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フェニトイン PHT: phenytoin

フェニトイン PHT: phenytoin

商品名:アレビアチン、ヒダントール

■作用機序:Na受容体阻害

■代謝:肝臓 CYP2C9>2C19
・酵素誘導:3A4,2B6,2C8,2C9,2C19
・bioavailability:ほぼ100%
・半減期:6-36hr
血中濃度:10-20μg/mL TDM5日後gradeA
・中毒濃度:20μg/mL以上
*フェニトインは投与量と比べて指数関数的に血中濃度が上昇し、治療域と中毒域が近いため注意が必要(少しの増量で血中濃度が大幅に上昇する場合がある)
*低Alb血症では濃度上昇きたしやすいため注意が必要
*血中濃度が30μg/mLを超えるとparadoxicalに発作頻度が増加するとも報告されている点に注意

製剤:25mg,50mg, 100mg/錠、細粒
*配合錠(下記は12錠中の含有量であり1錠中ではない点に注意)
・ヒダントールD: PHT200mg/PB100mg
・ヒダントールE: PHT250mg/PB100mg
・ヒダントールF: PHT300mg/PB100mg
*注射薬は強アルカリ性であり配合変化もきたしやすいため扱いが難しい(筆者はフェニトインの注射薬は使用していない:後述のプロドラッグであるホスフェニトインを使用している)

■投与量
開始量:50-100mg/日
*増量に関してtitration rapidが可能であるが、中毒域が有効域と近いため注意しながら調節
*血中濃度10μg/ml前後では25mg/日幅で増減をするべき
維持量:200-400mg/日

投与回数:1日3回食後投与

■適応:部分発作(第2選択)
・小児欠神てんかん、若年ミオクロニーてんかんは増悪リスクあり投与しない

■副作用
1:用量依存的
・濃度>20μg/mL:眼振、構音障害、失調、めまい
・濃度>30μg/mL:複視、異常行動、心伝導障害

2:非依存的皮疹(多い:抗てんかん薬と皮疹に関してはこちらを参照)、多毛歯肉増殖(薬剤性歯肉増殖の代表的な原因)、骨粗しょう症、血球減少、肝機能障害、小脳萎縮(不可逆的:自験例もあります)
*筆者は耳学問でフェニトインの副作用は「食思不振」→「眼振」→「失調」→「意識障害」の順で出現すると教わりました。

■薬物相互作用:他のAEDと比較しても多い

*個人の見解:これらの副作用(一部不可逆的)と中毒域が近い点、薬剤相互作用が多い点など合わせて新規に処方することは個人的にはほぼありません(あえてフェニトインを選ばないといけない理由がないことが多い)。何十年も前からずっとフェニトインを内服している患者さんの場合、そのまま継続処方とすることはありますがそれでもやはり近年これだけ副作用の少ない抗てんかん薬が出現してきているためどこかで変更したいところです。

ホスフェニトイン Fosphenytoin

商品名:ホストイン (フェニトインのプロドラッグ)

■製剤:750mg/10mL静注

■投与量:てんかん重積第2段階
・初回投与量:22.5mg/kg
(処方例 体重50kgの場合:ホスフェニトイン1125mg(1.5A)+生理食塩水100mL 30分かけて点滴投与)
・維持投与量:7.5mg/kg
(処方例 体重50kgの場合:ホスフェニトイン375mg(0.5A)+生理食塩水100mL 30分かけて点滴投与)

*てんかん重積の第2段階として長らく使用されている薬剤で私もよく使用します。注意点は、救急病院に勤務していると時々あるのが血圧が低い患者さんや元々房室ブロックがある患者さんにホスフェニトインを投与して血圧がより低下してしまう場合や完全房室ブロックになってしまう場合を時折経験します。ホスフェニトインを投与するまえに循環動態をきちんと確認してから投与するようにしたいです(もしも不安定な場合は2nd lineではレベチラセタムの方が安全です)。
*また個人的にはホスフェニトインはカルバマゼピンやバルプロ酸の血中濃度を下げるため(薬剤相互作用)、元々これらの薬剤を内服している患者さんの場合はレベチラセタムを優先して使用するようにしています(あくまで個人的なプラクティスでそのような推奨がある訳ではありません)。
*てんかん重積の対応に関してのまとめはこちらをご参照ください。第2段階で使用する薬剤のまとめを下図に掲載しました。

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*てんかん重積の治療(静注)から発作抑制(内服)へ移行する際にホスフェニトインはフェニトインと簡単に等価換算することが出来ません(血中濃度の個人差が大きいこととAlb濃度の影響も受ける)。また上記の通りフェニトインの長期内服は副作用も大きいため新規に開始することは現在はほとんど個人的にはありません(結果てんかん重積でホスフェニトインを使用してその後の内服維持は結局レベチラセタムを使用する場合も多々あります)。その点レベチラセタムは点滴から内服へ投与量もそのままスムーズに移行できる利点はあります。

*第2段階の薬剤選択に関してはホスフェニトイン、レベチラセタム、バルプロ酸(日本には静注薬なし)の3剤を比較したRCTがあり(ESETT: N Engl J Med 2019;381:2103-13)、これの結果では発作頓挫に関して有意差を認めませんでした(下図)。