HSV-2はウイルス性髄膜炎の3大原因の1つ(Enteroウイルス,帯状疱疹ウイルス,HSV-2)で日常臨床でもしばしば遭遇します(髄液Multiplex PCRのFilmarray®(こちら)にも含まれています)。HSV-1は脳炎,HSV-2は髄膜炎を中枢神経病変として呈することが多いです。HSV-2初感染や再燃時に髄膜炎を呈することがあり,臨床像をまとめます。
臨床像
“Herpes Simplex Virus 2 Meningitis in Adults: A Prospective, Nationwide, Population-Based Cohort Study.” Clin Infect Dis. 2022 Sep 14;75(5):753-760. PMID: 34979025.
→最も大規模なコホートでありこちらを参考にします
成人(≧18歳)の205例(191人)検討
・年齢 35歳(IQR 27-49歳),女性 76%
・背景:性器ヘルペス 47%,過去のウイルス性髄膜炎 31%,免疫抑制 9%
・臨床像:上気道症状 13%, 消化器症状 9%, 頭痛 95%, 項部硬直 54%, 嘔気/嘔吐 73%, 羞明 76%, 性器粘膜病変 8%, 発熱 74%, 体温 37.8℃(IQR 37.1-38.4),GCS 15
・採血検査:CRP 0.3mg/dL(IQR 1-6)
・髄液検査:細胞数 360/μL(IQR 155-670), 単核球 97%(IQR 91-99), 蛋白110 mg/dL(IQR 80-150), 糖(髄液/血液) 0.52(0.45-0.59)
・頭部画像検査:実施 44%
・治療内容:アシクロビルまたはバラシクロビル 96%, IV→PO 74%, IVアシクロビル単独 10%, バラシクロビル単独 16%
・治療期間:10日(IQR 7-14)
・細菌性髄膜炎カバー 55%, デキサメタゾン(細菌性髄膜炎) 46%
・予後と相関する因子(11%/6か月予後不良):指摘なし(性別,年齢,免疫抑制,髄液細胞数)
管理人のひとこと:「若年女性のウイルス性髄膜炎で意外と性器病変は髄膜炎時には認めることが稀」という臨床像と思いました。また自験例でも髄液糖/血糖=0.45の症例が最近あり、中央値も0.52ということでやや糖も低値になりやすいという点も気になるところかと思います。
*参考:HSVとVZVの中枢神経障害の臨床像まとめ ”Herpes simplex and varicella zoster CNS infections: clinical presentations, treatments and outcomes.” Infection. 2016 Jun;44(3):337-45. PMID: 26680781.
| HSV/VZV 中枢神経障害の臨床像 | HSV | VZV | |||
| 髄膜炎 N=60 | 脳炎 N=20 | 髄膜炎 N=13 | 脳炎 N=5 | ||
| 臨床像 | 女性 | 66.7% | 50% | 46.2% | 40% |
| 年齢 | 36 | 55.5 | 42 | 62 | |
| >60歳 | 1.7% | 35% | 15.4% | 60% | |
| 意識障害 | 0% | 100% | 0% | 100% | |
| Seizure | 0% | 20% | 0% | 40% | |
| 頭痛 | 100% | 65% | 100% | 40% | |
| 項部硬直 | 75.9% | 20% | 36.4% | 0% | |
| 嘔気 | 74.6% | 50% | 41.7% | 0% | |
| 羞明 | 50% | 15% | 46.2% | 0% | |
| 発熱 | 53.3% | 40% | 50% | 20% | |
| 皮疹 | 1.7% | 0% | 84.6% | 80% | |
| 髄液 | 細胞数(/μL) | 325 | 265 | 150 | 68 |
| リンパ球 | 90% | 82% | 86% | 86% | |
| 蛋白(mg/dL) | 99.5 | 82 | 81 | 79 | |
| 糖(mg/dL) | 52 | 55.5 | 73 | 62.2 | |
| 画像 | MRI異常 | 1.9% | 70% | 25% | 50% |
治療
・現状前向き研究はありません
“The role of antiviral therapy in immunocompromised patients with herpes simplex virus meningitis.” Clin Infect Dis. 2015 Jan 15;60(2):237-42. PMID: 25273082.
背景:HSV脳炎に対してのアシクロビルは有用性が確立しているが,HSV髄膜炎に対しての抗ウイルス薬の効果は確立していない(ガイドライン上も).このことを踏まえての後ろ向き研究.
・42例のHSV髄膜炎症例の後ろ向き検討(HSV-1, 2いずれも含む)
・治療:抗ウイルス薬なし 14.3%(n=6), 経口アシクロビル 26.2%(n=11), 静注+経口 52.4%(n=22), 静注のみ 7.1%(n=3)
・免疫抑制者(n=15 HIV 9, AIDS 1, DM 3, Steroid 2):3例は抗ウイルス薬投与なしで全例後遺症あり(2例は慢性頭痛,1例は手のしびれ),残りの12例は2例で治療も後遺症あり(手しびれ1例,左上腕疼痛1例)
→アシクロビル投与により有意に神経学的予後改善
・免疫正常者:全例神経学的後遺症ないため有意差なし
まとめ(上記論文からの推奨)
①免疫抑制者:抗ウイルス薬投与推奨(7~10日間)
②免疫正常者:抗ウイルス薬投与による利益は確立していない
バラシクロビル長期内服による髄膜炎予防に関する臨床研究
“Long-term Valacyclovir Suppressive Treatment After Herpes Simplex Virus Type 2 Meningitis: A Double-Blind, Randomized Controlled Trial” Clinical Infectious Diseases 2012;54(9):1304–13
・まとめ:HSV-2髄膜炎の急性期治療を終えた101名の患者を対象に、バラシクロビル(0.5g 1日2回)を1年間投与する群と、プラセボを投与する群に分けたdouble-blinded RCT, 2年間追跡調査
・患者背景:101名、女性76%, 中央値38歳、髄液中PCR陽性 86%, 49%髄膜炎既往、46%性器ヘルペス既往 *免疫不全者は含まれていない
・結果
①髄膜炎再発予防効果は有意差なし
②投与終了後2年目バラシクロビル投与群は非投与群よりも再発リスクが有意に上昇 HR3.29⇒リバウンド現象の可能性
③髄膜炎以外の粘膜病変は有意に再発を抑える⇒中枢神経では投与量が十分ではなかった可能性がある
| 評価項目 | VCV群 | Placebo群 | 有意差(P値) |
|---|---|---|---|
| 1年目:髄膜炎の再発率(服用期間中) | 29% (14/50人) | 16% (8/51人) | 0.12 (有意差なし) |
| 2年目:髄膜炎の再発率(服用終了後) | 24% (12/50人) | 8% (4/51人) | 0.03 (有意差あり) |
| 1年目:性器ヘルペスの再発なし | 60% (30/50人) | 47% (24/51人) | 0.01 (有意差あり) |
| 2年目:性器ヘルペスの再発なし | 40% (20/50人) | 39% (20/51人) | 0.99 (有意差なし) |
副作用:30% vs 17% 有意差なし 発疹が最も多い