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脳血管障害性パーキンソニズム Vascular parkinsonism

最近高齢者の歩行障害でよく悩むのが「脳血管障害性パーキンソニズムとこの症例は断定してよいのか?」というケースです。臨床的には疑いますが、やはり現時点で明確なbiomarkerはないですし、虚血病変自体は無症候性にある場合もあるため臨床像の合致と他疾患の除外が重要でまだまだclinicalな判断にゆだねられているところが大きいと思います。

臨床像

元々は1929年にCritchleyが”arteriosclerotic parkinsonism”と報告したこと(Brain 52 : 23―83, 1929.)が最初のようで、その後”vascular parkinsonism”や”lower-body parkinsonism”といった名前がつけられるようになってきました。パーキンソン病とVPの鑑別は難しく、過去の報告から脳血管障害性パーキンソニズムは進行が早い・両下肢の左右対称性の障害・歩行障害・歩幅が短くなる・姿勢障害(直立姿勢)・転倒が多い・振戦を認めない・levodopa反応性が不良という点が臨床上の特徴として挙げられています。その他仮性球麻痺・認知症・腱反射亢進・錐体路徴候などを随伴することも脳血管障害の影響で多くあります。

個人的にはやはり「高齢者の歩行障害」で受診となり上肢は全然問題ないのだけれど、歩くのが全然上手くいかず転倒してしまうなどの症例で必ず鑑別にあがります。またパーキンソニズムが上肢と下肢で解離がある場合も疑います。

画像上基底核や深部白質に陳旧性の虚血病変を認めても実際にはparkinsonismを呈さない高齢者は多くおり、またパーキンソン病の患者さんも高齢であると無症候性の虚血病変を有する場合が多いことが難しい点です。つまり画像検査所見だけをもって診断することはもちろんできないので臨床像をよく把握する必要があります。

123I-FP-CIT SPECT検査

PDとの鑑別点としてはVPでDAT正常は32.5%(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2013; 84 :122 – 129.)という点が挙げられ、DATscan正常例もあることがポイントと思います。

*脳血管障害性パーキンソニズムの厳密な診断基準はまだないですが、「典型的なlower-body parkinsonismの臨床像(上記)」+「虚血病変」++「他のパーキンソニズムをきたす疾患の否定」+「L-DOPA反応性乏しい」であれば脳血管性パーキンソン症候群と診断して良いかと個人的には考えています。特に「DAT scan 陰性」の場合はPDとの鑑別に有用です。典型例はよいのですが、やはりheterogeneousなので臨床診断に悩む場合も多々あります。

治療

・確立した治療方法なし
・L-DOPA製剤の試験投与:明確な用量投与期間の基準はなし→漫然と長期投与になることは避けるべき
・脳血管障害の予防のための血圧管理などの内科的管理がとても重要

これから調べた内容を追記していきます。

参考文献
・日内会誌 104:1585~1590,2015