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高尿酸血症 hyperuricemia

1:尿酸の生理学

ヌクレオチドの産生経路は新規に作る経路(de novo経路)とプリン体を再利用する経路(サルベージ経路)の2種類があります。これらが代謝されると、キサンチンがキサンチンオキシダーゼにより最終的に尿酸となります。尿酸の産生は肝臓で行われており、1日約700mg/日産生されています。

このうち2/3は腎臓から排泄され、1/3は腸管で腸内細菌による分解されることで排泄されます(下図Adv Chronic Kidney Dis 2012;19:358より参照)。

2:高尿酸血症

■定義:7.0mg/dL以上

■原因(2次性)

薬物:利尿薬(サイアザイド利尿薬、ループ利尿薬)、アスピリン、カルシニューリン阻害薬
基礎疾患:リンパ腫、骨髄腫、腫瘍崩壊症候群、乾癬(細胞のターンオーバーが亢進しているもの)

■合併症

1:結晶によるもの・痛風・腎臓・尿管結石
2:その他・高血圧症・腎機能障害(CKDの進行)・心血管疾患

3:高尿酸血症の薬剤治療適応

■痛風合併:薬剤治療適応あり 目標:UA < 6.0mg/dL

痛風発作の既往がある場合はUA<6.0mg/dL以下になることを目標に薬剤介入をします。この時に急性期はNSAIDs、コルヒチンを併用することが重要です(3~6か月併用するとされています)。元々尿酸降下薬を内服しているときに痛風発作が起こってしまった場合も、尿酸降下薬は中止せずに継続します。

尿酸降下薬による痛風発作の頻度が減少する効果は一般的に1年程度経たないとでてこないため、なかなか効果を治療開始早期には実感しづらいことが患者さんのコンプライアンスを上げるうえで難しいところです。

■無症候性:薬剤治療適応なし

基本的には無症候性(つまり痛風の既往がない)高尿酸血症では生活指導を行います。

無症候性高尿酸血症の薬剤治療の適応となるかどうかの重要な点として、高尿酸血症による結晶以外の合併症(特にCKDの進行)を薬剤介入によって低下させることができるのか?というテーマがあります。これに関して大規模な前向き研究はなく、現時点では確固たるEvidenceがない状況です。このためACR/RULARのガイドラインでは無症候性高尿酸血症の治療適応に関しては言及はありません。

日本のガイドライン(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版)では無症候性高尿酸血症でも一部薬剤治療適応としています。しかし、個人的にはCKD予防効果が確立していない点、アロプリノールなどの薬剤の副作用が多い点、ポリファーマシーの懸念などから、無症候性の場合はまずは生活指導でよいのではないかと思います。

4:高尿酸血症治療薬

■作用機序

先ほどの尿酸代謝の中での高尿酸血症治療薬の位置付けは下図の通りです。
1:キサンチンオキシダーゼ阻害薬 尿酸産生を阻害する
2:尿酸排泄薬

の2つが代表的な薬剤です(基本的にはキサンチンオキシダーゼ阻害薬が第1選択薬です)。

■キサンチンオキシダーゼ阻害薬

治療の第一選択はキサンチンオキシダーゼ阻害薬です。尿酸排泄薬は尿管結石のリスクがあることと、そもそも排泄が抑制されている状況下で効果があるため適応が限られるためです。

アロプリノール 商品名:アロシトール®、ザイロリック®

キサンチンオキシダーゼ阻害薬の代表薬で基本的には第1選択です。腎機能障害で投与量の調節が必要なことと、なんといっても薬疹の副作用(重症薬疹)が問題です。

開始:50mg 1T1x(腎機能低下では50mgから、正常では50~100mgから)
最大投与量:200~300mg/日 1日2~3回に分けて投与
*腎機能障害による投与量調整必要
副作用:皮疹(少量から開始することが大切)
禁忌:CCr<30の場合、アザチオプリン併用

フェブキソスタット 商品名:フェブリク®

アロプリノールが使用できない状況(腎機能障害)や、1日1回投与のコンプライアンスの良さ、副作用の少なさからアロプリノールの次に選択する薬剤として使用します。しかし、後述の心血管合併症の問題があるため、現時点では使用にやや慎重になるべきと思います。

投与回数:1日1回投与
開始量:10mg/日
維持量:40mg/日
最大投与量:60mg/日
副作用:肝機能障害 *皮疹は少ない
併用禁忌:メルカプトプリン、アザチオプリン

*フェブキソスタットの注意点が心血管合併症が増える可能性に関してです。N Engl J Med 2018;378:1200にてアロプリノールと比べて全死亡、心血管死亡が増加する悔過でした。しかし、このstudyでは脱落率が50%程度と非常に高くこの結果をそのままとらえて良いかどうか判断が難しいです。日本では2019年使用制限を行わない方針となりましたが、臨床医は気にしておいた方が良いと思います。

■尿酸排泄薬機序

尿細管からの尿酸再吸収を阻害し排泄を促す薬剤で、もちろん尿路結石が既往にある場合は禁忌になります。尿路結石のリスクが上がるため、積極的に使用する場面はかなり限定的です。CCr<50ml/hrの場合は単独での使用は推奨されていません。

・ベンズブロマロン 商品名:ユリノーム®

(処方例)25mg 1T1x副作用:肝機能障害

・プロベネシド 商品名:ベネシッド®

(処方例)500mg 1T1x