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血液ガスの使い方

ここでは血液ガスの適応・検体扱い方などをまとめます。血液ガス検査の解釈・酸塩基平衡の計算方法に関してはこちらをご覧ください。

1:血液ガス検査で分かること

血液ガスでは以下の項目を調べることが出来ます。

•pH, PaCO2, HCO3-, BE(base excess):酸塩基平衡
•paO2, SaO2:酸素化・組織酸素供給
•Na,K,Cl,Ca:電解質  •Glucose:血糖値 •Hb:貧血
•Lactate:組織灌流の指標

これらの項目をみて分かるように、血液ガス検査では状態の評価(患者さんの状態がどのくらいヤバイか?)と状態の原因(なぜこの状態になったのか?)の評価が同時に素早く出来るます。例えばショックの患者さんではLacが上昇しているかによって組織還流不全の状態を評価することができますし、意識障害の患者さんでは実はPaCO2が貯留してしている原因の評価をすることが出来ます。

このように血液ガス検査は非常に役立ちます。救急外来では「心電図」「エコー検査」そして「血液ガス」が大きな検査(造影CT検査など)に行く前に評価できる検査3つなので、それぞれ初期研修のうちに習熟するようにしたいです。

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2:いつ血液ガス検査をするか?

では一体いつ血液ガス検査をするべきでしょうか?これは検査一般に関してですが、検査を自由に使いこなせるには、その検査の適応を自分の中で明確かつシンプルにする必要があります。私は「血液ガスをいつ取るべきか?」という質問に対して私はいつも「Vital signに異常があるとき」と答えています。

意識障害では、血液ガス検査は必須で、意識障害の原因の評価に役立ちます(PaCO2貯留でのCO2ナルコーシス、高Na血症、低血糖など)。

ショック患者ではLac上昇にて組織還流不全の状態の評価ができますし、SaO2、Hbの低下がないかどうかの評価(つまり組織酸素供給の評価)もできます。

発熱患者でもLac上昇がないかによって敗血症性ショックの状態でないかという評価に役立ちます。

頻脈、徐脈のときも背景に電解質異常(特に高K血症、低K血症)や酸塩基平衡(特にアシデミア)がないか?という頻脈、徐脈の原因の評価ができます。

SpO2が低下しているときにも、血液ガスでPaCO2が下がっている場合は過換気により代償していることが示唆されますし、PaCO2が上昇している場合は換気代償が効いておらずNPPVや人工呼吸管理といった換気補助が必要なことや、酸素投与がナルコーシスにつながるリスクの評価ができます。SaO2とPaO2の違いに関してはこちらもご参照ください。

呼吸回数が上昇していてPaCO2が低値であれば過換気ですが、PaCO2が上昇していれば十分に換気代償が効いていない状態を表します(ここはより詳しく呼吸回数のチャプターこちらで解説しております)。

このようにバイタルサインにどれか異常がある場合に血液ガス検査を積極的に行うべきです。繰り返しですが、検査をいつ行うか?には自分の中での明確かつシンプルな基準が必要です。まずは「バイタルサインに異常があるとき」に血液ガスを取るとすると、救急外来や病棟で迷ったときもアプローチがしやすいと思います。

3:検体の取り扱い 動脈・静脈の違い

血液ガス検査の注意としては、採取後にすぐに空気を抜くことです(2分以内)。空気が混じってしまっているとその空気中の酸素や二酸化炭素が検体に溶けることで検査結果に影響を与えてしまいます。また必ず20分以内に検査を提出することが重要です。

■動脈と静脈での違い

よく動脈の方がよいのか?静脈の方がよいのか?議論になりますが、酸塩基平衡の解釈ではPaCO2の評価以外は基本的に静脈血で問題ありません(下図参照)。DKAでの頻回な血液ガスフォローも基本的に静脈血で問題ないとされています。知りたい項目によって動脈、静脈どちらで調べるかを考えます。

以上血液ガスの使い方に関してまとめました。