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呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線

フロー・ボリューム曲線

フロー・ボリューム曲線は横軸:容量(ボリューム:左へいくほど多い、右へいくほど少ない)、縦軸:流速(上が呼気で下が吸気)を表現した曲線です。フロー・ボリューム曲線はそもそもどういうものなのか?その成り立ちを解説していきます。

「どの要素(パラメーター)を決めればグラフを描くことが出来るのか?」を把握することがフロー・ボリューム曲線の理解に重要です。以下4つのパラメーターを決めれば描くことが出来ます(下図の色と対応)。
1:最大吸気量(黄色点) 肺活量(障害は拘束性障害と対応)
2:中枢気道(赤色線) 中枢の気道抵抗
3:末梢気道(青色線) 末梢の気道抵抗(障害は閉塞性障害と対応)
4:残気量(緑色点) 空気をどのくらい吐き切ることができるか?(障害は閉塞性障害と対応)

以下でそれぞれに関してみていきます。

1:最大吸気量

肺活量が少ない(十分に空気を吸いきれない)とグラフの最大吸気量(グラフでの黄色〇)部分は右にシフトします。これは拘束性換気障害で認めるパターンです。

2:中枢気道

中枢気道が狭窄すると、呼気である一定以上の流速を出せないため、中枢気道の流速が頭打ちになってしまいます。すると中枢気道を表現する赤グラフは下図のようになります。

3:末梢気道

例えば気管支喘息やCOPDなどの閉塞性障害の疾患で末梢気道抵抗が高いと十分な流速が出ないため、末梢気道を表現する青色グラフは下に凸の形になります。

4:残気量

例えば肺気腫で空気を十分に吐き切れない場合は残気量(RV: residual volume)が増加します。これは緑色〇で表現され、グラフ上は左にシフトします(左ほど容量が大きい)。

このように1~4の点・線を決めればフロー・ボリューム曲線を描くことが出来ます。逆にこのフロー・ボリューム曲線の状態から肺の状態1~4をそれぞれ推定することが出来るため非常に有用な検査です。

呼吸機能検査

各パラメーターのまとめ

FEV1(1秒量)とFEV1%(1秒率)

拘束性・閉塞性換気障害

実際にどこを見ればよいのか?

呼吸機能検査をオーダーすると、いろいろなパラメータが記載された結果が出てきて最初どこに注目すればよいのかわからないかもしれません。私が今まで務めた病院では下図のような表記のされ方が多かったです。たくさんのパラメーターの数字が出ていますが、まず重要なのは%VC(肺活量の%予想値)FEV1.0%(1秒率)です。それは下図赤色部分に書かれています。

この他V25などを活用する方法もありますが、Advancedな内容なのでここでは割愛させていただきます。

その他の特殊な検査

■呼気中NO測定(FeNO)

・好酸球がNOを産生することから、呼気中のNO濃度を測定することで好酸球が主体の病態(例えば気管支喘息)かどうかを判定する方法です。これはルーチンで検査できるものではなく、検査室にお願いする必要があります。

絶対的な基準値はありませんが(器械によっても違う)、おおまかにしたのようなイメージです。
・50ppb~:好酸球主体の病態
・25~50ppb:判断難しい・臨床的判断
・~25ppb:正常範囲内

■気道可逆性検査

・呼吸機能検査をSABA吸入前と吸入後20分で測定する。FEV1(1秒量)が12%かつ200mL以上で改善、つまり「可逆性あり」と判断する。

以上呼吸機能検査、フロー・ボリューム曲線の基本的な内容に関して簡単にまとめさせていただきました。

参考文献
・「2020 ポケット呼吸器診療」 著:倉原優先生

2021/2/16:管理人追記(パラメーター、1秒率、拘束性・閉塞性換気障害に関して)