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2次性高血圧症

原因

成人で2次性高血圧は高血圧全体の5~10%を占めるとされています(AmFam Physician. 2010;82(12):1471-1478.)。このため、高血圧患者さんを全て本態性高血圧症と片付けるのではなく、一度は2次性高血圧症の評価を行うべきです。2次性高血圧症の原因は下記が挙げられます。

内分泌:原発性アルドステロン症・褐色細胞腫・クッシング症候群・先端肥大症・甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能亢進症・OSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)

■血管:腎動脈狭窄・大動脈縮窄症・大動脈炎

腎実質性

これらの原因は年齢によって大きく異なるため、年齢ごとに頻度が多い疾患を念頭において鑑別をすすめます。例えば、大動脈縮窄症は通常小児~青年期の原因で、高齢者では考えません。以下に年齢別の2次性高血圧症の原因をまとめます。

検査

実施するべき検査を下記にまとめます。もちろん全てを実施しないといけない訳ではないですが(原発性アルドステロン症は基本全例スクリーニング必要)、それぞれのスクリーニング検査のやり方を知っておくと便利です。

■甲状腺機能 TSH, FT4

甲状腺機能亢進症では収縮期血圧が上昇し、脈圧が開大します。甲状腺機能低下症でも拡張期血圧が上昇します。このため甲状腺機能低下症では、亢進症・低下症どちらでも高血圧を呈する場合があります。

■PAC(アルドステロン濃度:pg/mL) +PRA(血漿レニン活性:ng/ml/hr) 30分以上安静臥床状態で採血が望ましい

判定基準:ARR>200

PRAは「血漿レニン活性」なので注意です(「レニン濃度」ではありません)。ARR=PAC/PRA>200でスクリーニング陽性として、負荷試験に進む流れになります。原発性アルドステロン症は高血圧患者さんの中に多いとされており、高血圧患者さんは一度はどこかで精査するべきです。低K血症は呈さない場合も多く、2次性高血圧の原因として最も多いため、基本全例で確認します。(原発性アルドステロン症に関してはこちらをご参照ください)

■血漿メタネフリン測定
■随時尿中メタネフリン2分画(メタネフリン・ノルメタネフリン)

判定基準
・尿中メタネフリン+ノルメタネフリン≧1.0μg/mgCre (感度97.6%、特異度100%)
・尿中メタネフリン or 尿中ノルメタネフリンいずれか≧0.5μg/mgCre (感度100%、特異度100%)

*ここではスポット尿を紹介していますが、入院中など可能であれば蓄尿(塩酸蓄尿)が望ましいです。
血漿カテコラミンは不安定なので値に変動が大きいため、より安定した代謝物のメタネフリン・ノルメタネフリンを測定します。
*海外では血漿メタネフリン測定でのスクリーニングが可能ですが、日本では長らく保険適応外でしたが平成31年から保険収載となりました(コメントで御指摘頂き知りました。大変ありがとうございます。)

上記の基準は褐色細胞腫82例と偶発的副腎腺腫15例を区別するための研究(World J. Surg. 22, 684–688, 1998)からです。スポット尿のメタネフリン・ノルメタネフリンは比較的1日を通して安定した値であることがわかります(下図)。

■1mgデキサメタゾン抑制試験

判定基準:コルチゾール≧5μg/dL

前日の23時にデキサメタゾン(デカドロン®)1mg内服し、翌朝8時のコルチゾール値を測定。コルチゾール≧5μg/dLで陽性。

24時間蓄尿遊離コルチゾール測定もありますが、蓄尿が必要なため入院でないと難しいです。デキサメタゾン抑制試験は外来でも出来るため良いです。

■腎血流エコー検査

判定基準:PSV(peak systolic velocity)を指標とする 速度の基準は様々 感度85%,特異度92%(Am J Roentgenol 2007;188:798—811)

腎動脈狭窄のスクリーニングとしてまずは腎血流エコー検査を行い(通常のルーチン腹部エコー検査では分かりません)、それでも結果がはっきりしない場合はCTA検査、MRA検査などを検討します。