再発のリスクが有意に高い。 |
| ワルファリンへの切り替え vs. DOAC用量変更 | 1.72 (1.20–2.45) | ワルファリンへの切り替えは、DOACの用量を変更するよりも虚血性脳卒中再発のリスクが有意に高い。 |
| ワルファリンへの切り替え vs. 別のDOACへ切り替え | 1.60 (0.93–2.76) | ワルファリンは、DOACから別のDOACへ切り替える場合と比較して、再発性虚血性脳卒中を増加させる非有意な傾向があった。 |
| 同じDOACを継続 vs. DOACに抗血小板薬追加 | 0.76 (0.56–1.02) | プレストロークDOACの継続は、DOACに抗血小板薬を追加した場合と比較して、再発性虚血性脳卒中の非有意な減少傾向と関連していた。 |
| 同じDOACを継続 vs. 別のDOACへ切り替え | 類似の発生率 | プレストロークDOACの継続と別のDOACへの切り替え(機序にかかわらず)は、虚血性脳卒中の再発に関して類似の発生率を示した。 |
| DOACに抗血小板薬追加 | 利益なし | DOACに抗血小板薬を追加することは、脳卒中再発予防に利益をもたらさない。 |
②頭蓋内出血
| 比較される戦略 (Compared Strategies) | リスク比 (RR) (95% 信頼区間) [引用] | 主な知見 (Key Finding) |
| ワルファリンへの切り替え vs. 同じDOACを継続 | 2.90 (2.01–4.18) | ワルファリンへの切り替えは、同じDOACを継続するよりもICHのリスクが有意に高い。 |
| ワルファリンへの切り替え vs. DOAC用量変更 | 2.95 (1.68–5.00) | ワルファリンへの切り替えは、DOACの用量を変更するよりもICHのリスクが有意に高い。 |
| ワルファリンへの切り替え vs. 別のDOACへ切り替え | 3.25 (2.13–4.96) | ワルファリンへの切り替えは、DOACから別のDOACへ切り替えるよりもICHのリスクが有意に高い。 |
| 同じDOACを継続 vs. DOACに抗血小板薬追加 | 類似の発生率 | プレストロークDOACの継続は、DOACに抗血小板薬を追加した場合と比較して、ICHの類似の発生率と関連していた。 |
| 同じDOACを継続 vs. 別のDOACへ切り替え | 類似の発生率 | プレストロークDOACの継続と別のDOACへの切り替え(機序にかかわらず)は、ICHに関して類似の発生率を示した。 |
| DOACに抗血小板薬追加 | 利益なし | DOACに抗血小板薬を追加することは、ICH予防に利益をもたらさない。 |
③脳卒中
| 比較される戦略 (Compared Strategies) | リスク比 (RR) (95% 信頼区間) [引用] | 主な知見 (Key Finding) |
| ワルファリンへの切り替え vs. 同じDOACを継続 | 2.02 (1.59–2.57) | ワルファリンへの切り替えは、プレストロークDOACの継続と比較して、あらゆる脳卒中のリスクが有意に増加した。 |
| ワルファリンへの切り替え vs. DOAC用量変更 | 2.08 (1.57–2.75) | ワルファリンへの切り替えは、DOACの用量を変更するよりもあらゆる脳卒中のリスクが有意に増加した。 |
| ワルファリンへの切り替え vs. 別のDOACへ切り替え | 1.83 (1.10–3.07) | ワルファリンへの切り替えは、DOACから別のDOACへ切り替えるよりもあらゆる脳卒中のリスクが有意に増加した。 |
| (特に類似機序のDOACへ切り替えの場合) | (2.28 (1.31–3.99)) | (特に、類似機序のDOACへの切り替えの場合に顕著)。 |
| 同じDOACを継続 vs. DOACに抗血小板薬追加 | 0.77 (0.59–1.01) | プレストロークDOACの継続は、DOACに抗血小板薬を追加した場合と比較して、あらゆる脳卒中のわずかに非有意な減少と関連しているように見えた。 |
| DOAC用量変更 vs. 別のDOACへ切り替え | 1.21 (0.95–1.53) | DOAC用量変更は、DOACから別のDOACへ切り替える場合と比較して、あらゆる脳卒中リスクの非有意な増加が見られた。 |
