先日めまいを主訴として患者さんでSupine head roll testで方向交代性向地性頭位眼振を呈しており、あー外側半規管型BPPV(半規管結石症)だと思ったけれど、、、①眼振が1分以上持続する、②ときおり安静時も眼振がある、③耳石置換法への反応性が悪い(ふつう外側半規管型の半規管結石症はすぐよくなる)など違和感がある症例がありました。調べていると、おそらくこの”light cupula”という概念に到達しました(まだ確立した概念ではなさそうです)。日本のBPPV診療ガイドライン2023年版にも「BPPVの特殊な病態」のチャプターに「いわゆる light cupula」として記載が1ページだけあります。
一言で言えば「外側半規管型BPPV(半規管結石症)」と思ったが、眼振が1分以内にとまらず持続性の場合は”light cupula”の可能性を考慮する」となるでしょうか。
基礎知識の復習
・外側半規管型BPPVは半規管結石症とクプラ結石症(クプラに耳石がくっつくことでクプラが重くなり重力方向へ偏移する)がある。
・眼振のパターン *いずれも安静時自発眼振はない
半規管結石症=方向交代性向地性頭位眼振 持続時間<1分
クプラ結石症=方向交代性背地性頭位眼振 持続時間>1分も多い *交代性背地性眼振は中枢性の多く注意
light cupulaとは何か?
・まだ病態が解明されている訳ではないです。病態が先にあるというよりも、「持続性の方向交代性向地性頭位眼振」を説明するための概念として提唱されたという理解が正しいかもしれません。
・上記の一般的なクプラ結石症はクプラに耳石がつくことでクプラが重くなり重力方向へ偏移します。これをあえて”heavy cupula”と表現すると、逆にクプラがリンパ液より相対的に軽くなる病態を”light cupula”と表現します。つまり周囲のリンパ液が重くなる(リンパ液への出血など?)、またはクプラに比重が軽い物質がくっついて軽くなることです。
・つまり”heavy cupula”と”light cupula”はクプラの偏移方向が逆になるので、light cupulaでは方向交代性「向地性」頭位眼振になります。
・半規管結石症ではなくクプラ結石症は眼振が1分以内に収まらないことが多く持続性が多いです。
・臥位正中頭位で「健側」への水平性眼振を認める場合もあります。
・またポイントとされているのは眼振が消失する頭位の角度(90度という意味ではなく細かい角度)があるということです。これはnull plane(文献により表現が違う)とよばれます。
・眼振の左右の大きさの違いから患側を判断することは正確ではないとされています(外側半規管型BPPV半規管結石症では眼振が大きい側が患側であるのに対して)。
・耳石置換法に治療抵抗性ですが、2週間以内に自然治癒するとされています。
・両者の違いに関して下図にまとめます。
| 検査 | 外側半規管BPPV 半規管結石症 | Light cupula |
|---|---|---|
| 頭位回旋検査 (Head-roll test) | ||
| 眼振方向 | 地向性方向交代性頭位眼振 (Geotropic DCPN) | 地向性方向交代性頭位眼振 (Geotropic DCPN) |
| 持続時間 | 一過性 (Transient) <1分 | 持続性 (Persistent) >1分 |
| 潜時 | あり (Yes) | なし (No) |
| Null plane(眼振が消失する頭位) | なし (No) | あり (Yes) |
| 易疲労性 (Fatigability) | あり (Yes) | なし (No) |