片頭痛治療におけるGepant製剤について調べた内容をまとめます。
ゲパント(Gepant)製剤総論
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は三叉神経侵害受容求心性C繊維内に含まれる⇒活動電位が三叉神経に伝わるとCGRPが放出⇒受容体に結合(①頭蓋内動脈の平滑筋細胞により血管拡張、②髄膜の肥満細胞での炎症、③C繊維⇒Aδ繊維へのシグナル伝達)
下図:Durham PL. CGRP-receptor antagonists–a fresh approach to migraine therapy? N Engl J Med. 2004 Mar 11;350(11):1073-5. より引用

CGRPをターゲットとした治療薬は①CGRP関連モノクローナル抗体、②Gepant(CGRP受容体拮抗薬)に分類される。
第1世代Gepantは肝機能障害により中断、その後肝機能障害がない第2世代Gepant(Urogepant, Rimegepant, Atogepant)、第3世代Gepant(Zavegepant)が開発。
Gepantは低分子量なので経口投与が可能、脳血管関門を通過し、半減期は8-12時間程度である。
トリプタン製剤との違い:①血管収縮作用を認めない(トリプタンは血管平滑筋の5-HT1B受容体刺激)⇒血管病変合併患者で使用しやすい、②副作用が少ない、③MOHを生じづらい
ゲパント製剤各論
リメゲパント Rimegepant
商品名:ナルティーク OD 75mg/錠
薬価:1錠2934円 日本では2025/12/16より発売開始
使用方法:発作時頓用または定期内服予防(2日に1回内服)
最大投与量:1日1回まで
*発作時はトリプタンと同時内服でもOK
薬物動態:Tmax 1.5時間、T1/2 11時間
副作用:嘔気1-2%
禁忌:なし 代謝:CYP3A4
ゲパント製剤の臨床試験
リメゲパントとプラセボを比較検討した急性期治療と予防に関する臨床試験
まとめ(米国 or 日本 × 急性期 or 予防薬をそれぞれ)
| 試験 | Patient | Intervention | Comparison | Outcome | Results |
|---|---|---|---|---|---|
| Croop et al. (Lancet 2019), 米国・第3相試験 (急性期治療) | 片頭痛歴1年以上、月2〜8回の発作がある18歳以上の成人(米国、N=1466) | リメゲパン 75mg 口腔内崩壊錠(ODT) 単回投与 | プラセボ 口腔内崩壊錠(ODT) 単回投与 | 投与2時間後の痛み消失 および 投与2時間後の最もうっとうしい症状(MBS)の消失 (共主要評価項目) | 痛み消失率:リメゲパン 21% vs プラセボ 11% (p<0.0001) MBS消失率:リメゲパン 35% vs プラセボ 27% (p=0.0009) ※MBS:悪心、光過敏、音過敏から選択 安全性:忍容性はプラセボと同様 |
| Ikeda et al. (Headache 2025) 日本・第2/3相試験 (急性期治療) | 片頭痛歴1年以上、月2〜8回の中等度〜重度の発作がある18歳以上の成人(日本、N=706) | リメゲパン 75mg および 25mg 口腔内崩壊錠(ODT) 単回投与 | プラセボ 単回投与 | 投与2時間後の痛み消失 | 痛み消失率: リメゲパン 75mg: 32.4% vs プラセボ: 13.0% (差: 19.4%, p<0.001) リメゲパン 25mg: 21.0% ※75mg群でプラセボに対し優越性が示された。 安全性:肝障害のシグナルなし |
| Croop et al. (Lancet 2021) 米国・第2/3相試験 (予防治療) | 片頭痛歴1年以上、中等度〜重度の発作が月4〜18回ある18歳以上の成人(米国、N=747), | リメゲパン 75mg 錠剤(Tablet) 隔日投与(12週間), | プラセボ 錠剤 隔日投与(12週間) | 投与9〜12週目における月間片頭痛日数の観察期間からの変化量, | 月間片頭痛日数の減少: リメゲパン -4.3日 vs プラセボ -3.5日 (差: -0.8日, p=0.0099) 安全性:有害事象の発現率は両群とも36%で同様 |
| Kitamura et al. (Headache 2025) 日本・第3相試験 (予防治療) | 中等度〜重度の発作が月4〜18回ある18歳以上の成人(日本、N=496) | リメゲパン 75mg 口腔内崩壊錠(ODT) 隔日投与(12週間), | プラセボ 口腔内崩壊錠(ODT) 隔日投与(12週間) | 投与9〜12週目における月間片頭痛日数の観察期間からの平均変化量, | 月間片頭痛日数の減少: リメゲパン群の方が有意に減少した。 (差: -1.1日 [95% CI: -1.73 to -0.38], p=0.002) 安全性:薬剤性肝障害のシグナルは確認されず |
急性期 ゲパント vs トリプタン製剤と比較した臨床試験
前向き研究なし
急性期治療に関する systematic review and meta-analysis トリプタン vs ジタン vs ゲパント
“Comparison of New Pharmacologic Agents With Triptans for Treatment of Migraine A Systematic Review and Meta-analysis” JAMA Network Open. 2021;4(10):e2128544.
