過去に勤務した病院では救急外来で「なんとなく単純CT」というオーダーが非常に多かったです。中途半端な診療によって診断・マネージメントが定まりきらないことを避けたいです。全国的にこの問題は根深いのではないかと感じます。
結論:単純CTの積極的適応は尿管結石のみ
単純CTが参考になるが、結局造影CTが追加で必要となる疾患
・虫垂炎は腹腔内脂肪が十分ある場合は単純CTで十分診断できるが、膿瘍形成などの評価は単純では不十分
・消化管穿孔によるfree airは単純CTで判断できるが、その原因は評価できない
・消化管閉塞はわかるが、絞扼性(血流障害の有無)は評価できない
単純では絶対に診断できない疾患
・動脈解離(大動脈,腹腔動脈,上腸間膜動脈など),腎梗塞,胆管炎、胆嚢炎(エコーが優先されるが)
文献
“Diagnostic Accuracy of Unenhanced Computed Tomography for Evaluation of Acute Abdominal Pain in the Emergency Department” JAMA Surg. 2023;158(7):e231112.
・ERでの急性腹痛での単純CT検査の精度を検討した研究
・201人の造影CTを受けた患者において単純CTと読影を比較
・結果:診断精度は単純CTで約30%低下 偽陰性(見逃し)19%, 偽陽性14%
・偽陰性の具体例:血管解離、腹腔内出血、感染症、腫瘍など
・まとめ:造影剤使用を控えることは診断精度の低下につながる⇒多くの場合において造影剤を控えることで見逃しが投与するリスクよりも上回る可能性がある
なぜ医師は造影CTを避けたがるのか?
造影CTの手間(ルート確保)や合併症(腎機能障害やアレルギー反応)を懸念する、または「とりあえず単純CT」という思考のない安直な検査ファーストな診療スタイルの結果と思います。
前者の安全性の懸念は特にAKIに関してですが、きちんとリスクがどのくらいなのか?を科学的データから認識することが重要でありこちらの記事をご参照ください。ここは結論から申し上げると「CA-AKIのリスクを過度に恐れすぎるあまり、造影CTを避けて正しい診断ができないことは害になりうる」というものです。
また単純CT検査での診断精度の低下は上述の通り明確に証明されています。
これらの事実を充分認識しないと、適切に診断できないHarmが造影CT検査の副作用を上回る可能性が極めて高いです。
私は結構この「なんとなく単純CT」がかなり嫌いで、前に勤めていた病院で自分がERをしているときに研修医の先生がそれをするとかなりうるさく指摘していました(今はERをしていないのであまり指摘する機会が乏しくなりましたが)。ただ、逆に「造影CTを安易にとるな」と指導する上級医が一定数いることがコンセンサス形成の上で難しいところです。ここは教育と啓蒙が重要なのだと思います。
診断したいのか、診断したくないのかよくわからない雰囲気診療ではなく、きちんとSolidな根拠をもって診療をすすめたいです。