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てんかん重積 Status epilepticus

最初に「けいれん重積」という言葉は存在しません。正しくは「てんかん重積(状態)」です。

てんかん重積は「病名」ではない

ARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)という病気が存在する訳ではなく「肺炎によるARDS」と表現するように、てんかん重積は病名ではなく病態です。

「肺炎によるARDS」でARDSを改善するためには原因の治療、つまり肺炎の治療が重要です。てんかん重積も全く同じで、原疾患がある場合はその原因を治療することがてんかん重積の治療では何よりも重要です。

臨床現場でここが見えなくなっててんかん重積管理で難渋する場合に「どの抗てんかん発作薬がよいか?」など議論されていることがありますが、多くの場合そういった問題ではなく、そもそもの原病にアプローチできていないことが多いです。

定義・病態

文献:”A definition and classification of status epilepticus – Report of the ILAE Task Force on Classification of Status Epilepticus” Epilepsia 2015; 56(10):1515–1523.

ポイント:Seizureが自然に頓挫する機構が破綻した(もしくは遷延する機序が開始する)病態生理に基づいた定義である

定義:「てんかん重積状態とは、発作停止機構の破綻、あるいは(t1時点以降の)異常に遷延する発作を引き起こす機構が惹起された状態である。また発作型や持続時間によっては、(t2時点以降に)神経細胞死、神経細胞障害、神経ネットワーク変化を含む長期的な後遺症をもたらす状態である」

原文 “SE is a condition resulting either from the failure of the mechanisms responsible for seizure termination or from the initiation of mechanisms which lead to abnormally prolonged seizures (after time point t1). It is a condition that can have long-term consequences (after time point t2), including neuronal death, neuronal injury, and alteration of neuronal networks, depending on the type and duration of seizures.”

ただこの病態生理の概念だけでは実診療で動けないため、臨床判断をする上での時間軸t1, t2を導入している(下表)

てんかん重積状態のタイプt1
(治療開始の指標)
t2
(後遺症リスクの指標)
強直間代重積状態5分30分
意識障害を伴う焦点性重積状態10分60分超
欠神重積状態10〜15分不明

本文中で強調されているのは「このt1, t2の時間はあくまでもoperational(運用上)のものであり、それぞれの状況(患者の年齢、発作焦点など)によりこれらは異なる」という点です。

原文 “It must be emphasized that the time limits given in Table 1” are meant primarily for operational purposes.” *Table 1は上の表のこと

「5分」という具体的な数字にとらわれすぎるのではなく、あくまでも自然頓挫機構の破綻という病態生理を意識することが重要です。

下図のStage 2の”receptor trafficking”のところが重要です。てんかん重積を抑えようとするメカニズムのGABA受容体の発現が減少し、逆に興奮系のNeuron transmitterのNMDA受容体、AMPA受容体の発現が亢進することによって、てんかん重積の自然頓挫機序が破綻します。これによって持続するフェーズに突入してしまうわけです。ここが先ほどの”t1 : time point 1″です。

分類

*厳密にはILAEの定義”Axis 1: Classification of status epilepticus (SE)”ではmyoclonic SEなどもあるが、ここでは実臨床でわかりやすくするためにCSEとNCSEにいったん簡略化して記載しています
*繰り返しですが「けいれん重積」という言葉は存在しません