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フィフティ・ピープル 著:チョン・セラン

最近読んだおすすめ小説の紹介です。韓国のとある大病院の周囲で生活する人々の日常にスポットを当てた物語で、登場人物50人(正確にはもう少し多いのですが)それぞれの目線から物語が進んでいく構成になっています。

通常小説はある主人公の人生や時間軸を主体に進むことが多いですが、この作品では主人公を固定せずに様々な人の日常や人生を追いかけていきます。その過程でいろんな人の人生が交叉していき新しい発見や驚きが生まれます。何気ない日常に様々な小さな発見がある点と「みんなそれぞれ様々な苦悩を抱えながら生きている」という人の裏側に触れることで、少し優しい気分になることが出来る点が本書の素敵なところだと思います。

読んでいる途中で「あっさっき出てきた〇〇さんだ」と気が付くことがあり作品の構造上非常に面白い仕掛けになっています。こういった作品は個人的には今まで読んだことはなく画期的で面白かったです。

大病院を中心に話がすすむので登場人物に病院で勤務している人の話も多く、医療従事者としてとても楽しめました。医療に関しての記述もかなり正確で、またレジデントの生活や大学病院での待遇面への不満なども「日本と似ているなー」と親近感を持って読むことができました。また私は今まであまり韓国の作品を読んだことが無かったのですが、日本の若者が抱えている不安感や閉塞感と非常に近い空気感を感じました。

唯一韓国の方々の名前が私にはまだなじみが薄いので、あれっこの名前は誰のことだっけ?となることが多かったですが、画期的な構想で非常に面白い小説でしたのでおすすめです。下にAmazonのリンクを掲載しておりますのでもしよろしければご参照ください。