病態
・解明されていないが,内リンパ水腫(Endolymphatic Hydrops:内耳の膜性迷路内にある内リンパ液の量が増加した状態)より発作的なめまい,蝸牛症状を呈することが推定されている.
・より具体的な仮説としては、内リンパ管の拡張に続発してライスナー膜(Reissner’s membrane)が微小破裂し,蝸牛有毛細胞や第8脳神経がカリウムが豊富な外リンパ液を繰り返し暴露することになり,症状を生じることが考えられている.
・内リンパ水腫はメニエール病患者の剖検例で認めるが,メニエール病ではない剖検例でも認めることがある.つまり内リンパ水腫を有していても症状を呈する場合も呈さない場合もあり,メニエール病において必要条件であるが十分条件ではない.
・造影MRI検査で内リンパ水腫の検出が可能である
臨床像:発作的な回転性めまい+変動性のある感音性難聴
・めまい持続時間:20分~12時間 *めまい総論に関してはこちらをご参照ください
・変動性のある低~中周波数感音性難聴(オージオグラムでの評価が必須:こちら)*変動性は鑑別上有用である
・眼振
①種類:前庭神経障害を反映した水平性眼振(または水平回旋混合性眼振)
②方向:急性期は刺激性により患側⇒その後は抑制性により健側に眼振の方向が変化することが多い(このため眼振の報告を正確にカルテに記載することがとても重要)
*眼振の総論に関してはこちらの記事をご参照ください。
| 分類 | 基準 |
| Definite MD | 1. 2回以上の自然発作性めまい(各20分〜12時間持続) |
| 2. 少なくとも1回はめまい発作の前、最中、または後に患耳に聴力検査で証明された変動性低〜中周波数感音難聴がある | |
| 3. 患耳に変動性の聴覚症状(難聴、耳鳴り、または耳の詰まり)がある | |
| 4. 他の疾患が検査により除外されている | |
| Probable MD | 1. 少なくとも2回のめまいまたは浮動性めまい(20分〜24時間持続) |
| 2. 患耳に変動性の聴覚症状(難聴、耳鳴り、または詰まり)がある | |
| 3. 他の疾患が検査により除外されている |
Key Action Statement (KAS)
| Statement Summary | Strength | Grade |
| MDの診断: 臨床医は、確実なMD(めまい20分~12時間、2回以上)または蓋然性のMD(めまいまたは浮動性めまい20分~24時間、2回以上)の基準を満たし、他の疾患で説明できない患者にMDの診断を下すべきである。 | 推奨 (Recommendation) | C |
| 前庭性片頭痛(VM)の評価: MDの評価を行う際、臨床医は患者がVMの診断基準を満たすかどうかを判断すべきである。 | 推奨 (Recommendation) | C |
| 聴力検査の実施: MDの診断を評価する際、臨床医は聴力図(オーディオグラム)を取得すべきである。 | 強い推奨 (Strong recommendation) | A |
| 画像検査の有用性: 聴力検査で非対称性感音難聴が確認されたMDの可能性がある患者には、内耳道(IAC)および後頭蓋窩のMRIを提供してもよい。 | 選択肢 (Option) | D |
| 前庭・電気生理学的検査: MDの診断を確立するために、臨床医はルーチンで前庭機能検査や電気生理学的検査(ECochGなど)をオーダーすべきではない。 | 反対の推奨 (Recommendation against) | B |
| 患者教育: 臨床医はMD患者に対し、自然経過、症状管理策、治療選択肢、および予後について教育すべきである。 | 推奨 (Recommendation) | C |
| 急性期めまい発作の管理: MD発作中のめまい管理のため、臨床医は前庭抑制薬を限定的に提供すべきである。 | 推奨 (Recommendation) | C |
| 症状軽減と予防: 症状の軽減または予防のために、臨床医はMD患者に食事およびライフスタイルの修正について教育すべきである。 | 推奨 (Recommendation) | C |
| 経口維持薬物療法: 症状の軽減またはMD発作の予防のための維持療法として、臨床医は利尿薬やベタヒスチンを提供してもよい。 | 選択肢 (Option) | B |
| 陽圧療法: 臨床医はMD患者に陽圧療法を処方すべきではない(例:Meniettデバイス)。 | 反対の推奨 (Recommendation against) | B |
| 鼓室内ステロイド療法(ITステロイド): 非侵襲的治療に反応しない活動性MD患者には、ITステロイドを提供してもよい。 | 選択肢 (Option) | C |
| 鼓室内ゲンタマイシン療法(ITゲンタマイシン): 非切除的治療に反応しない活動性MD患者には、ITゲンタマイシンを提供すべきである。 | 推奨 (Recommendation) | B |
| 外科的切除療法: より非確定的療法に失敗し、非有用聴力を持つ活動性MD患者には、迷路切除術(Labyrinthectomy)を提供してもよい。 | 推奨 (Recommendation) | C |
| 慢性平衡障害に対する前庭リハビリテーション: 慢性的な平衡障害を持つMD患者には、前庭リハビリテーション/理学療法を提供すべきである。 | 推奨 (Recommendation) | A |
| 急性めまい発作に対する前庭リハビリテーション: 臨床医はMD患者の急性めまい発作の管理に前庭リハビリテーションを推奨すべきではない。 | 反対の推奨 (Recommendation against) | B |
| 補聴器と聴覚支援技術のカウンセリング: MDによる難聴を持つ患者に対しては、増幅器やその他の聴覚支援技術の使用についてカウンセリングすべきである。 | 推奨 (Recommendation) | C |
| 患者アウトカムの文書化: 臨床医は治療後、めまい、耳鳴り、難聴の寛解、改善、または悪化、およびQOLの変化を文書化すべきである。 | 推奨 (Recommendation) | C |
参考文献
Clinical Practice Guideline: Me ́ nie` re’s Disease OtolaryngologyHead and Neck Surgery 2020, Vol. 162(2S) S1–S55