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ATIS-NVAF試験

日本からのとても重要な臨床研究です。

“Optimal Antithrombotics for Ischemic Stroke and Concurrent Atrial Fibrillation and Atherosclerosis A Randomized Clinical Trial” JAMA Neurol. 2025;82(12):1227-1234.

背景
・心房細動(⇒抗凝固薬)と動脈硬化性疾患(⇒抗血小板薬)の両者を有する場合の抗血栓薬の治療ストラテジーは確立していない。後ろ向き研究は結果が異なっていた。
・「冠動脈疾患+心房細動」に関してはRCTが2つあり(AFIRE trial, EPIC-CAD trial)、抗凝固単独の非劣性と出血リスク軽減を示している。
・しかし脳梗塞でのRCTはこれまでなかった。

デザイン:open-label RCT

対象患者: 日本国内の41施設において、発症後8〜360日の虚血性脳卒中またはTIA(一過性脳虚血発作)を経験し、非弁膜症性心房細動少なくとも1つの動脈硬化性疾患(頸動脈・頭蓋内動脈狭窄、虚血性心疾患、末梢動脈疾患など)を併発している患者316名。
Exclusion criteria
直近の心血管イベント: 過去12ヶ月以内の心筋梗塞または急性冠症候群。
直近のステント治療: 過去12ヶ月以内の薬剤溶出ステント、または過去3ヶ月以内の金属ステントによる冠動脈インターベンション(PCI)。また、過去3ヶ月以内の頸動脈・頭蓋内・下肢へのステント留置。
重大な出血の既往: 過去6ヶ月以内の症候性頭蓋内出血または消化管出血。
基礎疾患: 出血性素因、血液凝固障害、活動性がん。
身体状態: 重度の障害(modified Rankin Scale スコアが5)。
治療計画: 抗凝固薬または抗血小板薬を4週間以上休薬する予定がある、または血行再建術(手術など)が予定されている。

患者背景

・抗凝固薬の内訳:DOAC 94%(アピキサバン 42%で最多)、ワルファリン 6%
・脳梗塞の病型内訳(本研究では病型を絞っていない)⇒心房細動を全例有しているため、厳密なTOAST分類に適応されておらず医師判断になっている

病型併用療法群 (n=159)単独療法群 (n=157)
心原性 (Cardioembolic)27%32%
アテローム血栓性 (Atherothrombotic)26%26%
ラクナ梗塞 (Lacunar)26%29%
その他 (Others)13%7%
一過性脳虚血発作 (TIA)7%6%
不明0%1%

介入: 患者を「抗凝固薬+抗血小板薬」の併用療法群(159名)と、「抗凝固薬のみ」の単独療法群(157名)にランダムに割り当て、2年間追跡

結果
主要評価項目(虚血性心血管イベントと重大な出血の複合) 併用 17.8% vs 単独 19.6% 有意差なし
出血リスク:併用群 19.5% vs 単独群8.6% 有意差あり
・虚血イベント:併用群11.1% vs 単独群14.2% 有意差なし
⇒中間解析で無益性が確認されたため、Early terminationになっている

評価項目併用群
n=159
単独群
n=157
HR (95%CI)P値
主要評価項目17.8%19.6%0.91 (0.53-1.55).64
(虚血性心血管イベントまたは重大な出血の複合項目)
副次有効性評価項目
 全ての虚血性心血管イベント※111.8%14.2%0.81 (0.42-1.56).53
 虚血性心血管イベント※211.1%14.2%0.76 (0.39-1.48).41
 虚血性脳卒中9.2%13.0%0.67 (0.32-1.39).28
 全死亡5.6%7.3%0.81 (0.32-2.04).65
 心筋梗塞または心血管死1.3%1.8%0.98 (0.14-6.97).99

安全性評価項目併用群単独群HR(95%CI)P値
ISTH基準の重大な出血および 臨床的に重要な非重大な出血19.5%8.6%2.42 (1.23-4.76).008
ISTH基準の重大な出血9.4%5.6%1.63 (0.68-3.94).27
頭蓋内出血5.2%3.8%1.39 (0.44-4.39).57

考察

冠動脈疾患+心房細動での臨床試験(AFIRE trial, EPIC-CAD trial)との比較検討について
・これらの冠動脈疾患+心房細動の臨床試験では少なくとも1年間安定していた患者を対象としていた⇒本研究は脳梗塞(or TIA)発症から8日~1年の患者(つまり再発リスクがより高い患者)である点に違いがある
・脳梗塞の再発リスクは、特にアテローム血栓性の場合、発症後1年以内に最も高いと報告されており、それが本研究で観察された高い再発率に寄与した可能性がある

Limitation
・DesignがOpen label
・薬剤の選択や投与量は担当医の判断
・病型分類が全員心房細動を有するためTOAST分類に厳密には従っていない
・詳細なデータ欠如
・一般化

管理人の見解

・実臨床で最も困るのは「心房細動を有しているが脳梗塞の病型は明らか非心原性である場合、抗血栓薬をどうするか?」です。個人的には急性期のみDOAC+抗血小板薬として、慢性期になってから(これをどの時期にするかはまちまちですが)DOAC単独として管理していました。
・この臨床試験では脳梗塞の全ての病型が含まれていますが、実臨床では「アテローム血栓性やBAD」などの病型で本当に抗血小板薬を落としてよいか?が気になるところです。今回の試験では心原性脳梗塞も含まれているので、次はこうした病型ごとにどう異なるか?が気になるところです。