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神経サルコイドーシス 治療

神経サルコイドーシスの治療に関して前向き研究は不在であり、基本的にはexpert opinionや観察研究の結果からの内容をまとめます。

■副腎皮質ステロイド

神経サルコイドーシスの治療では通常副腎皮質ステロイドを第1選択として使用します。一般的にはサルコイドーシスによる他の臓器障害に比べて、神経サルコイドーシスはステロイドの治療反応性が悪いとされています。一定数の神経サルコイドーシス患者はステロイド単独では治療抵抗性であったり、低用量にすると再発したりします。このため高用量が長期必要になったり、他の免疫抑制剤を併用する必要が出てくる場合もあります。ステロイド単独での治療では70%において症状が悪化し、PSL20-25mg/日以下では再燃しやすいと報告されています。

重症例ではステロイドパルス療法(IVMP)を3-5日間使用してから、ステロイド経口内服へ移行します。具体的に「どの様な状態ではステロイドパルス療法を実施するか?」に関して決まったものはなく、状況と医師ごとの判断となります。

その他の場合はPSL1mg/kg/日や20-60mg/日から開始します(末梢神経障害の神経サルコイドーシスでは0.5mg/kgから開始する場合もあるようです)。これは個人的に耳学問で習った内容ですが4週間はPSL1mg/kg/日で継続した方が良いという意見もあります。

■その他の免疫抑制剤

以下のうち特にどの薬剤が優れているか?に関しての前向きのstudyはなく、決まりはありません。しかし、上記のステロイドをsparingする意味でも併用が必要となる場合も多々あります。

メトトレキサート:steroid-sparingとして神経サルコイドーシスで経験的に使用されることが多い薬剤です(私も師匠からは神経サルコイドーシスでは基本ステロイドとメトトレキサート7.5-10mg/週を使用すると教わりました)。28例の神経サルコイドーシスにメトトレキサートを追加し、17例(61%)で治療反応が得られたという報告もあります(Arch Int Med1997;157:1864-8)。

シクロフォスファミド

アザチオプリン

MMF

インフリキシマブ(TNFα阻害薬) インフリキシマブが効果があった4例報告(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2010;81:241-e246.)。Neurology® 2017;89:2092–2100

リツキシマブ Neurology. 2010 Aug 10;75(6):568-70

以下にそれぞれの薬剤に関してまとめたものを掲載します(Presse Med.2012;41:e331–e348より引用)。

以下は年度ごとの使用されている免疫抑制剤の推移ですが、たしかにMTXが多く使用されており、続いてTNFα阻害薬、アザチオプリンなどが続いています(BMC Neurology (2016) 16:220)。

外科手術・放射線治療

これらは基本的にlast resortであり、薬剤治療でどうしてもコントロールされない場合に検討される場合があるようです(私はまだ経験がありません)。

また以下の様な治療のフローチャートも提唱されています。

■神経サルコイドーシスのliterature reviewまとめ BMC Neurology (2016) 16:220

1st line therapyが81%で実施され、2nd line therapyが27%、3rd line therapyが9%で実施されており、全体としては副腎皮質ステロイド83%、メトトレキサート16%、アザチオプリン8%、クロロキン4%、MMF2%、シクロスポリン2%、シクロフォスファミド6%、TNFα阻害薬4%が使用されています。治療反応性が良好なものは1st line therapy71%、2nd line therapy 55%、3rd line therapy 39%で、予後はremission27%、改善32%、安定22%、悪化4%、死亡率は5%と報告されています。

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以上神経サルコイドーシスの治療に関してまとめました。私もまだまだ臨床経験が不足しているため、ご経験などコメントいただけますと大変ありがたいです。

参考文献

・Current Treatment Options in Neurology (2013) 15:492–504 神経サルコイドーシスの治療reviewでとても良くまとまっております。ほとんどの内容をこちらの論文から引用させていただきました。