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造影CT検査による腎機能障害のリスクについて

  • 2025年12月19日
  • 2025年12月19日
  • 神経

CA-AKI Contrast-Associated Acute Kidney Injury

定義(KDIGO)以下いずれかに該当
・造影剤≦48時間以内にΔcre≧0.3 mg/dL以上増加、または7日以内にベースラインの1.5倍以上増加
・尿量が0.5 mL/kg/時以下の状態が6時間以上続く

病態
①直接的毒性:尿細管上皮細胞に対する造影剤の直接的作用(細胞機能障害、アポトーシス誘導)
②間接的影響:血管収縮物質の増加やNO低下による血流障害

リスク因子:腎機能障害(最大の危険因子であり、腎機能が低いほどリスク上昇する)、糖尿病(CKDを合併する場合)、手技関連(造影剤投与量>350ml、72時間以内の繰り返し投与、緊急PCIなど)

予防
①造影剤は低浸透圧性最小限の投与量を選択する
②輸液:細胞外液輸液(重炭酸やアセチルシステインは否定的な臨床試験の結果)
*”ACR Manual on Contrast Media”の記載:予防投与の適応はeGFR<30 or AKI, 生理食塩水開始は検査1時間前、継続時間は3-12時間(が内時間の方がリスク低下の可能性あり)、投与量は検査前・後でそれぞれ500mL、または体重により1-3ml/kg/hr
腎毒性のある薬剤の中止(NSAIDs, ACEIなど)

参考文献:”Contrast-Associated Acute Kidney Injury” N Engl J Med 2019;380:2146-55.

文献

救急外来での造影CT検査によるAKIのリスク検討

“Intravenous CT Contrast Media and Acute Kidney Injury: A Multicenter Emergency Department–based Study” Radiology 2021; 301:571–581

・台湾救急外来でCT検査をうけた68,687人(造影剤あり:31,103人、なし:37,584人)
・Propensity score matchingで検討
・評価項目:CT後48〜72時間以内および1週間以内のAKI発生、ならびに1ヶ月以内の透析導入リスク
*AKI定義はKDIGO scre≧0.3mg/dL 48時間以内に上昇・7日以内にベースラインから50%以上上昇
・結果まとめ
 eGFR≧45:全て項目で有意差なし⇒造影剤によるリスク上昇はなし
 eGFR=30-44:短期的AKI, 透析導入リスク上昇
 eGFR<30:全て項目でリスク上昇

eGFR区分 (mL/min/1.73m²)評価項目造影剤ありなし調整後OR (95%CI)
全体 (Overall)AKI (48–72h)10.9%8.2%1.16 (1.04, 1.30)
AKI (1週間以内)6.3%5.7%1.00 (0.93, 1.08)
透析導入 (1ヶ月以内)1.6%1.5%1.01 (0.88, 1.16)
90以上AKI (48–72h)4.9%5.0%0.96 (0.73, 1.26)
透析導入 (1ヶ月以内)0.7%0.6%0.99 (0.69, 1.42)
60–89AKI (48–72h)8.1%5.9%1.19 (0.93, 1.52)
透析導入 (1ヶ月以内)0.7%0.9%0.74 (0.52, 1.04)
45–59AKI (48–72h)12.6%9.0%1.16 (0.88, 1.52)
透析導入 (1ヶ月以内)1.1%1.0%0.87 (0.56, 1.34)
30–44AKI (48–72h)16.8%11.4%1.35 (1.06, 1.73)
AKI (1週間以内)9.4%8.3%1.02 (0.86, 1.21)
透析導入 (1ヶ月以内)2.5%1.4%1.50 (1.05, 2.13)
30未満AKI (48–72h)24.3%17.7%1.36 (1.09, 1.70)
AKI (1週間以内)17.5%13.1%1.49 (1.27, 1.74)
透析導入 (1ヶ月以内)8.0%8.0%1.36 (1.09, 1.70)

DM有無+腎機能によるAKI発症リスクの検討

“Contrast-enhanced CT and Acute Kidney Injury: Risk Stratification by Diabetic Status and Kidney Function” Radiology 2023; 307(5):e222321.

・台湾の5つの医療機関において、2012年から2019年の間にCT検査を受けた成人患者75,328人を対象とした大規模な後ろ向き研究(使用した造影剤は低浸透圧造影剤イオヘキソール)
・糖尿病の有無と腎機能が造影剤後AKIのリスクになるかどうか検討している
・結果
・AKI発症リスク:eGFR=30-44ではDM群のみAKIリスク上昇、eGFR<30ではDM合併有無にかかわらずAKIリスク上昇

eGFR(mL/min/1.73 m²)DM有無造影CT群非造影CT群調整済みオッズ比 (OR)P値
45以上あり/なし有意差なし有意差なし1.0前後0.05以上
30–44 (中等度低下)あり13.0%7.6%1.83.003
なし9.5%8.4%1.14.38
30未満 (高度低下)あり17.9%9.3%2.12.001
なし17.4%11.4%1.62.003

・30日以内透析導入リスク:eGFR<30かつDM群で透析導入リスク上昇

eGFRDM有無調整済みオッズ比 (OR)P値
30–44あり / なし有意差なし0.05以上
30未満あり1.92.005
なし1.22.34

meta-analysis

“Risk of acute kidney injury after contrast-enhanced computerized tomography: a systematic review and meta-analysis of 21 propensity score–matched cohort studies” European Radiology (2022) 32:8432–8442.

・造影CT後のAKIリスクに関して合計169,455名の患者データを含む21件のPropensity score matching
・結果
①全体:AKI、透析、死亡リスクの有意な増加はなし
②eGFR≧45:AKI、透析、死亡リスクの有意な増加はなし
③eGFR≦30:AKIリスク有意に増加(19% vs 15% ARR=4%)

eGFRの分類 (mL/min/1.73 m²)造影剤によるAKIのリスク具体的なデータまとめ
45 以上増加の証拠なし透析や死亡リスクについても増加は認められない安全性が高いと判断される
30 〜 45 未満資料に個別の数値記載なし*全体的な解析結果(OR 0.97)に含まれ、有意なリスク増は見られないeGFR 45以上と同様の傾向とされる
30 以下有意に増加造影群:19% (334/1757)
非造影群:15% (863/5698)
(絶対リスク増加:4%
注意が必要な高リスク群
全体(全患者)関連性なしオッズ比 (OR):0.97
(95%信頼区間: 0.85-1.11, p=0.64)
全体としては造影剤によるリスク増はない

まとめ

・造影剤を使用してはいけない絶対禁忌となるeGFRの値がある訳ではない⇒総合判断が必要である
・eGFR<30でAKIリスク上昇するが、臨床的に評価すべき場合はリスクを把握した上で造影CT検査をすべきである(しないことによるHarmの懸念があるため)
・AKI患者に対する造影剤投与の臨床試験は乏しい⇒実施の利益が害を上回る場合に限定して実施すべきである

参考:メトホルミンに関して ACR Manual on Contrast Mediaの推奨

問題となるのは腎機能障害によりメトホルミン蓄積することでの乳酸アシドーシス(MALA)。メトホルミンの約90%は、24時間以内に腎臓から未変化体のまま排泄されるため。
①AKIなし、eGFR>30の場合:メトホルミン中止不要
②AKIあり or eGFR<30 or 動脈カテーテル検査を受ける(腎動脈へ塞栓症を生じる可能性がある)のいずれかに該当する場合:検査時(前)にメトホルミンを一時的に中止⇒検査後48時間服用を控える(その後腎機能評価し問題なければ再開)