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PCB variant (pharyngeal-cervical-brachial variant of GBS):咽頭頸部上腕型GBS

病態/臨床像

咽 頭 頸 部 上 腕 型 GBS(pharyngeal-cervical-brachial variant of GBS:PCB)は球麻痺が前景に立つギラン・バレー症候群の亜型で(下図オレンジ色文字が該当)、1986年にRopperが報告したことに端を発します(ギラン・バレー症候群の一般的事項に関してはこちらをご参照ください)。
球麻痺で発症し、その後症状分布が下行性に拡大していくことが特徴で、通常典型的なGBSは下肢から発症して分布が上行性に拡大していくことと対照的です。
・抗ガングリオシド抗体の中では抗GT1a抗体を検出することが多いとされています。

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・私は1例PCBの経験があります。生来健康で真面目な青年が全身倦怠感、発熱の2週間後に水の嚥下でときおり鼻に逆流することで発症、その後複視、上肢筋力低下が出現し、2つの病院で「心因性」と指摘されて紹介受診となった症例でした。脳神経は外転制限、顔面神経麻痺、開鼻声、四肢は上肢近位筋遠位筋いずれもMMT4程度、深部腱反射はいずれも保たれ感覚障害はなし、抗ガングリオシド抗体は抗GT1a抗体・抗GQ1b抗体が陽性の症例でした。

急性進行性の嚥下障害では鑑別にいれるべき疾患です。嚥下障害のアプローチはこちらにまとめがありますのでご参照ください。

■PCB100例のまとめ Arch Neurol 2007;64:1519

・先行感染:C.jejuni31%>CMV 6.0%> EBV 4.0% > Mycoplasma pneumoniae 3.0% > Haemophilus influenzae 1.0%

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・年齢中央値:43歳、男性56例、女性44例
・先行症状:上気道感染71%、下痢30%
初期症状:上肢筋力低下29%、嚥下障害17%、複視17%、ふらつき11%、開鼻声7%
・神経学的所見:意識障害5%、外眼筋麻痺55%、内眼筋麻痺20%、顔面神経麻痺64%
・上肢筋力低下の分布:近位47%、遠位28%(全体で75%)(*当初の報告では上肢近位筋の筋力低下が強調されていたが、今回の報告では必ずしも近位有意ではないことが示された)
・下肢筋力低下68%、深部腱反射低下もしくは消失 上肢91%、下肢86%、失調43%、感覚障害 深部感覚21%、表在覚 上肢59%、下肢38%、自律神経障害20%
・症状がnadirに達するまでの中央値7日
・髄液の蛋白細胞解離:42%

・自己抗体:抗GT1a抗体 51%、抗GQ1b抗体 39%、抗GM1抗体 10%、抗GM1b抗体 16%、抗GD1a抗体 12%、抗GalNAc-GD1a抗体1%(抗ガングリオシド抗体は68%で最低1つ検出あり)

・PCBはFS、BBEとoverlapする連続的なスペクトラムに位置することが分かる。

参考文献
・Brain and Nerve特集「ギラン・バレー症候群のすべて-100年の軌跡」ギラン・バレー症候群の臨床病型 著:古賀道明先生