正常圧水頭症のまとめがないことに気が付きました・・・。高齢者の歩行障害の鑑別、また”treatable dementia”の鑑別として必ず挙げる必要があります。
分類・病態
・特発性
・続発性:くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎
病態:詳細は未解明 神経の脳室拡大による圧迫だけでは説明できなさそう
・くも膜顆粒からのCSF吸収障害→脳室拡大により脳室周囲の浮腫を生じ、同部位に虚血を引き起こす 動脈硬化(白質病変、脳血管障害、高血圧症の合併が多い)
・Glymphaticシステムの機能低下 など
*通常60歳以上、加齢とともに有病率は増加、性差なし
臨床像
3徴全てそろう訳ではない(全てそろうのは約63%) Quantitative evaluation of changes in gait after extended cerebrospinal fluid drainage for normal pressure hydrocephalus. J Clin Neurosci 2016;28:31-7.
歩行障害
・頻度が最も高く90%以上、初期から目立つ(「歩行障害」を主訴として受診することがほとんど)
・治療反応性が最も良好であるtreatable gait disorders
・”magnetic gait”(足の挙上が低下し遊脚期が短く、ずっと地面をするように歩く), 歩隔が拡大し(開脚歩行)足先が外側を向いている(逆ハの字型)、歩行開始時と方今転換時に歩幅が減少する、支えがないと椅子から立ち上がれない、転倒する
*パーキンソン症候群の歩行と鑑別が難しい場合も多々ある
iNPHとPD鑑別上のポイント:歩隔はiNPHは広くPDは狭い,iNPHの方がよりすり足で足先があがらない、姿勢反射障害はiNPHの方がより初期から目立つ
認知症
・認知症患者のうちの約5%がNPHと報告されている
・前頭葉機能の精神運動速度(思考、反応などのスピード低下、注意障害など)が目立つ(記憶力は比較的保たれる)
・認知症が進行するとシャント術の効果も低下してしまうと指摘されている
・MMSEでは十分に評価しきれないかもしれない(学習効果や項目が広いため)
尿失禁
・過活動膀胱→切迫性尿失禁が多い
*重症度評価:iNPHGS
・歩行障害,認知障害,排尿障害それぞれについて0~4の5段階で評価

検査
MRI画像
DESH: disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus
・脳室およびシルビウス裂の拡大
・高位円蓋部の脳溝、くも膜下腔の狭小化
・Evans’ index≧0.3 :シャント術による改善効果は予測しない
・脳梁角(callosal angle)<90°:前後交連(anterior-posterior commissure, AC-PC)平面に対して垂直となるように再構成した画像上で後交連(posterior commissure)のレベルで両側側脳室の内側壁の間の角度を測定
画像の単一指標のみで治療効果を予測することは困難 Incidence and outcome of surgery for adult hydrocephalus patients in Sweden. Br J Neurosurg 2017;31:21-7.
脳血流SPECT CAPPAH sign (convexity apparent hyperperfusion sign) 高位円蓋部の血流が相対的に増加してみられる現象
“tap test”(タップテスト)
・19G以上の太い穿刺針で30mL以上髄液を排除する
・評価のメルクマール:TUG
・評価のタイミング:同日(tapの直前と数時間以内)+遅発性の効果改善(数日後まで)
*改善を認める場合はシャント術により約90%は症状改善が期待できる
*改善が認めない場合もiNPHは否定できない(陰性的中率が低い)⇒シャント手術で改善する可能性がある
診断
臨床像・画像所見・タップテストの反応の3つから診断する
治療
髄液シャント手術:V-Pシャント(ventriculo-peritoneal shunt)またはL-Pシャント(lumbo-peritoneal shunt)⇒特に歩行障害の改善効果がある
アルツハイマー病理を合併している症例でどうするべきか?
参考
・特発性正常圧水頭症 ガイドライン第3版
・N Engl J Med 2025;393:2243-53. 代表的なreview article
Clinical features of idiopathic normal pressure hydrocephalus: critical review of objective findings. Mov Disord Clin Pract 2022;10:9-16.