恥ずかしながら私(管理人)は今まで診断例がありませんが、先日疑う症例があり(結局違いそうですが)NEJMのreview articleをまとめます。 N Engl J Med 2025;393:1409-19.
病態
1. 肥満が、体幹を介して頸静脈圧を上昇させる。
2. この静脈圧の上昇が頭蓋内の硬膜静脈洞に伝達され、CSF吸収のための圧勾配が減少し、ICPが上昇する。
3. 上昇したICPが硬膜静脈洞、特に横静脈洞とS状静脈洞の接合部を圧迫し、機能的狭窄を生み出す。
4. この局所的な狭窄が脳静脈高血圧を悪化させ、さらにICPを上昇させる
*横静脈洞の狭窄が先か?結果か?はわからないですが,いずれにせよこの病態が悪循環に関与している可能性がある
臨床像
・95%以上は肥満を伴う妊娠可能年齢の女性に生じる(男性は稀であるが原因はわからない
*BMI>30,女性の1/500に生じる
*肥満の有病率増加に伴いIIHも罹患率が増加している
*直近の体重増加が発症に先行することが多い
・臨床像:頭痛 84%,(毎日持続する)、一過性の視覚不明瞭化(68%)、首または背中の痛み(53%)、脈拍同期性耳鳴(52%)、視力低下(32%)、複視(18%)
・神経所見:外転神経麻痺以外には異常所見を認めない
・視神経乳頭浮腫(papilledema):95%に認める(超重要)⇒失明につながりうる(最も重篤な合併症)ため要注意
参考文献:IIHの前向き大規模コホートから臨床像を探る “The Idiopathic Intracranial Hypertension Treatment Trial Clinical Profile at Baseline” JAMA Neurol. 2014;71(6):693-701.
・軽度の視力低下を伴う165名の患者を対象とした多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照研究のコホートの患者背景を検討
あ・平均年齢29歳,女性97.6%, BMI平均 39.9⇒ほとんどが肥満の若年女性
・腰椎穿刺の初圧平均:34.35 cmH2O(BMIと初圧に相関関係はなし)
・視野欠損:盲点拡大を伴う部分的な弓状欠損が最も多い
| 症状 | 発生頻度 | 詳細 |
| 頭痛 (Headache) | 84% | 頭痛の平均重症度は10点満点中6.3点(SD 1.9)でした。頭痛を報告した患者の51%で、頭痛は持続的または毎日発生していました。 |
| 一過性視覚暗黒(TVO) | 68% | 通常、30秒未満で、完全な視覚回復を伴う一過性の視力喪失です。 |
| 背部痛 | 53% | 脊髄神経根(radicular)パターンでの痛みを含む背部痛が発生しました。このメカニズムは、高圧下の髄液による脊髄硬膜根鞘の充満が原因と考えられています。 |
| 拍動性耳鳴り (Pulse synchronous tinnitus) | 52% | 約3分の2の症例で両側性でした。 |
| 視力喪失(患者が報告) | 32% | 患者が「視力喪失」を報告したのは32%でした。 |
| 複視 (Double vision) | 18% | 診察で外斜視(第6脳神経麻痺を示唆)があったのは3%のみであり、複視は一過性である可能性が示唆されます。 |
検査
・画像:目的①頭蓋内圧亢進を呈する二次的原因を除外(脳静脈血栓症,悪性腫瘍など)、②視神経乳頭浮腫の画像所見,③横静脈洞狭窄
*参考:視神経乳頭浮腫の画像所見(Radiopaediaのこちらの記事を参照)
① 強膜後部の扁平化
② 視神経乳頭の突出
③視神経周囲のくも膜下腔の拡大
④視神経の蛇行
・腰椎穿刺:>25cmH2O(診断基準)
治療
1:内科的治療
・体重減少+経口アセタゾラミド(炭酸脱水素酵素阻害によるCSF産生減少)
*体重減少⇒肥満外科手術、GLP-1作動薬(動物モデルではCSF産生を抑制することも指摘)今後の検討により推奨される可能性あり
2:外科的治療
・CSFシャント(外科治療の中で標準) 内科治療に反応性が悪い場合(または視力に問題がある場合)
・硬膜静脈洞ステント留置術 カテーテル閉塞により再度手術が必要になることがある
・視神経鞘解放術 ICP自体は低下させず,CSFを眼窩に逃がす