| 同じDOACを継続 vs. 別のDOACへ切り替え | 類似の発生率 | プレストロークDOACの継続と別のDOACへの切り替え(機序にかかわらず)は、あらゆる脳卒中に関して類似の発生率を示した。 |
| DOACに抗血小板薬追加 | 潜在的に有害 | DOACに抗血小板薬を追加することは、あらゆる脳卒中予防において潜在的に有害である可能性がある。 |
患者背景
| 研究名 | 国/地域 | 症例数 | 平均年齢 (歳) | 女性 (%) | 追跡期間 (ヶ月) | 民族 | NIHSSスコア | IVT (%)※1 | EVT (%)※1 | CHA2DS2-VAScスコア | 競合する病因 (%) | 指標イベント前の非遵守率 (%) | 抗凝固療法の適応 | 低抗凝固活性 (%) |
| Duong et al., 2023 | カナダ (入院、緊急、外来) | 985 | 80 | 46.4 | 21 | NA | NA | NA | NA | 1.7 (±1) | NA | 45.0 (445例) | NVAF | NA |
| Grifoni et al., 2024 | イタリア (入院) | 169 | 83 | 53.3 | 12 | 白人 | 3.5 | NA | 8.3 | 5 (±1.2) | 1.2 (5例) | 20.1 (34例) | NVAF | NA |
| Hsieh et al., 2023 | 台湾 (入院) | 3,759 | 62 | NA | NA | アジア人 | NA | NA | NA | 5.2 (±2.1) | NA | NA | AF | NA |
| Ip et al., 2023 | 香港 (入院) | 2,337 | 79 | 52.8 | 16 | アジア人 | NA | NA | NA | 4.6 (±1.7) | 10.9 (257例) | NA | NVAF | NA |
| Lin et al., 2024 | 台湾 (入院、外来) | 1,979 | 77 | 47.5 | 13 | アジア人 | NA | NA | NA | 3.8 (±2.6) | NA | NA | NVAF | NA |
| Paciaroni et al., 2022 | 多施設 (欧州、米国) (入院、外来) | 1,240 | 72 | 46.3 | 15 | 混合 (主に白人) | NA | NA | NA | 4.7 (±2.0) | 25.8 (320例) | NA | AF | NA |
| Polymeris et al., 2022 | 多施設 (スイス、ドイツ、米国) (入院) | 2,946 | 81 | 47.7 | 3 | 混合 (主に白人) | 6 (±2.1) | 11.9 (351例) | 26.8 (787例) | NA | 24.2 (713例) | 31.7 (934例) | NVAF | 7.5 (220例) |
| Seiffge et al., 2020 | 多施設 (欧州、アジア、北米) (入院、外来) | 892 | 67 | 45.3 | ≥3 | 混合 (主に白人) | 5.8 (±7.3) | 20.5 | 3.8 | 5.0 (±2.2) | NA | NA | NVAF | NA |
Limitation
・INR目標やTTRに関して言及なし
・DOAC切り替えのタイミングは不明
ANN NEUROL 2020;87:677–687
7つの前向きコホート研究の統合解析計心房細動での脳梗塞例5413例の検討
患者背景:78歳・NIHSS初診時6点、抗凝固薬元々内服なし56.7%, 抗血小板薬元々内服 20.5%, 抗凝固薬元々内服 22.5%(DOAC 116例, VKA 865例, 詳細不明169例)
結果:脳梗塞再発・脳出血・死亡
元々経口抗凝固薬内服 vs 元々内服していない場合:8.9% vs 3.9% HR=1.6 p=0.005
経口抗凝固薬の変更 vs 変更なし:8.8% vs 8.2% HR=1.2 0.7-2.1 p=0.415
→この研究からは抗凝固薬を変更しても脳梗塞発症率に変化はなし