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メトトレキサート MTX: methotrexate

作用機序

メトトレキサート(MTX: methotrexate)は葉酸代謝拮抗薬で核酸合成阻害をすることで、免疫細胞を抑制する作用を持ちます。細胞障害薬で細胞選択性はないですが、抗炎症作用(マクロファージからのサイトカイン産生抑制)も呈す点が特徴的です。後者のためマクロファージや好中球が関与する病態(関節リウマチ、AOSD、高安動脈炎、乾癬性関節炎、サルコイドーシスなど)にも効果があります。細胞内半減期が長いです。

効果発現には数週間(2か月程度)かかります。メトトレキサートは関節リウマチの治療でその地位を確立していますが、ここでは神経疾患で”Steroid sparing”として使用する場合を想定してまとめます(投与量に違いがあるくらいで、副作用や基本的な方針などは大きな違いはありませんが)。大量療法や髄注に関してはまた別途まとめさせていただきます。

製剤:メソトレキセート 2.5mg/1錠 (*ちなみに、関節リウマチで使用するのはリウマトレックス 2mg/1錠)

開始量:メトトレキサート 7.5mg/週 その後Δ2.5mg/週ずつ調節(開始後2-4週後ごろから増量検討)

■投与方法

以下の例は月曜日にメトトレキサートを7.5mg内服する場合の投与方法です。葉酸は水曜日に内服します。

メトトレキサートは週単位での投与になるため注意が必要です(連日投与してしまい死亡したしまった例の報告もあります。慣れていない先生がdo処方で間違って連日処方としてしまうインシデントはどの病院でもあるかもしれません・・・)。

また副作用予防として葉酸投与をメトトレキサート投与から24-48時間後に行います。通常はフォリアミン5mg 1T1x朝食後で処方します。MTXの容量依存性副作用の軽減が目的です。間質性肺炎、悪性リンパ腫の予防効果はないため注意が必要です。

副作用

・口内炎・頭痛・肝機能障害(AST/ALT):1か月程度で上昇 用量依存性(葉酸で軽減可能)
骨髄抑制:容量依存性 MCV上昇が契機としてわかるため注意
間質性肺炎:6か月~1年(用量非依存的) 1%程度:アレルギー反応であり、予防方法なしrisk:既存の間質性肺炎、高齢者・悪性リンパ腫
・悪性リンパ腫 (MTX-associated lymphoproliferative disorder: MTX-LPD)
低用量MTX投与を受けている患者が発症するリンパ増殖性疾患で、DLBCL60%程度>Hodgikin lymphomaが病型とされています。MTX投与中に腫瘍を疑う所見を認めた場合は、この疾患を考慮する必要があります。治療はMTX中止が第1選択で、寛解を得られない場合は化学療法を導入します。こちらにまとめがありますのでご参照ください。

併用薬:禁忌の薬剤はなし

中断:ステロイドと異なり突然中止しても問題なし(風邪をひいてしまった場合のときはskip可能)

■投与前の確認事項
・挙児希望
・胸部レントゲン(間質性肺炎合併の確認)
・腎機能(CCr<30 ml/minは禁忌
・肝機能(HBV、HCV感染も合わせて確認)
・胸水、腹水:胸水、腹水にMTXが蓄積するため

上記の項目が投与禁忌に該当するため、必ず投与前に確認する必要があります。