解剖
Penfieldのホムンクルスは脳の体部位局在を考える上で欠かせない知識になります。体部位局在の面積を体積に置き換えて人形にしたものが下図になります。見ていただくと分かる通り手が非常に大きな体積を占めていることが分かります。そして、このことを反映してどこかの部位単独の脳血管障害では上肢単独が最も多いです。脳血管障害というと半身が障害されるイメージがあるかもしれませんが、「上肢だけが障害される場合も多い」ことを認識しておくことがまずは知識として重要です(逆に下肢だけが障害される場合は少ない点に注意)。


そして、特に「手」の領域(hand area)は更に細かくMRI上で“precentral knob area”という逆Ω型でとらえることができます(Brain 1997; 120: 141)。

同部位が脳血管障害で障害されると上肢単独麻痺を呈します(下図自験例画像)。このprecentral knob areaの脳梗塞は非常によく経験します。

文献
Cortical Hand Knob Stroke: Report of 25 Cases. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018 Jul;27(7):1949-1955. doi: 10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2018.02.045. Epub 2018 Mar 19. PMID: 29567118.
25例のprecentral knob area梗塞のまとめ
病型(TOAST分類):大血管アテローム硬化 48%, 原因不明 36%(8/9は原因が複数あり1つに特定できなかった症例), その他原因 16%, SVO 0%
Artery to artery機序:36%(9/25)は同側ICAに50%以上の狭窄所見を認める 48%(12/25)は<50%の狭窄*計84%にICAの動脈硬化性変化を認めている
⇒心臓由来の塞栓症よりもA to Aの方が表在性の小さい皮質梗塞を生じやすい
isolated finger palsy
更に細かく指だけが障害される脳血管障害”isolated finger palsy”に関しても報告がありまとめます。指だけの障害だと一見末梢神経障害と間違えてしまうような分布なので注意が必要です。体部位局在はホムンクルスを見ていただくと分かる通り脳の「外側」は「手指橈側」、脳の「内側」は「手指尺側」と対応関係にあります。前者の脳外側(手指橈側に対応)は中大脳動脈の末端に位置し塞栓機序が多く、後者の脳内側(手指尺側に対応)は前大脳動脈と中大脳動脈の”watershed area”(分水嶺領域)に該当し血行力学的な機序が多いとされています(Jong S. Kim NEUROLOGY 2001;56:1677–1682)。

例:示指のみの障害(Neurology 2002;58:985-986.)

例:示指のみの障害(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2004;75:507-508.)

例:親指のみの障害(Lancet 2004; 363: 1364)

isolated shoulder palsy
fingerがあればshoulderもという感じかもしれませんが、より稀ではありますが近位筋のみが障害される”isolated shoulder palsy”に関してまとめた報告もあります。鑑別はC5神経根障害ですが、発症様式が脳血管障害は「突然」発症である点と、C5では上腕二頭筋の筋力も低下しますが、”isolated shoulder palsy”のほとんどの症例では上腕二頭筋の筋力が保たれるという点が鑑別点として挙げられます。
下図のまとめと画像はJournal of Stroke and Cerebrovascular Diseases, Vol. 22, No. 8 (November), 2013: pp e687-e690より引用。


下図は65歳男性、肩外転のみMMT3/5でそれ以外は正常(千葉大学の先生方からのご報告:Neurology 61: 1457, 2003.)。precentral knobより内側に病変を認める。

以上上肢単独麻痺を呈する脳血管障害に関してまとめました。調べていると日本からの症例委報告が多くあることに気が付きました。
参考文献:臨床神経 2010;50:572-577