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Restless legs syndrome: RLS レストレスレッグズ症候群(下肢静止不能症候群)

これはよく指摘されている点ですが”legs”の発音は正しくは「レッグズ」で「レッグス」ではありません(「ズ」と濁ります)。日本ではいろいろな病名(「むずむず脚症候群」など)によってやや混乱をきたしています。また更に正確には「下肢には限局しない」ためそもそも”legs”という表現がよくないため報告者の”Willis-Ekbom disease”とも呼ばれることもありますが、更にややこしくなりRLS/WEDと併記される場合もあります。また本疾患はドパミン作動薬が効果があるという点で製薬会社のマーケティング介入が大きいことから色々とややこしさを生んだ疾患でもあります。病態はまだ解明されていませんが、確かに独立した疾患概念として確立しており、まだまだ不勉強で教科書的な内容しかないですが簡単にまとめます。

臨床像

基本的には下肢に多いですが上肢に動かしたいという欲求を生じることもあり、重度になると体幹や臀部に認めることもあるとされます(顔面はまれとされます)。この点で厳密には下肢ではないという点に注意です。

診断基準

1:脚を動かしたいという強い欲求+深いな異常感覚
2:安静による増悪(臥床や坐位)
3:動かすことによる改善 *アカシジアとの鑑別点として重要
4:日中より夕方・夜間に増悪する(日内変動)

補助
1:家族歴
2:ドパミン作動薬の効果
3:PSGでのPLMS所見

参考:Health. Sleep Med 4 : 101-119, 2003

・特発性
・2次性:鉄欠乏、貧血、腎不全、妊娠、糖尿病、パーキンソン病、ニューロパチー、ミエロパチー、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、薬剤(ドパミン遮断薬、メトクロプラミド、抗うつ薬など)

検査

確定診断できるバイオマーカーが存在する訳はないし、あくまで症状basedなので確定的な診断がつねに難しいですが以下の検査が参考所見として指標となります。基本的に診断は臨床診断です。

PSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)PLMS(periodic limb movements during sleep:睡眠時周期性下肢運動)所見を伴う場合が多い(70~90%)とされています。ただこれを認めるだけで確定診断になる訳でも認めないからといって除外診断になるわけもない点に注意です。

・採血検査:これは診断ではなく2次性精査のため貧血、鉄動態、腎機能などを確認します。

治療

0:非薬物治療

・原因疾患の治療/原因薬物を中止
・睡眠環境の改善
・嗜好品への介入:アルコール、カフェイン、ニコチンを避ける
・運動などの生活介入

1:薬物治療

現時点で病態修飾薬(disease-mofifying therapy)は存在せず、対症療法しか存在しないのが現状です。以下にまとめます。

鉄剤:中枢神経での鉄・フェリチン低下が機序として考えられている
→低フェリチン血症(Ferritin<50 ng/mL)では鉄補充

ドパミンアゴニスト:複数の臨床試験で効果が認められている
内服のタイミングが重要(症状が出現する1~3時間前などに内服するため、「夕食後」といった漠然とした内服のタイミングではなく、具体的な時間を指定する必要がある)
副作用:ドパミンアゴニストによる治療合併症(augmentation, tolerance, early morning rebound)を認める場合がある
(例)プラミペキソール0.125~0.75mg *Tmax:2hr, T 1/2: 8~12hr *日本で保険適用あり
*パーキンソン病で使用する量よりは少量である点に注意(最も少ない量から開始する)

・クロナゼパム 0.5~2mg

・ガバペンチン

・オピオイド

参考文献
・標準的神経治療:Restless legs症候群