⇒トリプタン製剤よりは効果が弱い・副作用は最も少ない
| トリプタン製剤 | ラスミジタン(5-HT1F受容体作動薬) | ゲパント(CGRP受容体拮抗薬) | |
|---|---|---|---|
| 有効性 (2時間後の痛みの消失) | • 最も高い効果を示します。 • エレトリプタン40mgは全薬剤中で最高ランク (OR 5.59) です。 • 多くのトリプタンが新薬よりも有意に強力です (対ラスミジタン: OR 1.72〜3.40、対ゲパント系: OR 1.54〜3.05)。 | • 中等度の効果です。 • プラセボより有意に有効ですが、50mg投与時の効果は OR 1.65 と比較的低めです。 • トリプタンより劣りますが、ゲパント系との間に有意差はありません。 | • 中等度の効果です。 • プラセボより有意に有効ですが、トリプタンより効果 (OR) は低くなります。 • ラスミジタンとの間に統計的な有意差はありません。 |
| 安全性 (有害事象のリスク) | • 中等度〜高いリスクがあります。 • 薬剤により異なりますが、リザトリプタン (OR 1.96)、スマトリプタン (OR 1.83)、ゾルミトリプタン (OR 2.34) は、ゲパント系より副作用リスクが高い結果でした。 | • 全治療薬の中で最もリスクが高い (副作用が多い) 結果でした。 • 対プラセボの有害事象オッズ比は、50mgで OR 3.12、100mgで OR 4.30 と高値を示しました。 • めまい、疲労などの中枢神経症状が主です。 | • 高い安全性 (副作用が少ない) が示されています。 • トリプタンやラスミジタンと比較して有意にリスクが低い結果でした。 • リメゲパント、ウブロゲパントはプラセボと比較しても有害事象の有意な増加は見られませんでした。 |
| 心血管リスク | • あり (血管収縮作用)。 • 心血管疾患のある患者には使用できません (禁忌)。 | • なし。 • 血管収縮作用がないため懸念がありません。 | • なし。 • 血管収縮作用がないため懸念がありません。 |
| 臨床的な位置づけ | • 第一選択薬 (Mainstay)。 • 高い効果 (OR) により、依然として急性期治療の主力と考えられます。 | • 代替薬 (Alternative)。 • トリプタン無効例や心血管リスク患者への選択肢となります。 • 副作用 (めまい等) への注意が必要です。 | • 代替薬 (Alternative)。 • トリプタン無効例や心血管リスク患者への選択肢となります。 • 副作用が少なく忍容性が高いのが特徴です |
予防ゲパント vs CGRP関連モノクローナル抗体と比較検討した臨床試験
前向き研究なし
systematic review and meta-analysis “Evaluating the efficacy of CGRP mAbs and gepants for the preventive treatment of migraine: A systematic review and network meta-analysis of phase 3 randomised controlled trials” Cephalalgia 2023, Vol. 43(4) 1–14
| 投与経路 | 薬剤名 | 月間片頭痛日数の減少 | 50%以上の奏効率 | その他 |
|---|---|---|---|---|
| 皮下注射 | フレマネズマブ (Fremanezumab) | 約 2.06 ~ 2.36日 減少 (統計的に有意) | 有意に高い (オッズ比3倍以上) | 675mg(四半期ごと)および225mg(毎月)で高い効果を示しました。反復性・慢性片頭痛の両方で高い有効性が確認されています,。 |
| ガルカネズマブ (Galcanezumab) | 約 2.02 ~ 2.28日 減少 (統計的に有意) | 有意に高い | 120mgおよび240mgでフレマネズマブと同等の高い減少効果(2日以上)を示しました。急性期治療薬の使用日数も大きく減少させました,。 | |
| エレヌマブ (Erenumab) | 約 1.27 ~ 1.78日 減少 (統計的に有意) | 有意に高い | 70mgと140mgの両方で有効ですが、減少幅の推定値はフレマネズマブやガルカネズマブと比較してやや控えめな結果でした。 | |
| 静脈内注射 | エプチネズマブ (Eptinezumab) | 100mg/300mgは有意に減少 (30mgは有意差なし) | 有意に高い | 30mgではMMD減少が統計的に有意ではありませんでした。一方、慢性片頭痛に対しては300mgが非常に高い効果(2.6日減少)を示しました,。 |
| 経口投与 | アトゲパント (Atogepant) | 約 1.35 ~ 1.40日 減少 (10-120mgですべて有意) | プラセボより高い傾向 (統計的有意性は注射薬ほど明確ではない) | 120mgと60mgで最も高い効果を示しました。半減期が短いため、妊娠を計画している女性などに適した選択肢となる可能性があります,。 |
| リメゲパント (Rimegepant) | 約 0.80日 減少 (統計的に有意) | プラセボより高い傾向 | 75mg隔日投与のデータです。有効ですが、他の薬剤と比較するとMMDの減少幅は最も小さい結果となりました |