Head tremor in essential tremor: “Yes-yes”, “no-no”, or “round and round”? Parkinsonism and Related Disorders 2016;22: 98-101.
頭部振戦を合併した本態性振戦51例(36.2% 51/141例)をビデオ解析:水平性 no-no、垂直性 yes-yes、混合性mixedに分類(ここでは少しでも他の方向が混じれば混合性とかなり厳密に定義している点に注意)
結果内訳:混合型 54.9%, no-no 27.5%, yes-yes 17.6%
特徴:no-noと比べてyes-yes/mixedは罹病期間が長く年齢が高い
重症度:混合型は常に頭部が揺れており、全体的な振戦の重症度スコアも高い
⇒初期段階では頻度が低く単一方向(特にno-no)から始まり、病気が進行してくると頻度が増えて方向が混合型へ変化してく
患者背景
年齢(平均): 74.5 ± 10.9歳 性別: 女性が35名(68.6%)
振戦の罹患期間(平均): 38.3 ± 19.3年
家族歴: 第一度近親者ET患者がいる割合は33.3%(17名)
服薬状況: 振戦に対する治療薬を処方されている患者は68.6%(35名)
声の振戦(音声振戦): 診察時に声の震えが確認された患者は37.3%(19名)
ジストニアとの鑑別においては、単純に「横振りだからジストニアである」と結論づけるのではなく、振戦の罹患期間などの要素も考慮に入れて判断する必要がある
薬剤性振戦
Drug-induced tremors Lancet Neurol 2005; 4: 866–76
診断
- 他の医学的原因の除外(甲状腺機能亢進症や低血糖など)。
- 投薬開始との時間的関連性(薬を飲み始めてから震えが出たか)。
- 用量反応関係(薬を増やすと悪化し、減らすと改善するか)。
- 進行性がないこと(パーキンソン病や本態性振戦とは異なり、時間とともに悪化しない)
リスク因子:①高齢(最も重要なリスク因子)、②薬剤(ポリファーマシー、相互作用、高用量と血中濃度が高い、長期服用)、③基礎疾患(腎不全、肝不全、中枢神経の構造的病変、代謝障害、AIDS)
治療
原因
| 分類 | action or postural tremor | intention tremor | resting tremor |
|---|---|---|---|
| 抗不整脈薬 | アミオダロン、メキシレチン、プロカインアミド | – | – |
| 抗菌薬・抗ウイルス薬・抗真菌薬 | – | ビダラビン | コトリモキサゾール(ST合剤)、アムホテリシンB |
| 抗うつ薬・気分安定薬 | アミトリプチリン、リチウム、SSRI | リチウム | SSRI、リチウム |
| 抗てんかん薬 | バルプロ酸 | – | バルプロ酸 |
| 気管支拡張薬 | サルブタモール、サルメテロール | サルブタモール、サルメテロール | – |
| 化学療法薬(抗がん剤など) | タモキシフェン、シタラビン、イホスファミド | シタラビン、イホスファミド | サリドマイド |
| 乱用薬物・嗜好品 | コカイン、エタノール、MDMA、ニコチン | エタノール | コカイン、エタノール、MDMA、MPTP |
| 胃腸薬 | メトクロプラミド、シメチジン | – | メトクロプラミド |
| ホルモン剤 | チロキシン、カルシトニン、メドロキシプロゲステロン | エピネフリン | メドロキシプロゲステロン |
| 免疫抑制剤 | タクロリムス、シクロスポリン、インターフェロンα | タクロリムス、シクロスポリン | – |
| メチルキサンチン類 | テオフィリン、カフェイン | – | – |
| 神経遮断薬・ドパミン枯渇薬 | ハロペリドール、チオリダジン、シンナリジン、レセルピン、テトラベナジン | – | ハロペリドール、チオリダジン、シンナリジン、レセルピン、テトラベナジン |
機能性運動異常症 Functional (psychogenic) movement disorders
“Functional (psychogenic) movement disorders: merging mind and brain” Lancet Neurol 2012; 11: 250–60.
