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クロピドグレルとCYP2C19

クロピドグレルを含めて抗血小板薬のまとめはこちら。またクロピドグレルとPPIについてはこちらを参照くださり。

背景知識

・クロピドグレルはチエノピリジン系のprodrugであり、肝臓で代謝され活性型になることで薬効を発揮する
・肝臓の代謝酵素はCYP2C19が重要
・CYP2C19の機能喪失allele(具体的には*2, *3, *8)を有する患者ではクロピドグレルの薬効が不十分になる可能性
・白人ではこのallele保有者が約30%であるのに対し、アジア人では約60%と非常に高い割合を占める

臨床的な疑問点

疑問1:実際にこのallele保有者+クロピドグレル使用者は非保有者よりも脳血管障害リスクが高いのか?
脳梗塞再発リスク高く、出血リスクは変化なし 以下に臨床試験を紹介

疑問2:このalleleを有する場合、クロピドグレルではなくその他のチエノピリジン系薬剤(プラスグレル、チカグレロル)へ変更するのが良いのか?
⇒この疑問に答えたRCTはなし

CYP2C19機能喪失allele保有者の脳梗塞リスク

前向きコホート研究

“Cytochrome P450 2C19 Genotypes and Clopidogrel in Patients With Ischemic Stroke A Nonrandomized Clinical Trial” JAMA Network Open. 2025;8(4):e250398.

・背景①CYP2C19の機能喪失alleleを有する患者ではクロピドグレルの薬効が不十分になる可能性、②白人ではこのallele保有者が約30%であるのに対し、アジア人では約60%と非常に高い割合を占める
・目的:急性期脳梗塞でクロピドグレル投与患者のCYP2C19遺伝子型と臨床的なアウトカムの検討 “PLATELET試験”
・デザイン: 前向きコホート研究(2019年9月〜2023年1月)
・参加者: 発症から72時間以内にクロピドグレルを投与された急性脳梗塞患者2,910名(韓国37施設)
*重症度にかかわらず全ての脳梗塞を含めており、その一方でTIAは除外している(また全治療期間でクロピドグレルが投与されている)
・DAPT or SAPT:DAPT 88.9%
・TOAST分類:SVO 41.0%, LAA 30.0%, CE 3.3%, other 6.1%, cryptogenic 19.7%
・機能喪失allele:あり(intermediate or poor metabolizer) 61.3% vs なし 38.7%
・追跡期間:6か月
・Primary outcome:再発性脳卒中、心筋梗塞、または心血管死を含む複合的な心血管イベントの発生率 2.7% vs 1.6% 有意差あり
脳卒中再発:2.5% vs 1.4% 有意差あり
・Safety outcome(出血):0.6% vs 0.8% 有意差なし

評価項目全体機能喪失allele保有者非保有者P値
主要評価項目
複合心血管アウトカム2.3%2.7%1.6%.048
脳卒中の再発2.1%2.5%1.4%.047
心筋梗塞0.1%0.1%0.2%.64
心血管死0.1%0.1%0.0%.53
副次評価項目
虚血性脳卒中(脳梗塞)2.0%2.4%1.4%.06
一過性脳虚血発作 (TIA)0.2%0.3%0.1%.26
冠動脈血行再建術0.5%0.5%0.4%.99
早期神経症状増悪 (END)5.5%5.8%4.9%.33
3ヶ月後の予後良好 (mRS 0-2)81.8%81.7%81.9%.89
安全性評価項目
重大な出血0.7%0.6%0.8%.56
全死因死亡0.2%0.3%0.1%.27

・考慮すべき点:既報とおおむね合致(出血リスクが上昇しない点も含めて)・CYP2C19遺伝子型だけではなくそれ以外にも喫煙や肥満など薬効に影響を与える可能性がある
(本文中にチカグレロルについての代替薬としての言及はあるが、プラスグレルに関しての言及はない)

メタアナリシス

“Genetic Polymorphisms and clopidogrel efficacy for acute ischemic stroke or transient ischemic attack a systematic review and Meta-analysis” Circulation. 2017;135:21–33.

・脳梗塞またはTIAにクロピドグレル使用患者、5件の研究(計4,762人)を対象としたメタ解析
*12/15件がアジア(中国11, 韓国1件)からの報告である
機能喪失allele保有率:54%
*人種別:アジア人59%, 白人 25%(一般的にはアジア人50-60%, 白人30%)
・機能喪失alleleを有する患者 vs 非保有患者での検討
・結果①脳卒中リスク 12.0% vs 5.8% RR 1.92 有意に再発リスクが高い
・結果②複合血管イベント(脳卒中、心筋梗塞、血管死) 13.7% vs 9.4% RR 1.51 有意差に高い
・allele数の影響:機能低下型アレルを2つ保有する患者は、1つ保有する患者よりもさらに脳卒中のリスクが高まる
・出血リスク:2.4% vs 3.1% 有意差なし