運動の種類によらない特徴(診断的ではないが):突然の発症、症状の急速な進行(通常の疾患とは異なる)、重症度の著しい変動(完全な寛解や突然の再発)、時間経過に伴う症状の変化
内訳
1:機能性振戦(最多50%以上を占める)
2:ジストニア(2番目に多い)
3:ミオクローヌス(約20%) EEG-EMG backaveragingにより不随意運動の直前に随意運動で認める準備電位を認めるかどうか?をチェックする
4:歩行障害(6%)バランスが悪いが転倒しない(walking on ice)、麻痺側の足裏を床につけたまま外旋させて引きずる歩行様式
機能性振戦 functional tremor
Journal of the Neurological Sciences 435 (2022) 120208
機能性運動異常症 functional movement disordersの中で最も多いのが機能性振戦
除外診断ではなく陽性徴候からの診断が重要であることが強調されている
突然発症のことがしばしばある
静止時、姿勢時、動作時いずれでも生じる(器質的な病態では非典型的である)
陽性徴候
・周波数の変動 frequency variability:問診・診察中に周波数が変化する 静止時、姿勢時、動作時いずれも出現するが、周波数が変化する。
・注意転換性 distractibility:Serial 7’sなどの認知課題や運動課題をすることで振戦が減弱(または消失)する。
・同調性 entrainment :震えがある部位と別の手足で反復動作(タッピングなど)を指示する。メトロノームなどで一定のリズムに合わせて行う。振戦が消失するかその動きの周波数に同調する。
・同時収縮 tonic coactivation:振戦が再開する直前に、拮抗する筋肉同士の同時収縮が確認できる(筋電図が必要)。
・ballistic suppression:対側の手足で激しい運動をすると短時間抑制がかかる
その他 optional features
・モグラたたきサイン”Whack-a-mole” sign:検者が震えている部位を手で押さえて無理に止めようとすると、身体の別の部位に振戦が広がってしまう現象。
Distinguishing psychogenic and essential tremor. J Neurol Sci 2007; 263: 94–99.
The symptom of functional weakness: a controlled study of 107 patients. Brain 2010; 133: 1537–51.
機能性運動障害の包括的なまとめ
Psychogenic movement disorders: frequency, clinical profile, and characteristics. J Neurol Neurosurg Psychiatry 1995; 59: 406–12.
運動異常症クリニック受診の842例の検討
心因性は3.3%(n=28) *documented, clinically established Fahn, Williamsの分類
・記録により裏付けられた(Documented): 心理療法、暗示、プラセボによって持続的に緩和される、あるいは患者が観察されていないと思われる時に不随意運動がないことが目撃されたケース
・臨床的に確立された(Clinically established): 古典的記述と矛盾する運動があり、かつ神経学的診察における他の心因性徴候、複数の身体症状、または明らかな精神的障害を伴うケース
性別女性61%, 年齢50歳平均(17-83歳)、受診時平均罹病期間は33か月
原因:振戦50%(最多)、ジストニア18%、ミオクローヌス14%, パーキンソニズム7%
臨床的特徴
①distractibility(注意をそらせる)86%に認める 別の動作(対側の手でタッピングなど)をすると異常運動が著しく改善または消失する(特に振戦で有用)
②突然発症 54%が突然発症と報告
③同調と疲労:反対の手を動かすとそれにリズムが引きずられる同調があり、疲労はパーキンソニズムや本態性振戦では認めない(疲れて一時停止する)
④刺激過敏性:音、光、他動的な動きなどで症状が誘発、悪化する
誘因となる明確な出来事(仕事中のけがなど) 61%、疾病利得 64%
精神疾患既往:50%にあり 最多はうつ病
身体診察 別の心因性Sign 71% 異常運動だけではなく、医学的に説明のつかない別の心因性Signあり Give-way weaknessが最も多い 不自然な方向、Hoover陽性、感覚消失
器質的疾患の合併:25%が心因性に器質的な運動異常症を合併していた